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45. 色々な味があるというのは、色々な顔を見せると同じかもしれない
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45. 色々な味があるというのは、色々な顔を見せると同じかもしれない
夏はまだ続く。部屋の中はエアコンのおかげで快適だが、窓の外の景色はアスファルトからの陽炎や、青々とした葉を揺らす木々が真夏の盛りであることを物語っている。そんなうだるような暑さの日。白石がまたしても予想外のアイテムを持って部屋にやってきた。
「じゃーん!見てください先輩!かき氷器を買ったんですよ!一緒にやりましょ!かき氷食べたいですよね?」
白石は、小さな赤いかき氷器をまるで宝物を見せるかのように満面の笑顔でオレに見せてきた。その子供みたいにはしゃぐ姿に少し呆れる。なんでまたこんなものを。
「いや、オレは別に……」
かき氷か。別にそこまで食べたいと思ってなかったのだが。
「いいからいいから!」
オレの言葉を遮るように、白石は強引にそう言い、手に持っていたかき氷器をオレに渡してきた。ずしり、と意外と重量がある。
「はい。お願いします先輩!」
「オレがやるのかよ?お前が食べたいんだろ?」
「力仕事は彼氏の仕事ですよ?彼女の私にやらせるつもりですか?」
白石は、ニヤリと笑ってそう言った。またその言葉だ。彼氏の仕事?勝手に役割分担するな。今は男女平等の世の中だぞ?だが、確かに、かき氷器のハンドルを回すのは少し力がいるだろう。
「だから彼氏じゃねぇだろ!まぁ……女の子にやらせるのもあれだからやるけどよ……」
否定しつつも、結局、オレはかき氷を作る役目を引き受けた。白石はオレが引き受けたのを見て、さらに顔を輝かせた。
「先輩優しい!それでこそ私の彼氏!」
だから違うんだが……。もう、何度繰り返しても白石の中では、オレは彼氏ということになっているらしい。まあ、こいつに何を言っても無駄だから、放っておくことにした。
とりあえず、オレはかき氷器に氷をセットしハンドルを回し始めた。ガリガリガリ、と氷が削られる音が部屋に響く。ハンドルを回す手に少しだけ力がかかる。そして、下の受け皿に綺麗な雪のようなものがふんわりと出来上がってくる。
「おぉ~!すごいですね、先輩!めっちゃ美味しそうです!」
白石が、出来上がっていくかき氷を見て、興奮した声を上げた。その無邪気な興奮ぶりに、オレも少しだけ自分が作ったものが上手くできたことへの満足感を感じた。
「あぁ。意外と上手く出来たな」
オレは、かき氷が入ったカップを白石に渡そうとした。すると、白石はシロップのボトルを指差しながら、またしてもとんでもないことを言い出した。
「先輩は何味がいいですか?普段の私とのラブラブ甘々なイチゴ味か、私とのファーストキスを想像させるレモン味、あとは私の胸のような美味しそうなメロン味、あとは……ただのブルーハワイもありますよ?どれがいいですか?」
「聞き方が本当にウザいんだが。 しかもメロンほどお前は巨乳じゃないし」
「小振りのメロンですよ!いつもチラチラ見てるじゃないですか!それに、この前プールでまじまじと見ましたよね?」
「黙れ。別に見てねぇから!」
「はいはい。でも、先輩は私くらいがちょうどいいですよね?」
「シロップの話はどこいったんだよ!」
結局、このまま白石に味を選ばせると、さらに面倒なことになりそうだったので自分で好きな味を選ぶことになった。シロップが何種類か置いてある中から、オレはあえてブルーハワイを選んだ。特別な理由は何も無い。ただ、なんとなく色が綺麗だからという程度の理由だ。しかし、そんなオレを見た白石は、またしてもニヤリと笑った。
「ふっふっふ……。さては先輩、照れましたね?」
「……お前はオレを怒らせた。もうお前のは作ってやらん。自分で作れ」
「ごめんなさい!冗談ですよ冗談!謝りますから作ってくださいよ~」
白石は、上目遣いで謝ってくる。やめろよその顔……わざとだろそれ。こんなことで本気で怒ってたら、白石といたらキリがない。
「……ったく。 仕方ねぇな。 次ふざけたこと言ったらもう作らねぇからな?」
「ありがとうございます先輩!大好き!」
「はいはい。 ありがとよ」
適当にあしらうようにそう返事をした。そして、白石の分のかき氷を作り白石はイチゴシロップをかける。真っ赤なシロップが、真っ白な氷に染み込んでいくのが見える。
こうして、たかがかき氷を作って食べるだけなのに白石のウザさ加減を改めて実感させられる。
そしてオレは白石と一緒に部屋でかき氷を食べる。白石は、イチゴ味のかき氷を美味しそうに頬張っている。まったく、さっきまでのウザさはどこへ行ったのか。この色々な味が混ざり合ったような気持ちも、白石といる日常ならではなのかもしれない。
夏はまだ続く。部屋の中はエアコンのおかげで快適だが、窓の外の景色はアスファルトからの陽炎や、青々とした葉を揺らす木々が真夏の盛りであることを物語っている。そんなうだるような暑さの日。白石がまたしても予想外のアイテムを持って部屋にやってきた。
「じゃーん!見てください先輩!かき氷器を買ったんですよ!一緒にやりましょ!かき氷食べたいですよね?」
白石は、小さな赤いかき氷器をまるで宝物を見せるかのように満面の笑顔でオレに見せてきた。その子供みたいにはしゃぐ姿に少し呆れる。なんでまたこんなものを。
「いや、オレは別に……」
かき氷か。別にそこまで食べたいと思ってなかったのだが。
「いいからいいから!」
オレの言葉を遮るように、白石は強引にそう言い、手に持っていたかき氷器をオレに渡してきた。ずしり、と意外と重量がある。
「はい。お願いします先輩!」
「オレがやるのかよ?お前が食べたいんだろ?」
「力仕事は彼氏の仕事ですよ?彼女の私にやらせるつもりですか?」
白石は、ニヤリと笑ってそう言った。またその言葉だ。彼氏の仕事?勝手に役割分担するな。今は男女平等の世の中だぞ?だが、確かに、かき氷器のハンドルを回すのは少し力がいるだろう。
「だから彼氏じゃねぇだろ!まぁ……女の子にやらせるのもあれだからやるけどよ……」
否定しつつも、結局、オレはかき氷を作る役目を引き受けた。白石はオレが引き受けたのを見て、さらに顔を輝かせた。
「先輩優しい!それでこそ私の彼氏!」
だから違うんだが……。もう、何度繰り返しても白石の中では、オレは彼氏ということになっているらしい。まあ、こいつに何を言っても無駄だから、放っておくことにした。
とりあえず、オレはかき氷器に氷をセットしハンドルを回し始めた。ガリガリガリ、と氷が削られる音が部屋に響く。ハンドルを回す手に少しだけ力がかかる。そして、下の受け皿に綺麗な雪のようなものがふんわりと出来上がってくる。
「おぉ~!すごいですね、先輩!めっちゃ美味しそうです!」
白石が、出来上がっていくかき氷を見て、興奮した声を上げた。その無邪気な興奮ぶりに、オレも少しだけ自分が作ったものが上手くできたことへの満足感を感じた。
「あぁ。意外と上手く出来たな」
オレは、かき氷が入ったカップを白石に渡そうとした。すると、白石はシロップのボトルを指差しながら、またしてもとんでもないことを言い出した。
「先輩は何味がいいですか?普段の私とのラブラブ甘々なイチゴ味か、私とのファーストキスを想像させるレモン味、あとは私の胸のような美味しそうなメロン味、あとは……ただのブルーハワイもありますよ?どれがいいですか?」
「聞き方が本当にウザいんだが。 しかもメロンほどお前は巨乳じゃないし」
「小振りのメロンですよ!いつもチラチラ見てるじゃないですか!それに、この前プールでまじまじと見ましたよね?」
「黙れ。別に見てねぇから!」
「はいはい。でも、先輩は私くらいがちょうどいいですよね?」
「シロップの話はどこいったんだよ!」
結局、このまま白石に味を選ばせると、さらに面倒なことになりそうだったので自分で好きな味を選ぶことになった。シロップが何種類か置いてある中から、オレはあえてブルーハワイを選んだ。特別な理由は何も無い。ただ、なんとなく色が綺麗だからという程度の理由だ。しかし、そんなオレを見た白石は、またしてもニヤリと笑った。
「ふっふっふ……。さては先輩、照れましたね?」
「……お前はオレを怒らせた。もうお前のは作ってやらん。自分で作れ」
「ごめんなさい!冗談ですよ冗談!謝りますから作ってくださいよ~」
白石は、上目遣いで謝ってくる。やめろよその顔……わざとだろそれ。こんなことで本気で怒ってたら、白石といたらキリがない。
「……ったく。 仕方ねぇな。 次ふざけたこと言ったらもう作らねぇからな?」
「ありがとうございます先輩!大好き!」
「はいはい。 ありがとよ」
適当にあしらうようにそう返事をした。そして、白石の分のかき氷を作り白石はイチゴシロップをかける。真っ赤なシロップが、真っ白な氷に染み込んでいくのが見える。
こうして、たかがかき氷を作って食べるだけなのに白石のウザさ加減を改めて実感させられる。
そしてオレは白石と一緒に部屋でかき氷を食べる。白石は、イチゴ味のかき氷を美味しそうに頬張っている。まったく、さっきまでのウザさはどこへ行ったのか。この色々な味が混ざり合ったような気持ちも、白石といる日常ならではなのかもしれない。
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