異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

ちょっと黒い筆箱

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第1章 魔法使いしかいない世界

第11話 初クエストと奇怪植物と魔獣③

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「――――で、青魔ンドラゴラってどこに生えてんの?」

「そりゃあ【特選!!】なんだからそう簡単に見つからないでしょ」

 俺達はサラバンドの西に広がるウッソー大森林、その奥地に約3日をかけて到達した。

「――あ、そういえば依頼文に『デカい木の根元に生えてる青いキノコっぽいのが魔ンドラゴラ』って書いてあったな......」

「あ! マツルみて! このキノコじゃない?」

 ホノラが手を振っている方に行ってみると、確かにデカい木の根元にビビットブルーのキノコが四つ生えていた。

「ちょうど三本あるし、これでクエストクリアね!」

「何そのまま抜こうとしてんのストップストップ!」

 俺はホノラがそのまま抜こうとしているのを急いで止めた。

「良いか? 魔ンドラゴラってのは、抜いた瞬間に叫び声をあげるんだ。それを直接聞くと死ぬから、耳栓買ってきたんだろ?」

「マツルって異世界人なのに変な所詳しいわね......」

ゲームとか本の知識だよね。

「――ホノラ耳栓付けたか?」

「......え?」

 俺の声が聞こえて無さそうなのでバッチリだな!

 俺とホノラはせーので魔ンドラゴラを引き抜いた。

 世にも恐ろしい絶叫とは、一体どんな声なのだろうか――――

”マンドラゴラァァァァァァ!!!!!!“

「お前そうやって叫ぶんかいィィィィ!」

 意外すぎる絶叫に驚きながらも俺達は、特選!!青魔ンドラゴラを3本収穫することに成功したのだった。一本は残しておこう。過剰採取は良くないことらしいからな。

「――声圧にはちょっと驚いたけど、案外楽勝だったわね!」

「Eランクの俺達でも行ける採取だからな。ちゃんと対策すればこんなもんだ――――」

 物陰からガサガサと、何かが近付いてくる音がする。

「なんの音?」

「しっ......ホノラもいつでも戦闘ができるような体制を取って......」

「わかったわ!」

 俺も刀を抜き構える。物陰から現れたのは、背中に大量の棘を蓄えた魔獣であった。

「グルルルルル......」

 魔獣は棘を逆立たせ、臨戦態勢といった様相だ。

「ホノラ、あの魔獣は?」

「あの魔獣は針球獣ボールボーグ、Cランクの魔獣ね。背中を丸めて大きな針球になって突進して来るわ! ちょうどあんな風に......」

 ホノラの説明の通り、ボールボーグは巨大な針の球となりこちらに転がって来た。

「避けろ避けろ!! あんなの喰らったら全身穴だらけだぞ!?!?」

「あっぶないわね!」

 突進を間一髪で躱した。するとボールボーグは俺達の後ろにあった大木に激突! 大木はメキメキと音を立てて根元から倒れてしまった!

「グルルルルルル......」

 ボールボーグは針球から元に戻り、フラフラとよろめき始めた。

「流石にでっかい木とぶつかるのは堪えたか!? 今の内にトドメを刺してやる!」

 俺は身動きの取れないボールボーグに向かって刀を振り下ろす。しかし、刃は背中の針の塊に阻まれ体に傷を付けることは出来なかった。

「かってぇ! ホノラのグーパンチでなんとかならないか!?」

「嫌よ! あんな針触ったら痛いでしょ!?」

 ちょっとくらい我慢してくれよぉぉぉ!

「――じゃあ俺が首を落とす!」

 顔の部分に近付いて初めて気が付いた。コイツ、目が完全に潰れていた。

ただ傷付いている訳じゃない。ドス黒い煙のような物が今も顔を喰っているのだ。

「!?  なんだその顔!?」

 俺は一瞬、刀を振り下ろすのが遅れてしまった。その一瞬でボールボーグはまた針の球になり、次は俺達を殺さんと雄叫びをあげた。

「ああなっちまったらアイツは無敵だ! 何か衝突させられるようなデカい木とか岩は!」

 クソッ! 近くにそんな都合良くある訳ないか!

「――――マツル! ボールボーグを出来るだけ引き寄せて私の所に走って!」

 ホノラは先程倒れた大木の近くに居た。何か策があるようだ。

「オーケイ! 信じるぞ!」

「グルギャァァァァ!!!!」

 俺が走り出すと同時に、ボールボーグ改め巨大針球も突撃を始める! 少しでも気を抜けば追い付かれるスピード感でホノラの元へと飛び込んだ。

「――一体何をする気なんだ!?」

「マツルもちゃんと耳塞いどきなさいよ!」

 ホノラは倒れた大木の根元に生えていた青いキノコを抜き去った。あのキノコは俺達がさっき残しておいた――――

”マンドラゴラァァァァ!!!!“

「グギィ!!?!!?!!?!?」

 ボールボーグが俺達を串刺しにする直前、魔ンドラゴラの絶叫を耳にしたボールボーグは泡を吹いてその場に倒れ込んだ。

「魔ンドラゴラの声を直接聞いたら死ぬ。そうだったわよね?」

「ああ......助かった!」


◇◇◇◇

「――さて、高ランクの魔獣も討伐できたことだし、依頼も達成してるし、帰るとするか!」

「そうね! こんな完璧にこなしたんだったら、一気にDランクに上がっててもおかしくないんじゃないの!?」

「帰ったらメツセイさんに感謝しないとな~」

「――――それで、どっちから帰るの?」

 あれ? そういえば森の地図って無いよな......?

「ホノラちゃん......? 帰り道ってどっちか覚えてる...?」

「? 分からないわよ? マツルが知ってるんじゃないの!?」

 その後、たまたまこの森にクエストに来ていたメツセイさんに発見されるまで二日、俺達は森の中を彷徨うのだった。
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