隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫

文字の大きさ
50 / 56

50. 心理テストのような類いのものはだいたい何かしら当たるようになっている

しおりを挟む
50. 心理テストのような類いのものはだいたい何かしら当たるようになっている



 8月も半ば。灼熱の夏休みはまだまだ容赦なく続いている。今日は、そろそろ本格的にやらないとマズい夏休みの宿題をやっている。机に向かいノートと睨めっこする。冷房の効いた部屋は快適だが、気分は重い。

 もちろん当たり前のようにソファーの上で、スマホをいじっている小さな茶髪の塊も部屋にいるけどな。こいつがここにいるせいで、集中力が削がれるのは分かっているが今更追い出すこともできない。というか宿題やれよ。

 しばらく黙々と宿題をこなしていると、白石がスマホから顔を上げた。そしてオレに話しかけてくる。

「う~ん……先輩。休憩してゲームしましょうよ!レースゲーム!」

「は?さっき休憩したばかりだろ?それにもう飽きたよ、レースゲームは」

 もう、あのゲームは見るのも嫌だ。宿題を終わらせたい。それに今はゲームをしている場合じゃない。

「だって、それくらいしか先輩に勝てないんだもん!ねぇ先輩、やりましょうよぉ~」

 白石は、珍しく少しだけしょんぼりした声で言った。レースゲームなら勝てる。だからやりたいのだろう。だが、だからといって、オレがやりたくないものをお前に付き合ってやる義理はない。

「だからやらないって言ってるだろ?黙って宿題をやれ」

「むぅ……あっそうだ!それなら心理テストやりましょ!昨日面白いサイトを見つけたんです!」

 白石は、急に声を弾ませて新しい提案をしてきた。心理テスト? どうせくだらない内容のネットに転がっているようなものだろうが。だが、ここで完全に無視すればこいつはさらに面倒なこと言ってオレの宿題を邪魔してくるかもしれない。少し付き合ってやるか。そう思い宿題から目を離し、白石の方を向いた。

「1回だけだからな?」

「さすが先輩!私ってば愛されてます!」

 本当にウザいよなこいつ。そんなことを考えながらも、白石の言ったサイトを開くことにする。

「このサイトでいいのか?」

「はい。よしっ、準備完了です!」

 そのスマホの画面には、大きめの文字で『あなたの性格診断』と書かれている。よくあるネットの心理テストサイトだ。

「なんだこれ。50問もあるじゃねぇかよ……すごく面倒なんだが……」

「私もやるのでいいじゃないですか!」

 仕方ない。こうなったら早く終わらせて、宿題に戻るしかない。オレはそのサイトを開き、問題を読み始めた。白石も、自分のスマホで同じサイトを開いている。

 最初の問題は『好きな人と結ばれている夢を見たとき、あなたはその人にどんな感情を抱きますか?』というものだ。

 これは……普通に考えたら、恋愛関係にある相手と結ばれている夢を見たということだよな? 結ばれるという言葉に、妙に意識してしまう。そして「好きな人」。誰を思い浮かべればいいんだ。妙な想像をしてしまう。

 しかも、相手はあの白石だし……いやいや白石じゃなくていいだろ!なんで白石を思い浮かべるんだよ!何考えてんだよオレは!自分の思考に自分でパニックになる。

「あれ?先輩、顔赤いですよ?結ばれるって……変な意味じゃないですからね?」

「うるせぇ!わ、わかってるよ!」

 オレは、白石の視線から逃れるように、顔を逸らした。そして、それ以上白石を無視して問題を読み進めていった。他の問題もなんだか妙なものばかりだ。深層心理とか言われてもよく分からない。だが早く終わらせたい一心で、適当に答えを選んでいく。

 ―――20分後―――――

 ようやく、50問全ての問題に答え終わった。白石も、ほぼ同じタイミングで終わったらしい。

「終わりました!入力終わりましたか先輩?見せてください!」

 白石が、興奮した様子で言った。そして、オレのスマホを覗き込もうとする。

「ああ。これでいいんだろ?ほら診断しろ」

「最初は先輩のを……どれどれ……ふむふむ。読みますね。 なるほど!あなたは……ズバリ、真面目な人ですね!」

「まあ、無難だな」

「というのは外面的な話です」

 白石はそこで一旦言葉を切り、ニヤリと笑った。嫌な予感がする。

「あなたの内面は、すごく近くの女の子が大好きで、愛しく思っているのです。 それはもう、色々なことをしたいくらいに独占欲があります」

 白石は楽しそうに一字一句噛みしめながら、オレの内面診断の結果を読み上げた。その言葉を聞いた瞬間、オレは全身が硬直した。は?なんだって?近くの女の子が大好きで愛しく思っている?色々なことをしたい?独占欲?

「は? いやいや何言ってんだよお前!そんなわけあるはずないだろうが!それ合ってねぇぞ!」

 オレは、慌てて否定した。これは間違っている。絶対に間違っている。こんな診断信じられるか!

「動揺しすぎですよ?おやおや、顔真っ赤にしちゃって可愛いですね先輩は?私のこと、そんな風に思ってるんですか?」

 白石はオレの動揺を見て、さらに楽しそうに言った。顔が赤い?可愛い?私のこと、そんな風に思ってる?全てがオレを追い詰める言葉だ。

 くそっ。こんな心理テスト、誰が作ったんだ。なんでこんな核心を突くような、そして否定しにくいような結果が出るんだ。なんて厄介な心理テストなんだよ。これじゃあ全然勉強できねぇぞ……心理テストのせいで頭の中が混乱している。

「ちなみに……先輩の近くの女の子は私ですか?それとも違う誰かですか?んん?」

 白石は、オレの動揺をさらに煽るように、直接的に聞いてきた。そして人をからかう時の含みのある「んん?」を付け加える。うぜぇ……

 ダメだ。こいつ完全に調子乗ってやがる。このままだと、どこまで追い詰められるか分からない。ここは反撃するしかない。オレは、白石からスマホを取り返し、今度は白石の診断結果を見てやることにした。

 お前だけが恥をかくと思うなよ、白石。オレが受けた屈辱をお前にも味わせてやる。

「黙れ。お前の見せろ」

「はい。どうぞ」

「おい白石よく聞け。お前の答えはこれだ」

 オレは、画面に表示された白石の診断結果を読み上げた。そこにはこう書かれていた。

『あなたは自分の理想の異性を自分の思い通りにしたくて仕方がないタイプでしょう。 異性に対しての支配力が強い傾向があります。 そしてすごく愛情を注ぐタイプでもあります』

「は?」

「ほら、私の合ってますよ!やっぱり先輩も……」

「オレのは合ってねぇからな!こんな下らないことやってないで宿題やれよ!」

 オレは、最後の抵抗としてそう叫んだ。オレの内面はそんなんじゃない。白石のことなんて大好きでも愛しくも思ってないし、独占欲もない!

 結局、オレは心理テストの診断結果によって散々な思いをした。そして、その心理テストのせいで頭の中が完全に混乱し、宿題どころではなくなってしまった。白石は、ケラケラと笑いながらオレの反応を楽しんでいる。

 全く、どこまでもオレを困らせる奴だ。そして心理テストの結果は本当に合っていなかったのか?オレの心の中の白石に対する感情は……

 それは、まだ自分自身にもはっきりとは分からない、複雑なものだった。心理テストの結果は否定したが、その言葉がどこか心の奥底に引っかかっているようなそんな気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗利は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

処理中です...