異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

ちょっと黒い筆箱

文字の大きさ
35 / 135
第3章 兄と妹

第35話 サラバンド王国騎士団長③

しおりを挟む
 くっそ......息が上手く吸えねぇし吐けねぇ......

『肺と気道。特に肺の方が大きく損傷しているね......このまま動き続けるのはダメージが大き過ぎる気がするよ』

 ナマコ神様が言うには、何か粉のような有害物質を吸い込んだ可能性が高いらしい。
 つまり、それがレオノラの魔法って訳だな。

 あれ? でも魔法使いって魔鉱石を媒体にして魔法を使ってるよな? 杖らしきものは持ってないし、一体どうやって......

『多分あれだね――――』

「レオノラ......お前がどうやって魔法を使っているのか気になってたが......その左手薬指の指輪だな?」

 指輪には、灰色に発光する石が埋め込まれている。恐らくあの石が魔鉱石なのだろう。

「ふふ......口から血を垂れ流しながら無様に倒れ伏す男が聞くセリフではないが良いだろう教えてやる――――」

 レオノラは退屈そうな表情から一転して満面の笑みを浮かべながら語り出した。

「――そう! この指輪は魔鉱石が埋め込まれた僕の宝物!! これは僕の誕生日にまだ小さかった頃のホノラが『おりーりゃんプレゼント!』と僕にくれた世界最高の至宝! あぁ......! 今のホノラも最強に可愛いがあの頃のホノラもまた愛らしい!」

 遂には指から外し頬擦りまで始めた......

「おいクソ兄貴コラァ!! なに恥ずかしい事大人数の前で言っちゃってるの!?」

 とんでもない過去をバラされた結果、顔を怒りで真っ赤に染めたホノラが乱入してきた。
 つか、妹からのプレゼントを左手薬指にはめてるのか......シスコンキモいな。

「愛する僕の妹よ。なぜ怒る? 後世に語り継ぐべきエピソードではないか?」

「そういう所が一々気持ち悪いって言ってるの! ホント信じられない!」

 遂には俺を差し置いて兄妹喧嘩が始まってしまった。

「あの......ホノラさん? そろそろ再開したいんですけど......」

 ウィールさんも困惑のこの表情である。

「わかったわ......邪魔して悪かったわね......マツル! 私のクソ兄貴の得意な魔法は“灰魔法”よ! だから気を付けなさい!」

 最後の最後で超重要な情報きたぁァァァ!!!! 
 成程灰魔法か......灰を作る魔法ってのが自然な考えで、それを吸い込んだから
肺が損傷したと! 

「ホノラ、サンキュな! ネタが割れたならこっちのもんじゃい!」

「......絶対勝ちなさいよ」

「任せとけって」

 ホノラは顔が赤いまま観客席へ戻って行った。モフローを頭に乗せて一緒に跳ねている。

「貴様......そうやって僕の愛する妹を誑かしたのだな......」

「だから誑かしてなんかいねぇって! アイツは俺の大事な仲間だ!」

 こっちはこっちでご立腹か。だが、灰を生成すると言う魔法のネタが知れた以上負ける事は――――

「貴様、俺がなんの魔法を使うか分かったから勝てるとか思っていないよな......良いだろう。僕の灰魔法の真の力、見せてやろう......」


◇◇◇◇

 マツルとレオノラの戦闘を見るモフローは、大福の形状に似合わない険しい顔でホノラに話しかける。

「小娘よ......小僧が本気で勝てると思っているのか?【灰色の英雄ロード・オブ・アッシュのレオノラ】と言えば、我の元主である魔王ニシュラブも警戒する程の人物。いくらなんでも――」

 ここまで言いかけたモフローをホノラが顔の前に近付けてつぶやく。

「黙って見てなさい。マツルなら勝てるわ。でも、ここから戦いはより激しくなってくるわね」

 ホノラの言う通り、戦闘は激化する。その決め手思いの外早く訪れた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました

黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。 これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...