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748. 姫は『安心』するようです
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748. 姫は『安心』するようです
3月下旬。春の陽光がリビングの窓から優しく差し込む中、久しぶりに高坂さんとスケジュールの打ち合わせをしていた。コーヒーの湯気が立ち上り、部屋には穏やかな空気が流れている。
「明日はついにCGSプロジェクトの最終面接があります。頑張ってくださいね」
「新しい仲間だからな、楽しみではあるよ」
「それと、今回の春の大型企画ですが来週の4月5日の19時からの予定で、内容は『Fmすたーらいぶ村を救え!チャット人狼』というものです。司会は愛梨さんと芽衣子さんの『みるくココア』のお二人です」
「おお!『みるくココア』か。大型企画の司会、やりたがってたもんな愛梨ちゃんは。まぁ、卯月さんがフォローしてくれるなら問題ないだろうけど」
「念願ですからね。それより神崎先輩はプレイヤーなので、人狼ゲームのルールを把握しておいてください」
「うん。分かった」
人狼ゲームか……何度かやったことはある。でも、対面じゃないチャット形式というのは初めてだ。どんな感じになるんだろう。細かいルールは後でしっかり確認しておかないと。
「あ。あとこれは来月ですけど、『ルート47』のGW特別版が入ってます。収録は4月中旬~下旬です」
「え?また?」
「またって言っても、神崎先輩が行ったの去年ですよ?もう半年経ちます。組み合わせはまだ決まってませんが……今回は当日に誰か分かると思います。もちろん神崎先輩が姫宮ましろだと知っている人が選ばれると思いますけどw」
「もしかしたら高坂さんの可能性もある?」
「確かにその可能性はありますね。その時はよろしくお願いいたしますw」
ルート47か……彩芽ちゃんとか高坂さんなら、そこまで緊張しないんだけどな。他の人だったら、何を話せばいいのかどう振る舞えばいいのか今から少しだけ憂鬱になる。前回は確か3人だったし、まだ七海がいた。あの時は七海の存在がどれだけ大きかったか今になって痛感する。
その後は、いくつか抱えている案件や、細々とした雑件の話をして、今日の打ち合わせは終了した。時計を見るともうすっかり午後になっている。さて、次はオレが月城さんと打ち合わせだ。彼女の家に向かうことにする。最近は便利なディスコードでの打ち合わせが多かったから、直接顔を合わせるのは、もしかしたら1ヶ月ぶりくらいになるかもしれない。
しかも……出発前に、あの月城さんから『颯太君。ケーキ食べたいから買ってきてほしいなぁ~』と。少し甘えた言い方でお願いされた。
ということで、駅前のケーキ屋でいくつか美味しそうなケーキを選び、紙袋を手に月城さんの家へと向かいインターホンを押すと、少し間があって明るい声が聞こえてきた。
「はーい!」
ドアが開くと、予想通り満面の笑みを浮かべた月城さんがそこに立っていた。
「颯太君、いらっしゃい」
「こんにちは」
「さあ、上がって」
リビングに入ると、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐった。テーブルの上には、すでに可愛らしいティーカップとソーサーが用意されている。
「わあ、美味しそうなケーキ!ありがとう颯太君」
「どういたしまして。どれがいいですか?」
「う~ん。迷っちゃうなぁ~じゃあ、私はこれにしようかな?」
月城さんが指さしたのは、ピンク色のクリームとイチゴが乗った可愛らしいケーキだった。そして残りのケーキは冷蔵庫に入れ、月城さんは向かいのソファに腰を下ろした。
「早速なんですけど、修正したCGSの立ち絵のデータをいただけますか?明日の面接選考で使うので」
「うん。これUSBね」
「ありがとうございます」
「いやぁ……ここまで来たんだね。私がお休みして5ヶ月も経つのか早いねw」
「そうですね。そろそろ配信したいんじゃないですか?ひな客さんも待ってますしね?」
「どうかなぁ?こっちの仕事も全然楽しいよ。やっぱりずっとやりたかった仕事だしね?」
……確かにそうか。月城さんはこの仕事の方が本来やりたいことだしな。まさか……このまま戻らずに卒業するのか……?
「あれ?颯太君。もしかして私がこのまま戻らずに卒業しちゃうとか思ってる?」
「……少しだけ過りましたけど」
「あはは。せっかくママになるんだから、まだ卒業はしないよ。まだ楽しみたいし。まぁ……卒業はいいお相手が出来たらにしようかな?あ。颯太君が彩芽ちゃんと別れたら貰って貰おうかなw」
「縁起でもないこと言わないでくださいよ」
「いつでも待ってるよ私w」
「待たなくていいですからw」
そんな軽口を叩きながらもオレは安心していた。今のやり取りは月城さんであって、『神川ひなた』でもあったから。明日は面接選考だ。月城さんのイラスト通りの人材を選ぶように頑張らないとな
3月下旬。春の陽光がリビングの窓から優しく差し込む中、久しぶりに高坂さんとスケジュールの打ち合わせをしていた。コーヒーの湯気が立ち上り、部屋には穏やかな空気が流れている。
「明日はついにCGSプロジェクトの最終面接があります。頑張ってくださいね」
「新しい仲間だからな、楽しみではあるよ」
「それと、今回の春の大型企画ですが来週の4月5日の19時からの予定で、内容は『Fmすたーらいぶ村を救え!チャット人狼』というものです。司会は愛梨さんと芽衣子さんの『みるくココア』のお二人です」
「おお!『みるくココア』か。大型企画の司会、やりたがってたもんな愛梨ちゃんは。まぁ、卯月さんがフォローしてくれるなら問題ないだろうけど」
「念願ですからね。それより神崎先輩はプレイヤーなので、人狼ゲームのルールを把握しておいてください」
「うん。分かった」
人狼ゲームか……何度かやったことはある。でも、対面じゃないチャット形式というのは初めてだ。どんな感じになるんだろう。細かいルールは後でしっかり確認しておかないと。
「あ。あとこれは来月ですけど、『ルート47』のGW特別版が入ってます。収録は4月中旬~下旬です」
「え?また?」
「またって言っても、神崎先輩が行ったの去年ですよ?もう半年経ちます。組み合わせはまだ決まってませんが……今回は当日に誰か分かると思います。もちろん神崎先輩が姫宮ましろだと知っている人が選ばれると思いますけどw」
「もしかしたら高坂さんの可能性もある?」
「確かにその可能性はありますね。その時はよろしくお願いいたしますw」
ルート47か……彩芽ちゃんとか高坂さんなら、そこまで緊張しないんだけどな。他の人だったら、何を話せばいいのかどう振る舞えばいいのか今から少しだけ憂鬱になる。前回は確か3人だったし、まだ七海がいた。あの時は七海の存在がどれだけ大きかったか今になって痛感する。
その後は、いくつか抱えている案件や、細々とした雑件の話をして、今日の打ち合わせは終了した。時計を見るともうすっかり午後になっている。さて、次はオレが月城さんと打ち合わせだ。彼女の家に向かうことにする。最近は便利なディスコードでの打ち合わせが多かったから、直接顔を合わせるのは、もしかしたら1ヶ月ぶりくらいになるかもしれない。
しかも……出発前に、あの月城さんから『颯太君。ケーキ食べたいから買ってきてほしいなぁ~』と。少し甘えた言い方でお願いされた。
ということで、駅前のケーキ屋でいくつか美味しそうなケーキを選び、紙袋を手に月城さんの家へと向かいインターホンを押すと、少し間があって明るい声が聞こえてきた。
「はーい!」
ドアが開くと、予想通り満面の笑みを浮かべた月城さんがそこに立っていた。
「颯太君、いらっしゃい」
「こんにちは」
「さあ、上がって」
リビングに入ると、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐった。テーブルの上には、すでに可愛らしいティーカップとソーサーが用意されている。
「わあ、美味しそうなケーキ!ありがとう颯太君」
「どういたしまして。どれがいいですか?」
「う~ん。迷っちゃうなぁ~じゃあ、私はこれにしようかな?」
月城さんが指さしたのは、ピンク色のクリームとイチゴが乗った可愛らしいケーキだった。そして残りのケーキは冷蔵庫に入れ、月城さんは向かいのソファに腰を下ろした。
「早速なんですけど、修正したCGSの立ち絵のデータをいただけますか?明日の面接選考で使うので」
「うん。これUSBね」
「ありがとうございます」
「いやぁ……ここまで来たんだね。私がお休みして5ヶ月も経つのか早いねw」
「そうですね。そろそろ配信したいんじゃないですか?ひな客さんも待ってますしね?」
「どうかなぁ?こっちの仕事も全然楽しいよ。やっぱりずっとやりたかった仕事だしね?」
……確かにそうか。月城さんはこの仕事の方が本来やりたいことだしな。まさか……このまま戻らずに卒業するのか……?
「あれ?颯太君。もしかして私がこのまま戻らずに卒業しちゃうとか思ってる?」
「……少しだけ過りましたけど」
「あはは。せっかくママになるんだから、まだ卒業はしないよ。まだ楽しみたいし。まぁ……卒業はいいお相手が出来たらにしようかな?あ。颯太君が彩芽ちゃんと別れたら貰って貰おうかなw」
「縁起でもないこと言わないでくださいよ」
「いつでも待ってるよ私w」
「待たなくていいですからw」
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