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19. 1枚なくなるだけで全てが変わる。そうこれは魔法なんだ
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19. 1枚なくなるだけで全てが変わる。そうこれは魔法なんだ
今日から6月になった。部屋の窓からは、少し強くなった午後の陽射しが差し込んでいる。いつものように白石と部屋にいるが、今日は珍しく白石もノートを開き、教科書とにらめっこをしている。本当に珍しい光景だ。普段はスマホをいじるか、漫画を読むか、オレにちょっかいを出してくるのに。カリカリとペンの走る音だけが部屋に響いている。この静けさ、本当に助かるな。集中できる。
しばらくその静かな時間が続いた後、白石が小さく唸り声を上げた。
「うーん……ねぇ先輩。ここ分からないんですけど?」
ああ、やっぱり来たか。静けさは長く続かないのが、オレと白石の関係の常だった。オレは振り向き、白石の方を見た。彼女は教科書を指差している。まぁ真面目に勉強しているから先輩として手伝ってやるか
「ん?どれだ?」
白石は遠慮なく教科書をオレの方に向けてきた。そして、指差しながら説明しようとする。
「ここなんですけど」
その時だった。白石が、教えようとする箇所を指差しながら、ぐいっと顔を近づけてきたのだ。あまりにも近すぎて、彼女の吐息が頬にかかるのが分かる。かすかに香る、彼女の甘い匂い。
「おま……顔が近いし、当たりそうなんだが?」
「えぇ~いいじゃないですかぁ。ほらほら、早く教えてくださいよぉ~」
白石は全く気にせず、さらに身体を近づけようとしてくる。瞳には、勉強を教えてほしいというよりも、何か別の意図があるようなキラキラした光が宿っている。こいつ……それが目的か?
「なぁ? お前、わざとやってんだろ?」
もう、確信せざるを得なかった。この不自然な距離感、そして勉強とは関係のないような挑発的な目。
「なんのことですか~?」
白石は、問い詰められたにも関わらず、全く悪びれる様子もなくただ楽しそうに微笑んだ。その顔は、まさに「確信犯」の顔だ。やっぱりこいつ分かっててやってるんだ!こいつのこういう人をからかって楽しむ意地の悪いところだけはどうにかしてほしいものだ。でも、それを言っても無駄なことも分かっている。
「あーもう、分かったから、少し離れろって!」
これ以上、この距離にいるのは精神衛生上良くない。
「嫌です。だって、こうでもしないと先輩とくっつけないじゃないですかぁ。それに、私はただ、先輩ともっと仲良くなりたいだけですよ~」
「なら教えない。もう帰れ」
これもまた、オレの定番の対応になってしまった。白石の無理難題や理解不能な言動に対するオレなりの抵抗。これで、こいつが少しでも懲りて、いっそのこと諦めてくれればいいのだが……
まぁそんなことは、この白石という人間には無理だろうな。諦めるという選択肢がこいつの辞書には存在しない気がする。白石はオレの突き放すような言葉にもあまり動じなかった。そして、諦めるどころかさらに別の手を使ってきた。
「せっかく制服が夏服になったんですよ? ほら……色々透けるから、先輩……こういうの好きでしょ?」
そう言って、白石は自分の着ている夏服のブラウスの胸元を、ほんの少しだけ、これ見よがしに見せてきた。今日から6月なので、夏服に衣替えした。白の薄手のブラウスに、紺色のスカート。ブレザーを脱いだ分、体が小さく見える。確かに白のブラウスは中に着ているものが透けやすい。こいつの言う通り、ピンク色の何か――ブラジャーだろう――が、うっすらと透けて見えている。これは……マズい。正直、めちゃくちゃエロい。
「別に好きじゃないし、そもそもオレにはそういう趣味はない。しかも白石のって……罰ゲームか?」
顔が熱くなるのを感じながら、懸命に平静を装って言い返す。しかし、白石は勝利を確信したような、満面の笑みを浮かべた。
「またまたぁ。そんなこと言って顔赤いですよ?本当は私の胸を見たいくせに~。イヤらしいな先輩は!触りたいんでしょ?いいですよ先輩なら!」
「黙れ。とりあえずオレはまだ宿題やるから、邪魔しないでくれ」
これ以上、この会話を続けるのは無理だと判断し、オレは宿題を終わらせることに集中する。白石は、一瞬だけ「ちぇっ」と不満そうな声を上げたが、すぐに表情を切り替えた。
「分かりましたよ。あっ、そうだ先輩? 宿題終わったら、私とゲームで遊んでくださいね?」
「終わったらな」
結局、宿題を終わらせた後、オレは白石と二人でゲームをして遊んだ。あの、くだらないやり取りの後で、何事もなかったかのようにゲームをすることになるなんて少し前までなら考えられなかっただろう。だが、白石といるとこういう予測不能な展開が日常になる。
そして白石が帰ったあと、ふと今日の白石の服装を思い出した。夏服。ブレザーを一枚脱いだだけだというのに、随分と印象が変わるものだ。妙に色っぽく見える瞬間がある。特に、ふとした仕草でシャツが体に沿ったり、透け感が強調されたりすると……
あれは、侮れない。さすが夏服マジック……
白石の戦略なのか、それともただの季節の変化がそうさせるのか。どちらにしてもこれからの季節は気が休まる日は少なくなりそうだなと、オレは密かにため息をついたのだった。
今日から6月になった。部屋の窓からは、少し強くなった午後の陽射しが差し込んでいる。いつものように白石と部屋にいるが、今日は珍しく白石もノートを開き、教科書とにらめっこをしている。本当に珍しい光景だ。普段はスマホをいじるか、漫画を読むか、オレにちょっかいを出してくるのに。カリカリとペンの走る音だけが部屋に響いている。この静けさ、本当に助かるな。集中できる。
しばらくその静かな時間が続いた後、白石が小さく唸り声を上げた。
「うーん……ねぇ先輩。ここ分からないんですけど?」
ああ、やっぱり来たか。静けさは長く続かないのが、オレと白石の関係の常だった。オレは振り向き、白石の方を見た。彼女は教科書を指差している。まぁ真面目に勉強しているから先輩として手伝ってやるか
「ん?どれだ?」
白石は遠慮なく教科書をオレの方に向けてきた。そして、指差しながら説明しようとする。
「ここなんですけど」
その時だった。白石が、教えようとする箇所を指差しながら、ぐいっと顔を近づけてきたのだ。あまりにも近すぎて、彼女の吐息が頬にかかるのが分かる。かすかに香る、彼女の甘い匂い。
「おま……顔が近いし、当たりそうなんだが?」
「えぇ~いいじゃないですかぁ。ほらほら、早く教えてくださいよぉ~」
白石は全く気にせず、さらに身体を近づけようとしてくる。瞳には、勉強を教えてほしいというよりも、何か別の意図があるようなキラキラした光が宿っている。こいつ……それが目的か?
「なぁ? お前、わざとやってんだろ?」
もう、確信せざるを得なかった。この不自然な距離感、そして勉強とは関係のないような挑発的な目。
「なんのことですか~?」
白石は、問い詰められたにも関わらず、全く悪びれる様子もなくただ楽しそうに微笑んだ。その顔は、まさに「確信犯」の顔だ。やっぱりこいつ分かっててやってるんだ!こいつのこういう人をからかって楽しむ意地の悪いところだけはどうにかしてほしいものだ。でも、それを言っても無駄なことも分かっている。
「あーもう、分かったから、少し離れろって!」
これ以上、この距離にいるのは精神衛生上良くない。
「嫌です。だって、こうでもしないと先輩とくっつけないじゃないですかぁ。それに、私はただ、先輩ともっと仲良くなりたいだけですよ~」
「なら教えない。もう帰れ」
これもまた、オレの定番の対応になってしまった。白石の無理難題や理解不能な言動に対するオレなりの抵抗。これで、こいつが少しでも懲りて、いっそのこと諦めてくれればいいのだが……
まぁそんなことは、この白石という人間には無理だろうな。諦めるという選択肢がこいつの辞書には存在しない気がする。白石はオレの突き放すような言葉にもあまり動じなかった。そして、諦めるどころかさらに別の手を使ってきた。
「せっかく制服が夏服になったんですよ? ほら……色々透けるから、先輩……こういうの好きでしょ?」
そう言って、白石は自分の着ている夏服のブラウスの胸元を、ほんの少しだけ、これ見よがしに見せてきた。今日から6月なので、夏服に衣替えした。白の薄手のブラウスに、紺色のスカート。ブレザーを脱いだ分、体が小さく見える。確かに白のブラウスは中に着ているものが透けやすい。こいつの言う通り、ピンク色の何か――ブラジャーだろう――が、うっすらと透けて見えている。これは……マズい。正直、めちゃくちゃエロい。
「別に好きじゃないし、そもそもオレにはそういう趣味はない。しかも白石のって……罰ゲームか?」
顔が熱くなるのを感じながら、懸命に平静を装って言い返す。しかし、白石は勝利を確信したような、満面の笑みを浮かべた。
「またまたぁ。そんなこと言って顔赤いですよ?本当は私の胸を見たいくせに~。イヤらしいな先輩は!触りたいんでしょ?いいですよ先輩なら!」
「黙れ。とりあえずオレはまだ宿題やるから、邪魔しないでくれ」
これ以上、この会話を続けるのは無理だと判断し、オレは宿題を終わらせることに集中する。白石は、一瞬だけ「ちぇっ」と不満そうな声を上げたが、すぐに表情を切り替えた。
「分かりましたよ。あっ、そうだ先輩? 宿題終わったら、私とゲームで遊んでくださいね?」
「終わったらな」
結局、宿題を終わらせた後、オレは白石と二人でゲームをして遊んだ。あの、くだらないやり取りの後で、何事もなかったかのようにゲームをすることになるなんて少し前までなら考えられなかっただろう。だが、白石といるとこういう予測不能な展開が日常になる。
そして白石が帰ったあと、ふと今日の白石の服装を思い出した。夏服。ブレザーを一枚脱いだだけだというのに、随分と印象が変わるものだ。妙に色っぽく見える瞬間がある。特に、ふとした仕草でシャツが体に沿ったり、透け感が強調されたりすると……
あれは、侮れない。さすが夏服マジック……
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