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落第パートナー1
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ここ、どこだ?
朝の光が差し込む廊下で俺は迷っている。
今日から授業はパートナーと一緒に行うため教室が変わる。魔法学院の敷地はとても広く、これから行くはずの教室にはまだ行ったことがなかった。もしホウキで飛び回れたら簡単に着いただろうが、ここは学院。校則では学院内でのホウキは使用禁止で、校則は守らなければならない。
時間には余裕をもって行動出来るように早めに出てきたからいいんだけど……。
ふと外の庭に目をやると、木の下に誰かいるらしい。茶色のくせのある髪が風になびいているのが見えた。
ん……あれは、星宮紗那?
木に隠れて様子を見る。彼女が抱いているのはうさぎだろうか。ここからでは声が聞こえないな。
「音よ、我に従い空気を震わせ我がもとまで届けよ」
するとさっきまでささやかに聞こえてきていた風の音も、遠くを飛ぶ鳥の鳴き声まで俺のもとに届いた。そしてすぐに彼女の声も聞こえてきた。
「じっとしててね、大丈夫だよ」
そう星宮さんが言ったとき彼女の手から白い光が生まれ、彼女はそれをうさぎに当てた。
「もう大丈夫よ」
うさぎは一度彼女にすり寄ると楽しそうに駆けていってしまった。
何が起きたんだ……?
というより、魔法を使っても彼女の呪文が聞こえなかった。魔力の弱い者は声に出すことで魔法を作り上げる。俺も日常生活で使う魔法は大抵声に出さずとも使えるが、さっきみたいに音の魔法など使いなれていないものや、影の魔法のレベルが高い魔法は口に出して言わないと使えない。
ということは、さっきの魔法は簡単な魔法ということか?
たとえそうだとしても、あの光は見たことがない。
「月森……双夜」
「えっ?」
彼女がゆっくりと振り返ってまっすぐに俺を見つめた。
どういうことだ?気づいてたのか……?
「気づいてたんだ」
「まあ、近くで魔法を使われたし、魔法が広範囲にかかっていたことと、近くにいるはずなのに全く呪文が聞こえなかったことを考えたら、それだけのことが出来るのはあなたしかいないもの。それに魔法の光が紫だったから」
嘘だ……。そんなはずはない。光は極力抑えたし、いや抑えたとかじゃなくてこの魔法で光は出してないんだから。そもそも魔法の気配を感じることが出来たと言うのか?
「何してたの?」
そう聞くと彼女は「んー」と悩んだ様子を見せた。けれど、俺のほうを見て、
「秘密」
そう言ってふわりと笑った。
◇◇◇
「では、さっそくやってもらいましょうか」
今日の授業は召喚魔法。魔法陣を描いてそこにお題の物を召喚させる。至って簡単である。
「じゃ、私が見せるほどのものでもないので。そうね、月森君やって頂ける?」
まただよ……。ここに来てもそうなのか。
「はい」
前に出て先生からお題を貰う。「さくらんぼ」って先生の好きなやつじゃん!
「双夜様よ」
「私、このクラスになれて良かったわ」
「影よ、我に従いさくらんぼを召喚せよ」
一瞬にして紫の光を放つと、魔法陣の中にはたくさんのさくらんぼが現れた。
それを籠に入れて先生に差し出す。
「先生の好物であると聞いていたためにこの量を召喚してしまいました。どうぞ、これから卒業までよろしくお願いいたします」
「あら、さすがね」
お嬢様方の黄色い声とご令息方の感心を受けながら席に着く。
「それでは皆さんにもやって貰いましょう。パートナーで成功したところから、終わってもいいですよ。さあ、お題を取りに来てください」
星宮さんが皆と同じように先生のもとに集まっていく。俺もその後を追った。
「先生、俺は……」
「あ、月森君はもう合格です。星宮さんの魔法を見ていてください」
ちょうどそこにお題を持って星宮さんが戻ってきた。
「何だった?」
「ラズベリー」
また先生の好物じゃん。絶対いいように授業作ってるだろ。
「いいなー紗那さんってば。双夜様独り占めじゃん」
「てか、双夜がいれば簡単に授業終われるってあいつ運良かったなー」
何だこいつら……全員で彼女のことそんなふうに。少しひどいんじゃないか。
それに俺がいればって、俺は俺の力でここまできたんだよ。それを知らないくせに……。
「おい、ちょっと──」
「てかさー」わざとらしい大声が響く。声のほうを見ると、俺といつも争っている丘崎彗の姿があった。丘崎は火を司る太陽の国の出身で、代々王家に仕えてきた家であった。
「星宮さんと契約結んだ月森君って本当はそのレベルってことなんじゃなぁい?」
こいつ……俺が思ってたことをっ。
「やめてよ、失礼じゃない」
丘崎のパートナーは必死に止めるが、丘崎の口は止まらないようだ。
「だってそうだろ?契約魔法は魔力の強さと相性で決まるんだろ?それでなったパートナーが星宮さんじゃないか」
何も言えない。それが事実なんだから。
「月森…双夜」
星宮さんの声に耳も貸さずに教室を出る。
なんで星宮さんがパートナーなんだ。彼女と何が合ったんだよ、俺は。力のなさか?
俺は、月森家の恥じゃないか。
朝の光が差し込む廊下で俺は迷っている。
今日から授業はパートナーと一緒に行うため教室が変わる。魔法学院の敷地はとても広く、これから行くはずの教室にはまだ行ったことがなかった。もしホウキで飛び回れたら簡単に着いただろうが、ここは学院。校則では学院内でのホウキは使用禁止で、校則は守らなければならない。
時間には余裕をもって行動出来るように早めに出てきたからいいんだけど……。
ふと外の庭に目をやると、木の下に誰かいるらしい。茶色のくせのある髪が風になびいているのが見えた。
ん……あれは、星宮紗那?
木に隠れて様子を見る。彼女が抱いているのはうさぎだろうか。ここからでは声が聞こえないな。
「音よ、我に従い空気を震わせ我がもとまで届けよ」
するとさっきまでささやかに聞こえてきていた風の音も、遠くを飛ぶ鳥の鳴き声まで俺のもとに届いた。そしてすぐに彼女の声も聞こえてきた。
「じっとしててね、大丈夫だよ」
そう星宮さんが言ったとき彼女の手から白い光が生まれ、彼女はそれをうさぎに当てた。
「もう大丈夫よ」
うさぎは一度彼女にすり寄ると楽しそうに駆けていってしまった。
何が起きたんだ……?
というより、魔法を使っても彼女の呪文が聞こえなかった。魔力の弱い者は声に出すことで魔法を作り上げる。俺も日常生活で使う魔法は大抵声に出さずとも使えるが、さっきみたいに音の魔法など使いなれていないものや、影の魔法のレベルが高い魔法は口に出して言わないと使えない。
ということは、さっきの魔法は簡単な魔法ということか?
たとえそうだとしても、あの光は見たことがない。
「月森……双夜」
「えっ?」
彼女がゆっくりと振り返ってまっすぐに俺を見つめた。
どういうことだ?気づいてたのか……?
「気づいてたんだ」
「まあ、近くで魔法を使われたし、魔法が広範囲にかかっていたことと、近くにいるはずなのに全く呪文が聞こえなかったことを考えたら、それだけのことが出来るのはあなたしかいないもの。それに魔法の光が紫だったから」
嘘だ……。そんなはずはない。光は極力抑えたし、いや抑えたとかじゃなくてこの魔法で光は出してないんだから。そもそも魔法の気配を感じることが出来たと言うのか?
「何してたの?」
そう聞くと彼女は「んー」と悩んだ様子を見せた。けれど、俺のほうを見て、
「秘密」
そう言ってふわりと笑った。
◇◇◇
「では、さっそくやってもらいましょうか」
今日の授業は召喚魔法。魔法陣を描いてそこにお題の物を召喚させる。至って簡単である。
「じゃ、私が見せるほどのものでもないので。そうね、月森君やって頂ける?」
まただよ……。ここに来てもそうなのか。
「はい」
前に出て先生からお題を貰う。「さくらんぼ」って先生の好きなやつじゃん!
「双夜様よ」
「私、このクラスになれて良かったわ」
「影よ、我に従いさくらんぼを召喚せよ」
一瞬にして紫の光を放つと、魔法陣の中にはたくさんのさくらんぼが現れた。
それを籠に入れて先生に差し出す。
「先生の好物であると聞いていたためにこの量を召喚してしまいました。どうぞ、これから卒業までよろしくお願いいたします」
「あら、さすがね」
お嬢様方の黄色い声とご令息方の感心を受けながら席に着く。
「それでは皆さんにもやって貰いましょう。パートナーで成功したところから、終わってもいいですよ。さあ、お題を取りに来てください」
星宮さんが皆と同じように先生のもとに集まっていく。俺もその後を追った。
「先生、俺は……」
「あ、月森君はもう合格です。星宮さんの魔法を見ていてください」
ちょうどそこにお題を持って星宮さんが戻ってきた。
「何だった?」
「ラズベリー」
また先生の好物じゃん。絶対いいように授業作ってるだろ。
「いいなー紗那さんってば。双夜様独り占めじゃん」
「てか、双夜がいれば簡単に授業終われるってあいつ運良かったなー」
何だこいつら……全員で彼女のことそんなふうに。少しひどいんじゃないか。
それに俺がいればって、俺は俺の力でここまできたんだよ。それを知らないくせに……。
「おい、ちょっと──」
「てかさー」わざとらしい大声が響く。声のほうを見ると、俺といつも争っている丘崎彗の姿があった。丘崎は火を司る太陽の国の出身で、代々王家に仕えてきた家であった。
「星宮さんと契約結んだ月森君って本当はそのレベルってことなんじゃなぁい?」
こいつ……俺が思ってたことをっ。
「やめてよ、失礼じゃない」
丘崎のパートナーは必死に止めるが、丘崎の口は止まらないようだ。
「だってそうだろ?契約魔法は魔力の強さと相性で決まるんだろ?それでなったパートナーが星宮さんじゃないか」
何も言えない。それが事実なんだから。
「月森…双夜」
星宮さんの声に耳も貸さずに教室を出る。
なんで星宮さんがパートナーなんだ。彼女と何が合ったんだよ、俺は。力のなさか?
俺は、月森家の恥じゃないか。
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