異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

ちょっと黒い筆箱

文字の大きさ
13 / 135
第1章 魔法使いしかいない世界

第13話 疑念と豪快ドワーフコンビ②

しおりを挟む
 メツセイに連れられて、俺達は街の外れまで来ていた。

「――ここだ。この店は、俺が知る限り最高の品を提供してくれる」

 メツセイが立ち止まり指さした建物は、やけにボロボロで、前に掲げてあったであろう看板は掠れて文字を読み取る事は出来ない。

「メツセイさん? ホントにここであってるんですか?」

「ああ! ここの店主は...まぁなんと言うか少々ガサツでな。あんまり見てくれにゃあ興味が無い訳よ」

「だが、腕は本物だ!」と豪快に笑いメツセイはドアを開けた。それと同時に店の中からホコリとカビが解放される。

「これはガサツなんてもんじゃ無いわよ!? 何をどうしたらこんな埃だらけになるわけ?」

 メツセイを含む3人の中で一番綺麗好きであろうホノラが目を見開き驚愕の表情で叫ぶ。

「やっぱり職人って放っておくとこうなる運命なんですかね......」

 俺は師匠の家の惨劇を目にしているので動揺が少ない。何か一つを極める職人は、それ以外の部分が疎かになってしまう物なのだろう。弟子の修行とか弟子の修行とかね。

「やっぱり兄ちゃんと嬢ちゃんはお似合いのパーティだな......おーいフューネス! 生きてるかー!!」

 一体どこでそう思ったのか分からないメツセイが店の奥へ声をかける。

 少し時間を置いて、店の奥から人影が現れた。

「――――ンだよ久しぶりに客かと思ったらお前かよメツセイ......飛び起きて損したわ...」

「残念ながら本当に客だ。俺じゃないがな」

 メツセイと親しげ(?)に話すその人物は、メツセイと同じ喑褐色の肌で、茶髪の女性だった。名前はフューネスと言うらしい。

「ほーん...メツセイにしてはやるじゃないか。こんな可愛い男の子を連れてくるなんて......」

 近くで見るとよく分かる。フューネスはデカい! 威圧感がすごい! 後顔がちょっと怖い!

「――――食べるなよ?」

「安心しな! メツセイにはアタシが客も食べる怪物に見えてンのかい? それに、アタシはもう少し年下が好みなんだよ......」

「良かったわねマツル! 食べられそうだったけど助かって!」

 にこやかなホノラがヒソヒソと耳打ちをする。ごめんなホノラ。多分言葉通りの意味じゃないんだ。

「食べるってそういう意味じゃ......」

「違うの? じゃあなんの事?」

 あ、知らないなら大丈夫でーす。そのままでいてくださーい。

「――それで、客はなんの用だい? まさか! ウチが武具屋だと知ってここに......」

「フューネス......俺が連れて来たんだから当たり前だろうが!」

 なぜ俺達がここへ来たのか、メツセイが全て説明してくれた。魔法が使えないから近接戦闘主体な事と、そしてそれに伴う装備が欲しい事を。

「――つー訳なんだが、一つ頼まれちゃくれないか?」

「無理だな」

 無理なのかよ! 腕のいい職人じゃ無かったのか!?

「理由は2つある。まず1つに、アタシは近接戦闘主体の奴に向けた装備を作った事がない。ジジーの代まではノウハウがあったらしいが親父が儲からないからと私に作り方を教えちゃくれなかった」

 元の世界でも似た様な悩みがあった気がするな......伝統技術の後世の担い手が少ない的な問題とそっくりだ。

「――そして2つ目。これが技術云々よりも問題だ」

「その心は?」

「頑丈な防具を作る為の鉱石が足りねえ。魔鉱は腐る程あるのに普通の鉱石が全くと言っていいほど手元に無い」

 フューネスが言うには、鉱石にも大まかに分けて通常の鉱石と魔力を大量に含んだ魔鉱石の2種類があるのだと。魔鉱石は魔力を通しやすい為様々な魔道具や魔法発動の触媒としてはよく使われるが、硬さに難点があるという事で防具には向かないそうだ。そして通常の鉱石の採掘量が段々減ってるんだと。

 そもそも魔法使いしかいないこの世界では、防具と言えば対魔力に耐性のあるローブやコートを着用するのが一般的。物理攻撃はされる前に消し飛ばすのが常識なのでこの問題はあって無いような物なのだが......

「俺達には致命的だな......」

「どうするマツル? 私達も殺られる前に殺るノーガード戦法で行く?」

 ホノラ、それは余りにもリスクがあるね。うん。

「――という事で客とメツセイにとして依頼を出そうと思う! 私が案内するので、質の良い鉱石が取れる坑道までの護衛と採掘の手伝い! 報酬はアンタ達に最高の武具防具を作ってやる! どうだい? 受けるかい?」

 フューネスはメツセイそっくりな豪快な笑みを浮かべ提案をしてきた。ホノラの方に顔を向けて見るとウキウキ顔で頷いている。決まりだな。

「その依頼! 受けさせていただきます!」

「じゃあ決まりだな! アンタら、すぐ出かけるよ! 準備しな!」

「「はいっ!」」

「あー...フューネス? 俺の報酬は?」

「メツセイにはギルドの酒場で酒でも奢ってやるよ。それが一番好きだろ?」

「流石は俺の旧知の友!! 最高だぜ! ガハハッ!」

 酒と装備で繋がる信頼。俺達は準備を整え、採掘場へと向かうのだった。


◇◇◇◇


「目無しの魔物...か......」

「はい、最近入ったばかりのマツルと言う冒険者がウッソー大森林で見たと」

 ギルド内のとある一室で受付嬢と若い男が話をしている。

「何か不吉な事の前触れかもしれない。他の地域でも目撃した人物がいないか調べておいてくれ」

「かしこまりました。ー」

――――目を黒煙に喰われた魔物、これは僕が動く案件かもね。

 ギルドマスターは思案する。全てはこの街を、国を守るため。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました

黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。 これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...