異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

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第1章 魔法使いしかいない世界

第6話 二人とギルドと初戦闘①

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「マジであの屋敷からギルド支部まで近かったな......」

「でしょ? だからそんなに張り切って行く距離じゃないって言ったのよ」

 俺とホノラはギルド支部へ来ていた。なるほどデカい。

 ホノラの屋敷も相当デカいと思ったがそれより二回りは大きい。

「......なんかいざ中に入るとなるとドキドキするわね......」

「よ、よし! 開けるぞ……」

 俺は身長の倍以上の高さはある扉をゆっくりと開けた。そこに広がっていたのはThe、異世界! といった光景だ!

「うぉぉぉすげぇぇぇ! 真正面クエストカウンター! 隣に依頼の掲示板! 酒場まで併設されてるー!!!! 異世界っぽぉぉぉい!」

「ちょっと大きい声で騒がないでよ! アホみたいじゃない!」

 スマンがそれは無理な相談だ。誰しも一度はゲームで見た事があるであろう光景。

 カウンターでは簡素な鎧を身に纏った女性が受付のお姉さんから報酬を受け取っている。

 酒場では小人から巨人まで、様々な種族の冒険者達が昼間から酒を飲んでいる。

 そうか、ギルド入口の扉がやたらデカく、天井が無茶苦茶高いのはこの為だったのだ。

「冒険者ギルド、サラバンド支部へようこそ! ギルドへの依頼でしょうか?」

 俺達に向かって受付のお姉さんが話しかけてきた。

 でっっっっっ......視線が思うように上に行かない......

「マツル今凄く失礼な事考えなかった?」

「何も? あ、受付のお姉さん! 俺は冒険者になりたくて......そういえばホノラはなんの用事があったの?」

「私も! 冒険者になりたくて!」

 あらそうだったの。でもまあ確かパワーあるし、冒険者向きではあるか。

「あ! そうなんですね! それではお2人とも、カウンターで必要な書類を書いていただきますのでこちらへどうぞ」

「えーと......必要記入欄は......名前と?」

 名前はまあ......日本名の苗字なんてこの世界に馴染まなそうだし、【マツル】で良いだろ!

「希望する職業は......剣士と」

 これは確定。魔法も良いけど、今の所覚えてないし、しばらくは刀一本で頑張ろう。

「お姉さん、出来ました」

「はい! ありがとうございます! 確認しますね......えっ!? 剣士!?」

 お姉さんが叫ぶ。その瞬間、騒がしかったギルドが静寂に包まれた。

 え? 剣士って普通じゃないの? なんでホノラまで驚きの表情で俺を見てるの?

「おいおい兄ちゃん~? 今剣士になりたいって聞こえたぞ~?」

 酒場の方からドワーフの男が近付いて来た。かなり酔っているようで、足元がフラフラとしていた。

「兄ちゃん。何か魔法は使えるのかい?」

「使えない」

「じゃあどうやって仲間と連携を取りながら魔物を討伐するんだ?」

「そりゃ前衛と後衛に分かれてだろ」

「ギャハハハハハ!!!! こいつ何百年前から来たんだぁ!? 冗談がキツイぜ! ハハハハハハ!」

「どこの物好き聖騎士長様だろうなァ! ギャハハハハハ!!」

その言葉を聞いた酒場の連中は物凄い勢いで笑いだした。

「何がおかしいんだよ」

「兄ちゃん本当に何も知らないのか......? まあ教えてやろう。剣士と魔法使いがバランスよくパーティを組んでいたのはもう何百年も昔の話だ――――」

 酔ったドワーフのオッサンはなぜ俺が笑われているのかを、その理由を話してくれた。

 曰く、昔の人が「魔法強くね? これ剣士要らなくね?」ってなっちゃったらしい。
 
 この世界の生物は、多かれ少なかれ皆魔力を持って生まれる。

 1000年以上前はその差が大きく、魔力の少ない者は剣士、多い者が魔法使いと上手く分担していたそうだが、ある時その差が一気に縮まった。魔法が使えない程魔力が少ない種族がそもそも存在しなくなったのだ。

 そこからは話が早く、前衛が火力を出しながら適宜魔法使用という従来の流れよりもパーティ全員が魔法を使って吹き飛ばす方が効率的になり、剣士ではなく人それぞれに適正のある回復魔法や属性魔法と言った系統魔法を使える人物をバランスよく組み込む方式が主流となり今に至ると言う。

「――――みんな魔法使いだというのになんとも脳筋な......」

「でもまあその方法が何百年も変わらないってぇのはそういう事なんだろ――――つー事で兄ちゃん。何か魔法が使えるようにならねぇと、パーティ組む事すら出来ねぇぞ?」

「その点は心配いらないわ!」

「嬢ちゃんは兄ちゃんと一緒に来た――――」

「そう! この私、ホノラがマツルとパーティを組むって言ってるのよ!」

 ホノラは胸をドンと張り、声高らかに宣言する。

「一応聞くが、嬢ちゃんはどんな魔法が使えるんだ?」

「私も魔法は使えないわ!」

「「「アンタも使えねぇのかよ!!!」」」

 俺、酔ったドワーフのオッサン、酒場の面々から一斉にツッコミが入る。

「私......小さい頃から魔力量は凄く多いけど、どの魔法が適正か分からなくて......それで『魔法が使えない貧弱娘』ってよく虐められたわ――――」

 ホノラにそんな過去が......昔はか弱かったんだな......

「まあ私の事を虐めた奴らは全員殴って土下座させたけど」

 前言撤回、彼女は昔から強い。

「私が冒険者になってからやりたいことは、私に使える魔法を旅の中で見つける事! これは他の冒険者の誰でもない、マツルと一緒だからやりたい事なの!」

 なんだろう......凄く嬉しい。まだたった2ヶ月の付き合いだけど、ここまで信用されているとは。

「私の殴打に耐えたのはアンタだけだからね!」

 あ、サンドバッグとして信用されてるんですね。

「――ちょっと待った!」

「誰だ!?」

 ドワーフのオッサンに俺が言いたかった「誰だ!?」を取られたがそれはこの際どうでもいい。でも本当に誰だ? この感動ムードに包まれたギルドに水を差すのは。

 扉を勢い良く開けて現れたのは後ろに沢山の女性を連れた3人の男だった。

「そこの女......ホノラとか言ったか? お前、そんな腑抜けた男はやめてフォレと一緒に来い......例えまだ魔法が使えなかろうと......俺がキッチリと教えてやろう...男の味って奴を☆」

 真ん中で女を侍らせている男が、無駄に決めポーズを取りながらホノラへとウインクを投げる。

「パンナ様カッコイー!」

「しかも見てください! ホノラとかいう女、パンナ様に見蕩れて声も出てませんよ!」

 その後ろに控える男二人は、見た感じ真ん中のパンナとやらの子分のようだ。

「唖然としてんのよ!!......てかあんた誰よ!」

 ホノラはウインクに若干震えながらも、すぐにいつもの調子を取り戻した。

「嬢ちゃん...悪い事は言わねぇから、アイツに逆らうのだけはやめておけ!」

「なんでよ!」

「いいか嬢ちゃんに兄ちゃん......あいつらはBランク冒険者パーティの”女狩り“パンナとその取り巻きのヤリナとモクナだ! 美人な冒険者を見つけてはパーティから奪う、そうやってハーレムを作ってるんだ! 俺が気を引いてやるから、酒場の裏口から今日は帰りな」

 なんだその最低な連中は......

「ホノラ。オッサンの言う通りあんまりここで騒ぎにするのはよそう?」

「パン......三馬鹿とオマケ! 私はあんた達の仲間になる気は無いわ!」

 わーホノラちゃん、たった3文字の名前も覚えられないとは、余程興味が無いんだね! ってちげーよ! なんでわざわざ騒ぎを大きくするようなこと言うんだよ!? 

「ハッ......! ここまで気の強い女は初めてだ......なぜその男にこだわる? なんだその貧相な体つき! 俺のこの男らしいボディを見よ!!」

 急にパンナは上着を脱いだ。まぁ......うん、子分AとBが拍手してるけどそうでも無いからな?

「マツルは! 私の殴打に何度も耐えた! 初めての人よ! あと私下まつげ長い男嫌いなの。よってあんたは嫌い!」

「フッ......可愛い女の子の拳に耐えるとは随分とそこの男は強いんだな! なら俺がコイツより多く耐えれば!! 君は俺と一緒に来るのかい?」

「上等じゃないやってやろうじゃないの!」

「パンナ様~! こっちの男は俺達が締めても良いですか~?」

「ハッ! 良いだろう......このベテランBランク冒険者パンナが許可する......そこの貧弱な男はお前らが捻って差し上げなさい!」

 あ、俺も戦わなきゃなの? 2対1?

 こうして俺とホノラは異世界で初めての戦闘、対”女狩り“戦が始まるのだった。
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