異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

ちょっと黒い筆箱

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第1章 魔法使いしかいない世界

第12話 疑念と豪快ドワーフコンビ①

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「――――んで、俺が来なかったら森の中で野垂れ死にしてたかもしれない......と」

「メツセイさんいやもう本当にありがとうございます」

 採取クエストでウッソー大森林に赴いた俺とホノラは、Cランク魔獣の”ボールボーグ“に襲われたり、帰り道が分からなくなるなどのハプニングがあったものの、なんとか街まで帰ってくる事ができたのだった。そして受付に魔ンドラゴラを提出してびっくり! なんと初クエストでDランクに上がる事が出来たのだ! 

 受け付けのお姉さん曰く「採取難度Cの魔ンドラゴラでこんなに元気な顔なのは初めて」との事。魔ンドラゴラは口が開いていれば開いている程良質な薬になるらしく、それが一発昇格の決め手だったんだそう。

 しかし、帰ってからいい事ばかりは続かないのであった。

「ギャハハハハハ!! 大体商人でも半日あれば覚えられる探索魔法すら使えないクセに大森林に入るのが間違いなんだよ!」

「やっぱり魔法が使えない奴らの集まるパーティはダメだな! 出直してこい~!」

 酒場の酔っ払い冒険者が俺達を笑い者にして酒を浴びている。あーもうほらホノラなんか涙目になって下を向いちゃって。

「やめねえかお前らァ!」

 その場を一喝したのはメツセイだった。

「コイツらは冒険者になりたての新米ルーキーだ! ”女狩り“の一件で
強さは申し分無いと思って高ランクの依頼を紹介した俺にも責任がある! 笑うならまずこの俺を笑いやがれ!」

 メツセイの言葉で周りは静まり返る。ドワーフのおっちゃんカッコよすぎかよ! ならず者集団の大将って感じがしていいね!

「でもよぉメツセイ、コイツらがボールボーグを仕留めたってのはいくらなんでも信用出来ねぇぜ?」

「魔法が使えても沼魔法で沈めて窒息...ってのが定石のアイツを......しかも男位の大きさなんてそうそういないぜ...?」

 まぁ知ってたけどここも疑いの声が漏れ出てきている。ボールボーグの死体は持って来れなくて証拠も無いので当然と言えば当然なのだが。

「そういえば兄ちゃんに嬢ちゃん、あの時のボールボーグの死体はどうしたんだ? 確か俺と森で会った時には嬢ちゃんが担いでたよな?」

「あぁ......帰り道で腐り出して...それで...う...気持ち悪くなってきた」

「暑かったですからね...腐敗が中々に早くて...」

 ホノラの背中が腐敗した死体でぐちゃぐちゃのびちゃびちゃになったのだった...あれは女の子じゃなくてもトラウマだよ。俺も思い出したくない。

「それぁ災難だったな......」

 本来なら保存魔法や氷魔法が必ず一人は使える為、長距離移動でも防腐処理は完璧なのだそう。よってメツセイもこのような状況は初めての体験らしい。

「あ、そうだ。ボールボーグ関連で一つ皆さんに聞きたい事があるんですけど――――」

「おう? どうしたんだ兄ちゃん?」

 メツセイだけでなく酒場の冒険者も、果ては受付のお姉さんまで興味津々な顔で俺を見始めた。大勢の人の前で質問なんて小学校以来だからなんか緊張する......

「あの、実物は見せられないんですけど、俺達が倒した個体の目が潰れてたんです。しかもただ怪我したんじゃなくて、よく分からない黒い煙みたいなのが顔を食べてて。そういう魔物とか魔獣ってよくいるんですか?」

「――なんだそれ...聞いた事あるか?」

「さぁ? 見た事も聞いた事も無いな」

「魔法が使えないのをバカにした腹いせで俺達をからかってるんじゃ無いのか~?」

「ちげぇねぇ! さっさと白状しちまえよ!」


 なんでそうなるんだよ!? 

「――お前らいい加減に――――」

「良いわよメツセイさん。こんな酔っ払いに何かを期待した私達が悪かったわ。マツル、帰りましょ!」

 ホノラは俺の手を強引に引っ張りギルドを後にしようとする。

「嬢ちゃんちょっと待ってくれ!」

 俺を反対から引っ張る形で引き止めたのはメツセイだった。

「なに?」

「さっきの詫びの話だ! 嬢ちゃんも兄ちゃんも装備がなんと言うか......簡素だからな! 良い武具屋紹介してやるよ!」

「おお! 武具屋! やっぱりあるのか!」

 俺のホノラの装備は、お世辞にも立派とは言えない物だ。俺は師匠から貰った刀一本だけだし、ホノラに至っては完全丸腰である。今回の一件でさすがに防具位は欲しいねと二人で話をしていたところだったのだ。

「――いいじゃない! 早く行きましょ!」

「嬢ちゃんも乗り気で助かるぜ! 案内してやる!」
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