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第1章 魔法使いしかいない世界

第13話 疑念と豪快ドワーフコンビ②

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 メツセイに連れられて、俺達は街の外れまで来ていた。

「――ここだ。この店は、俺が知る限り最高の品を提供してくれる」

 メツセイが立ち止まり指さした建物は、やけにボロボロで、前に掲げてあったであろう看板は掠れて文字を読み取る事は出来ない。

「メツセイさん? ホントにここであってるんですか?」

「ああ! ここの店主は...まぁなんと言うか少々ガサツでな。あんまり見てくれにゃあ興味が無い訳よ」

「だが、腕は本物だ!」と豪快に笑いメツセイはドアを開けた。それと同時に店の中からホコリとカビが解放される。

「これはガサツなんてもんじゃ無いわよ!? 何をどうしたらこんな埃だらけになるわけ?」

 メツセイを含む3人の中で一番綺麗好きであろうホノラが目を見開き驚愕の表情で叫ぶ。

「やっぱり職人って放っておくとこうなる運命なんですかね......」

 俺は師匠の家の惨劇を目にしているので動揺が少ない。何か一つを極める職人は、それ以外の部分が疎かになってしまう物なのだろう。弟子の修行とか弟子の修行とかね。

「やっぱり兄ちゃんと嬢ちゃんはお似合いのパーティだな......おーいフューネス! 生きてるかー!!」

 一体どこでそう思ったのか分からないメツセイが店の奥へ声をかける。

 少し時間を置いて、店の奥から人影が現れた。

「――――ンだよ久しぶりに客かと思ったらお前かよメツセイ......飛び起きて損したわ...」

「残念ながら本当に客だ。俺じゃないがな」

 メツセイと親しげ(?)に話すその人物は、メツセイと同じ喑褐色の肌で、茶髪の女性だった。名前はフューネスと言うらしい。

「ほーん...メツセイにしてはやるじゃないか。こんな可愛い男の子を連れてくるなんて......」

 近くで見るとよく分かる。フューネスはデカい! 威圧感がすごい! 後顔がちょっと怖い!

「――――食べるなよ?」

「安心しな! メツセイにはアタシが客も食べる怪物に見えてンのかい? それに、アタシはもう少し年下が好みなんだよ......」

「良かったわねマツル! 食べられそうだったけど助かって!」

 にこやかなホノラがヒソヒソと耳打ちをする。ごめんなホノラ。多分言葉通りの意味じゃないんだ。

「食べるってそういう意味じゃ......」

「違うの? じゃあなんの事?」

 あ、知らないなら大丈夫でーす。そのままでいてくださーい。

「――それで、客はなんの用だい? まさか! ウチが武具屋だと知ってここに......」

「フューネス......俺が連れて来たんだから当たり前だろうが!」

 なぜ俺達がここへ来たのか、メツセイが全て説明してくれた。魔法が使えないから近接戦闘主体な事と、そしてそれに伴う装備が欲しい事を。

「――つー訳なんだが、一つ頼まれちゃくれないか?」

「無理だな」

 無理なのかよ! 腕のいい職人じゃ無かったのか!?

「理由は2つある。まず1つに、アタシは近接戦闘主体の奴に向けた装備を作った事がない。ジジーの代まではノウハウがあったらしいが親父が儲からないからと私に作り方を教えちゃくれなかった」

 元の世界でも似た様な悩みがあった気がするな......伝統技術の後世の担い手が少ない的な問題とそっくりだ。

「――そして2つ目。これが技術云々よりも問題だ」

「その心は?」

「頑丈な防具を作る為の鉱石が足りねえ。魔鉱は腐る程あるのに普通の鉱石が全くと言っていいほど手元に無い」

 フューネスが言うには、鉱石にも大まかに分けて通常の鉱石と魔力を大量に含んだ魔鉱石の2種類があるのだと。魔鉱石は魔力を通しやすい為様々な魔道具や魔法発動の触媒としてはよく使われるが、硬さに難点があるという事で防具には向かないそうだ。そして通常の鉱石の採掘量が段々減ってるんだと。

 そもそも魔法使いしかいないこの世界では、防具と言えば対魔力に耐性のあるローブやコートを着用するのが一般的。物理攻撃はされる前に消し飛ばすのが常識なのでこの問題はあって無いような物なのだが......

「俺達には致命的だな......」

「どうするマツル? 私達も殺られる前に殺るノーガード戦法で行く?」

 ホノラ、それは余りにもリスクがあるね。うん。

「――という事で客とメツセイにとして依頼を出そうと思う! 私が案内するので、質の良い鉱石が取れる坑道までの護衛と採掘の手伝い! 報酬はアンタ達に最高の武具防具を作ってやる! どうだい? 受けるかい?」

 フューネスはメツセイそっくりな豪快な笑みを浮かべ提案をしてきた。ホノラの方に顔を向けて見るとウキウキ顔で頷いている。決まりだな。

「その依頼! 受けさせていただきます!」

「じゃあ決まりだな! アンタら、すぐ出かけるよ! 準備しな!」

「「はいっ!」」

「あー...フューネス? 俺の報酬は?」

「メツセイにはギルドの酒場で酒でも奢ってやるよ。それが一番好きだろ?」

「流石は俺の旧知の友!! 最高だぜ! ガハハッ!」

 酒と装備で繋がる信頼。俺達は準備を整え、採掘場へと向かうのだった。


◇◇◇◇


「目無しの魔物...か......」

「はい、最近入ったばかりのマツルと言う冒険者がウッソー大森林で見たと」

 ギルド内のとある一室で受付嬢と若い男が話をしている。

「何か不吉な事の前触れかもしれない。他の地域でも目撃した人物がいないか調べておいてくれ」

「かしこまりました。ー」

――――目を黒煙に喰われた魔物、これは僕が動く案件かもね。

 ギルドマスターは思案する。全てはこの街を、国を守るため。
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