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53. もうオレは平穏という言葉の意味を知ることは2度とないのかもしれない
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53. もうオレは平穏という言葉の意味を知ることは2度とないのかもしれない
東京から電車に揺られること、約1時間半。車窓の外の景色は高層ビルや住宅街から、次第に田畑や山へと変わっていく。都会の喧騒から離れ、故郷の慣れ親しんだ景色が見えてくると張り詰めていた糸が緩むような感覚になる。オレは、田舎の実家に帰省していた。
「ただいまー」
玄関の扉を開け、家に声を上げる。田舎の家は、都会のアパートと違って広い。声が玄関に響く。が、返事はない。靴を脱いで家に上がると、リビングの方から、テレビの音が聞こえてきた。どうやら両親は二人で映画でも観ているようだ。いつも通りの静かな実家。この落ち着きがなんだか懐かしい。リビングの扉を開け顔を出す。
「おい。帰ったぞ」
「おう秋人、お帰り!」
「久しぶり。元気でなによりだよ」
両親は、二人揃ってソファから立ち上がり笑顔を浮かべた。その、変わらない顔を見ていると実家に帰ってきたんだなと実感する。
「ああ……ってか母さん。また太ったんじゃないか?」
「え?そ、そうかなぁ」
「前より腹が出てる気がするけど」
「あははっ、やっぱりわかる~?」
母さんは自分の腹部をさすりながら、照れくさそうに笑みを浮かべる。まあ、元気そうで何よりだ。
「まあ健康的な証拠だろうけどさ……」
適当にフォローを入れておくと、今度は父さんが妙なことを言ってきた。
「そういえば秋人。お前彼女でもできたのか?春頃から全然母さんに連絡寄越さなくなっただろ?」
彼女!?いきなり父さんの口から、一番聞きたくない言葉が出てきた。しかも、連絡をしなくなった理由を彼女ができたせいだと決めつけている。関係ないだろうが。
「彼女!?あいつはそんなんじゃねぇし!てか、連絡しなかったのだって別に普通だし!」
父さんの言葉につい過剰に反応してしまった。あいつというのはもちろん白石のことだ。父さんはオレの動揺を見てさらに顔を輝かせた。
「あいつ?そうかそうか。好きな人ができたのか? 良かった良かった」
「だから違うって言ってんだろ!もういいよ、部屋にいるから!」
オレは、父さんに背を向け階段を駆け上がった。リビングを出て自分の部屋へ向かう。ドタドタと階段を昇り、部屋に入ると、そのままベッドに飛び込んだ。ふかふかの布団に顔を埋める。
「なんなんだあの親父は…… いつもはあんな事言わないくせに」
父さんは、普段はオレのプライベートにそこまで踏み込んでくるタイプではない。なのに、なぜか今日だけはしつこく詮索してくる。まるで白石のようにウザい。せっかく実家に帰ってきて、ホッとしようと思ったのにいきなりこれか。
そしてしばらく何もせずに、久しぶりの実家の自分の部屋でボーッとしていると、部屋の扉がノックされた。そして母親の声が聞こえる。
「秋人。 お客さん来てるわよ」
「え?客?誰にも帰ること言ってないけど?」
誰が来たんだ?友達にも、実家に帰ることを伝えていないが?
「そうなの?母さんも見たことない人だけど、秋人の知り合いよ。」
母さんも知らない人?ますます分からない。しかし、オレの知り合いということは……嫌な予感が背筋を駆け上がった。まさか、まさか、そんなはずは……
オレはベッドから起き上がり重い足取りで部屋を出た。階段を降り玄関に向かう。そして、玄関の扉の前に立った時、オレは目を疑いたくなる光景を見た。
「あっ!先輩!来ちゃいました!」
そこに立っていたのは、紛れもない白石だった。満面の笑顔で手を振っている。現実なのか?なんで、お前がここにいるんだ?
「白石!?お前なんで!?」
オレは思わず叫んだ。ここは東京から1時間半も離れた、オレの実家だぞ?なんで、お前がここにいるんだ!
「なんでって……先輩がいないのは寂しいし、ついでだから、ご挨拶に来たんじゃないですか」
白石は、まるで当たり前のことのようにそう言った。寂しいから? ついでにご挨拶?そんな理由で人の実家に押しかけてくるのか!?どこまで図々しいんだこいつは!
「そんなのいらないだろ!帰れよ!」
「イヤです!」
「イヤですじゃねえよ!ここはオレの実家だぞ!?」
オレたちのやり取りを聞いてリビングから両親が出てきた。何事かという顔で、オレたちを見ている。まずい。最悪なタイミングだ。
「あらあら、賑やかな子ね。秋人の後輩さんかしら?」
「もしかして、彼女か秋人?」
「あっ、初めまして。白石夏帆と申します。秋人先輩とはいつも仲良くさせていただいてまして……部屋が隣なんです。ほとんど同棲のような生活をしてます」
白石は両親を見て、急に丁寧な口調になった。そして自己紹介をする。そこまではいい。しかし、その後の言葉にオレは耳を疑った。いつも仲良くさせていただいてまして……部屋が隣なんです。ほとんど同棲のような生活をしてます。なんだその言い方は!
「ちょっ!?お前なに勝手なこと言ってんだよ!」
「事実じゃないですか」
白石は、悪びれる様子もなくそう言った。確かに、毎日オレの部屋にいるのは事実だが同棲ではない!
「事実じゃねぇだろ!誤解されるだろ!」
「まあまあ、2人とも落ち着きなさい。 夏帆ちゃんだったかしら?どうぞあがって」
「はい。お邪魔しまーす」
白石は母さんの言葉に嬉しそうにそう言って、家に上がってきた。こうしてオレたちの言い争いは一旦中断された。その後、場所をリビングに移して改めて自己紹介をした。白石は、両親に対して、終始丁寧な言葉遣いでハキハキと話す。
両親は白石のことを気に入ってくれたらしく、終始ニコニコしている。特に母さんは、白石の話を聞いて楽しそうだ。
くそっ。こいつ……ついにやりやがった。オレの部屋ならず、実家にまで押しかけてくるなんて。これで、オレと白石が付き合っていると、両親は信じ込んでしまうだろう。オレのプライベートな領域がまた一つ、白石によって侵食された。しかも、今回は最も踏み込んでほしくない場所だ。
そしてそのあと、なぜか白石はウチの両親とあっという間に仲良くなり、そのまま泊まることになった。両親が、当然のように白石に「泊まっていきなさい」と言い、白石も当たり前のように「ありがとうございます」と答えたのだ。
おかしいだろ。なんでこんなことに。なんで、見ず知らずの、息子の部屋に勝手に押しかけてくる図々しい後輩を、両親が家に泊めるんだ。理解できない。変なことにならなきゃいいが……
そして白石は満足そうに、オレの隣で両親との会話を楽しんでいる。オレはただこの異常な状況を見ていることしかできなかった。
東京から電車に揺られること、約1時間半。車窓の外の景色は高層ビルや住宅街から、次第に田畑や山へと変わっていく。都会の喧騒から離れ、故郷の慣れ親しんだ景色が見えてくると張り詰めていた糸が緩むような感覚になる。オレは、田舎の実家に帰省していた。
「ただいまー」
玄関の扉を開け、家に声を上げる。田舎の家は、都会のアパートと違って広い。声が玄関に響く。が、返事はない。靴を脱いで家に上がると、リビングの方から、テレビの音が聞こえてきた。どうやら両親は二人で映画でも観ているようだ。いつも通りの静かな実家。この落ち着きがなんだか懐かしい。リビングの扉を開け顔を出す。
「おい。帰ったぞ」
「おう秋人、お帰り!」
「久しぶり。元気でなによりだよ」
両親は、二人揃ってソファから立ち上がり笑顔を浮かべた。その、変わらない顔を見ていると実家に帰ってきたんだなと実感する。
「ああ……ってか母さん。また太ったんじゃないか?」
「え?そ、そうかなぁ」
「前より腹が出てる気がするけど」
「あははっ、やっぱりわかる~?」
母さんは自分の腹部をさすりながら、照れくさそうに笑みを浮かべる。まあ、元気そうで何よりだ。
「まあ健康的な証拠だろうけどさ……」
適当にフォローを入れておくと、今度は父さんが妙なことを言ってきた。
「そういえば秋人。お前彼女でもできたのか?春頃から全然母さんに連絡寄越さなくなっただろ?」
彼女!?いきなり父さんの口から、一番聞きたくない言葉が出てきた。しかも、連絡をしなくなった理由を彼女ができたせいだと決めつけている。関係ないだろうが。
「彼女!?あいつはそんなんじゃねぇし!てか、連絡しなかったのだって別に普通だし!」
父さんの言葉につい過剰に反応してしまった。あいつというのはもちろん白石のことだ。父さんはオレの動揺を見てさらに顔を輝かせた。
「あいつ?そうかそうか。好きな人ができたのか? 良かった良かった」
「だから違うって言ってんだろ!もういいよ、部屋にいるから!」
オレは、父さんに背を向け階段を駆け上がった。リビングを出て自分の部屋へ向かう。ドタドタと階段を昇り、部屋に入ると、そのままベッドに飛び込んだ。ふかふかの布団に顔を埋める。
「なんなんだあの親父は…… いつもはあんな事言わないくせに」
父さんは、普段はオレのプライベートにそこまで踏み込んでくるタイプではない。なのに、なぜか今日だけはしつこく詮索してくる。まるで白石のようにウザい。せっかく実家に帰ってきて、ホッとしようと思ったのにいきなりこれか。
そしてしばらく何もせずに、久しぶりの実家の自分の部屋でボーッとしていると、部屋の扉がノックされた。そして母親の声が聞こえる。
「秋人。 お客さん来てるわよ」
「え?客?誰にも帰ること言ってないけど?」
誰が来たんだ?友達にも、実家に帰ることを伝えていないが?
「そうなの?母さんも見たことない人だけど、秋人の知り合いよ。」
母さんも知らない人?ますます分からない。しかし、オレの知り合いということは……嫌な予感が背筋を駆け上がった。まさか、まさか、そんなはずは……
オレはベッドから起き上がり重い足取りで部屋を出た。階段を降り玄関に向かう。そして、玄関の扉の前に立った時、オレは目を疑いたくなる光景を見た。
「あっ!先輩!来ちゃいました!」
そこに立っていたのは、紛れもない白石だった。満面の笑顔で手を振っている。現実なのか?なんで、お前がここにいるんだ?
「白石!?お前なんで!?」
オレは思わず叫んだ。ここは東京から1時間半も離れた、オレの実家だぞ?なんで、お前がここにいるんだ!
「なんでって……先輩がいないのは寂しいし、ついでだから、ご挨拶に来たんじゃないですか」
白石は、まるで当たり前のことのようにそう言った。寂しいから? ついでにご挨拶?そんな理由で人の実家に押しかけてくるのか!?どこまで図々しいんだこいつは!
「そんなのいらないだろ!帰れよ!」
「イヤです!」
「イヤですじゃねえよ!ここはオレの実家だぞ!?」
オレたちのやり取りを聞いてリビングから両親が出てきた。何事かという顔で、オレたちを見ている。まずい。最悪なタイミングだ。
「あらあら、賑やかな子ね。秋人の後輩さんかしら?」
「もしかして、彼女か秋人?」
「あっ、初めまして。白石夏帆と申します。秋人先輩とはいつも仲良くさせていただいてまして……部屋が隣なんです。ほとんど同棲のような生活をしてます」
白石は両親を見て、急に丁寧な口調になった。そして自己紹介をする。そこまではいい。しかし、その後の言葉にオレは耳を疑った。いつも仲良くさせていただいてまして……部屋が隣なんです。ほとんど同棲のような生活をしてます。なんだその言い方は!
「ちょっ!?お前なに勝手なこと言ってんだよ!」
「事実じゃないですか」
白石は、悪びれる様子もなくそう言った。確かに、毎日オレの部屋にいるのは事実だが同棲ではない!
「事実じゃねぇだろ!誤解されるだろ!」
「まあまあ、2人とも落ち着きなさい。 夏帆ちゃんだったかしら?どうぞあがって」
「はい。お邪魔しまーす」
白石は母さんの言葉に嬉しそうにそう言って、家に上がってきた。こうしてオレたちの言い争いは一旦中断された。その後、場所をリビングに移して改めて自己紹介をした。白石は、両親に対して、終始丁寧な言葉遣いでハキハキと話す。
両親は白石のことを気に入ってくれたらしく、終始ニコニコしている。特に母さんは、白石の話を聞いて楽しそうだ。
くそっ。こいつ……ついにやりやがった。オレの部屋ならず、実家にまで押しかけてくるなんて。これで、オレと白石が付き合っていると、両親は信じ込んでしまうだろう。オレのプライベートな領域がまた一つ、白石によって侵食された。しかも、今回は最も踏み込んでほしくない場所だ。
そしてそのあと、なぜか白石はウチの両親とあっという間に仲良くなり、そのまま泊まることになった。両親が、当然のように白石に「泊まっていきなさい」と言い、白石も当たり前のように「ありがとうございます」と答えたのだ。
おかしいだろ。なんでこんなことに。なんで、見ず知らずの、息子の部屋に勝手に押しかけてくる図々しい後輩を、両親が家に泊めるんだ。理解できない。変なことにならなきゃいいが……
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