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閑話

第42話 恋で人の心は一つになる

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「メツセイさんって、いつもヨージでお酒飲んでますけど、普段何してるんですか?」

 マツルの一言で酒場ヨージの店内が凍りつく!!

「あっ......」

 手の震えが止まらず皿を割るイントリーグ!!

「何......!? 俺の杖の魔鉱石が......」

「私のも!」

「ワシのも」

 その時酒場にいた全員の魔鉱石にヒビが入る!!

「ああ......ボブは今日ツイてないです......」

 頭に鳥の糞を落とされた何も知らない通りすがりのボブ!!

「兄ちゃん......良いだろう教えてやる。俺が普段何をしているのかを」

 某セカンドインパクトの司令官のポーズを取ったメツセイが睨むようにマツルを見て話し始める。

 今! 世界で一番興味が湧かないメツセイの一日が明かされる!!

「え、はい。ありがとうございます......」

 この時点でマツルは既に興味を失っていた。


◇◇◇◇

「まずな、朝起きるだろ」

~~~~

『おいメツセイ! 朝だぞ!? とっとと仕事に行ってきな!』

『うるせえなフューネス......今日は休むから寝かせろ......』

『それ許すと絶対明日も同じ事繰り返すだろ!? ほら早く支度して! 朝ごはん食べてとっととギルドに行ってきな!!』

『めんどくさいな......』

~~~~

「と、フューネスにいつも布団をひっぺがされて朝起きるんだ。ただ、基本俺が出なきゃならないような緊急なクエストは無いから、酒飲んで待機してる訳よ! ガッハッハ!!」

 さも当然といった顔で話すメツセイだが、そんな事実は初耳のマツル。

 ここで一気に話への興味が爆発する!!

「え、メツセイ!? あなたえ!? フューネスさんと一緒に住んでるんですか!?」

「言ってなかったか?」

「初耳だわドワーフおい!」

 「なぜそんな面白い話を黙ってたんだ」と言わんばかりに詰めるマツル。
 刺激を狙うハイエナの目は血走っていた。

「――と言うのも、最近住んでた家を追い出されてなァ......家賃の滞納で」

「アンタAランク冒険者なんでしょ? なんで家賃が払えないんですか」

「酒代に全部消えた」

「控えましょうよ、お酒」

「――それでフューネスの家に転がり込んだ......そしたらアイツすげぇうるせぇのよ! 汚れ物は一気に洗濯するから纏めておけとか飯要らない時は前もって言えとか......」

 この時、この話を聞いていた全員が「夫婦やん」と思った。

「でも意外ですね。フューネスさんって結構大雑把なイメージがありましたけど......」

 マツルは「悪く言えばガサツ」の一言をオレンジジュースと一緒に飲み込んだ。

「アイツは大雑把だが、ちゃんとしてる所はちゃんとしてるからな......直接言うと恥ずかしいしすぐ調子に乗るから言えないが、俺を住まわせてくれてる所とか...飯作ってくれてる所とか感謝してるよ......すごく」

 恥ずかしくて酒のせいで顔を真っ赤にしたメツセイはジョッキに残っていた酒を一気に飲み干した。

 この時、この話を聞いていた全員が「熟年ですやんありがとうございます」と思った!!

「メツセイ......そろそろ晩飯時だけど、ご飯どうするか伝えて来たのか?」

「伝えてないが――――」

「帰らせろォォォォ!!!!」

「「「ウォォォォ!!!!」」」

 ここで全員(メツセイを除く)の心が一つになる!! 

「兄ちゃん、お前らやめろ!! 第一まだ会計だって済ませてないんだぞ!?」

 男達に担がれ運び出されるメツセイが手足をジタバタさせながら叫んでいる。

「安心しろメツセイ! 今日は俺が奢ります!! イントリーグさん!! メツセイの分の代金は!?」

「占めて銀貨12枚です。あ、金貨1枚と銀貨2枚でも大丈夫ですよ」

 銀貨12枚。日本円換算で約1万2000円!!!!

 しかしマツルの財布には銀貨1枚と銅貨5枚のみ!! マツル、痛恨の金欠!!!!

「安心しろマツル!! 今日は俺達で割り勘だぁぁぁ!」

 メツセイを担ぎ出そうとしている冒険者の野郎共の天からの助け舟!!

 大事な事なのでもう一度言おう!

 ここで全員(メツセイを除く)の心が一つになった!!

 そしてメツセイは、抵抗虚しくフューネスの武具屋(住居兼用)へと送り届けられたのだった!


◇◇◇◇


「全くなんだったんだアイツら......」

「お、メツセイ! 帰ってきたのかい?」

 一糸纏わぬハダカエプロン姿のフューネスがひょっこりと顔のみをキッチンから出す。

「ただいま......つか、お前服くらい着ろよ......」

「別に良いだろう? 別に減るもんじゃないんだしさ! ふふっ」

「笑い事じゃないだろ......今日の晩飯はなんだ?」

「先にシャワーでも浴びて来ちゃいな! 上がる頃にはできてるよ」

 キッチンからは、メツセイの好きな匂いが既に流れ出ていた。

「この匂いは......ハンバーグだな?」

 「どうだ? 当たっただろう?」と言わんばかりにニヤけるメツセイ。

「バレちゃ仕方がないね......メツセイ好きだろ? アタシのお袋仕込の煮込みハンバーグ!」

 「今日は帰ってくるような気がして朝から作ってたんだ」と大笑いのフューネス。


 言葉にしなくても伝わる言葉が、そこにはあったのだった。
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