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第5章 魔王僭称
第64話 師匠本気出しすぎです③
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「この俺に聞きたい事か......そう言うのは勝ってからにしろや!!」
師匠は一歩で俺との数メートルの距離を縮める。
爆発的な蹴り出し! 一歩で俺の間合いに踏み込んで来た!?
だが拳と刀の間合いなら俺の方が有利!
俺がグレンの存在した空間に木刀を刺しこんだ時、既にそこには何も無かった。
「消えた!?」
いや違う......こういう動きをしてくる時は大抵――
「後ろぉぉぉぉ!!」
後ろから俺を殴ろうとした拳を間一髪受ける事に成功する。
てか成功しても衝撃はそのまま体に響くのでクソ痺れる。痛い。
一瞬の膠着状態。言葉を交わすなら今!
「師匠はなんで身体エネルギーの移動とか俺に教えてくれなかったんですか......? 闘気のくだりとか俺初耳だったんですけど!?」
「だってお前は基礎が初めからできてたからだろうが! だから闘気の応用は自分で効かせられると思って言わなかったんだよ!」
師匠はキョトンとしながらもしっかりと答えてくれた。
「......でもちょっとくらい教えてくれても良かったじゃないですか!!」
「聞かれなかったから教えなかったんだよ!! 俺はドライな関係が好きだって知ってるだろうが!!」
ムカつくこの師匠!! 俺今闘気の基礎ができてる事知ったんですけど!? 親父との子供時代の稽古がそのまま基礎になってるって今知ったの今!!
「あぁもうめんどくさい!! 速攻俺が勝って洗いざらい話して貰いますからね!」
全身のエネルギーを呼吸や意識の流れで移動させるのが基礎なら、“闘気”自体はどこをどう応用すれば使えるんだ......?
「おうおうバカ弟子!! 止まって考え事してる暇なんか与えねぇぞ!?」
師匠の蹴りが鳩尾に迫る。
確か師匠は“闘気”で身体を覆って防御とか言ってたな......
じゃあ俺も全身のエネルギーを鳩尾に集めて防御――――
「ヴッ......!!!!」
蹴りが命中した瞬間、内蔵が爆発したかのような感覚に襲われる。
「マツルなら今のは避けれたでしょ!? 大丈夫なの!?」
脳の奥底にホノラの声が響く。
アホみたいな腹の痛みで考えが上手く纏まらないがこれで判明した事がある。
それは今俺が使える基礎の“エネルギー”と師匠の使う応用の“闘気”は似ている別の物という事。
しかし今までの師匠の発言から見るにエネルギーをどうにかすれば闘気になる事はほぼ確定なので、全身の”エネルギー“を”闘気“に変換する何かが必要なんだと思う。
〈しっかし何かってなんだ? ナマコ神様の知恵を貸してプリーズ〉
『』
無視かよ......
ノヴァーリスのバカラの一件から、何度かナマコ神様には話し掛けているのだが一向に返事が無い。自分で考えるしか無いか......
「マツルー? 俺殺しちゃってねぇよな?」
俺の顔を心配そうに覗き込む師匠が目に入る。どうやら俺は一瞬気絶していたようだ。
「大丈夫っす師匠......今エネルギーを闘気に変換する方法を考えてて......」
「今の蹴りでもうそこまで辿り着いたのか」
師匠が今度は驚いたように俺を見る。
「そこまで見抜かれたなら、これからより本気で戦えるように教えてやろう......全身のエネルギーを闘気に変換する為に必要なのは、『身体の中、もしくは外にある魔のエネルギーを混ぜ込む』事だ」
「よく分かんないんで分かりやすく教えて下さい。あとなんで耳打ちなんですか?」
おっさんの顔が俺のすぐ横にある。おっさんの耳打ちはなんか気持ち悪い。
「だって今ようやく基礎が出来るようになったホノラちゃんには教えられないし。今聞かなくても後々いずれ気が付くだろうし。マツルだけに伝えておきたいからに決まっているだろうが! そうでもなかったらなんで野郎に耳打ちせにゃならんのだ!」
馬鹿みたいに理不尽な理由でビンタされた後、闘気の説明が俺だけに行われた。
「闘気と言うのは、体内の魔力か、自然に存在する魔のエネルギーを自分の体内のエネルギーと混ぜる事で闘気に出来る。歴史云々を話すと長くなるから省くが、自分のコントロール出来るエネルギーを変換する性質上闘気の色とかに個人差が出るからな。まぁ頑張れ。すぐマスターして俺との戦いを再開しろ」
との事だった。要は魔力と混ぜましょうって事だな。
俺無理じゃぁァァァァん!!!! 俺魔力ないですやぁぁぁぁん!!!!
終わった。まさか肉弾戦で詰む事があるとは思わなかった。
じゃあ自然に存在する魔のエネルギーを使おうと思って師匠に話してみたのだが、
「魔力じゃなくて体外の魔のエネルギーを使う!? 闘気変換の効率が圧倒的に悪いから大人しく自分の魔力使っとけ!」
とのことだった。だが俺には魔力が無いのだ!! 何がなんでも取り込まねばなるまい!!
深呼吸だ!! 取り込み方がこれで合ってるかよくわからんが取り敢えず空気ごと吸い込め!!!!
大きな深呼吸を繰り返す。
これで取り込めたと思いたいが......あとは練り上げた全身のエネルギーを自然の魔力と混ぜる......取り敢えず捏ねてみよう。
暫く捏ねくり回す感覚を続けてみると、急激にエネルギーが別の物に変わる感覚が体に広がった。
「成功したなバカ弟子......オーラは“紅”か......」
全身を巡るエネルギーに明確な形が出来た感覚がする。
(やっと私を見つけれくれた......)
なんだ? ナマコ神様とは違う声が体に響いたような気がしたぞ......? 気のせいか?
「なんか......小僧の雰囲気が変わった気がするのである!」
「確かに!! なんかズバババーン!! って感じがする!」
ズバババーンが何かはよく分からないが、ホノラ達も俺が変わった事に気が付ける位に俺は変わったらしい。
「どうだマツル! それが闘気の感覚だ! これで俺も本当に本気を出せる!!!!」
うぉ...まじか......闘気を感じられるようになって初めて分かる圧倒的な師匠の圧力......さながら烈火を纏う自然そのものって感じだな。
「――だが、本気の俺と戦ったら俺が圧勝してしまうなぁ......そうだ。一太刀でも俺に当てられたらマツルの勝ちで良いぞ?」
俺の事舐めやがってからに!
「一発どころか千発当ててやるわ!!」
本気の師匠との、本気の戦いが幕を上げた。
師匠は一歩で俺との数メートルの距離を縮める。
爆発的な蹴り出し! 一歩で俺の間合いに踏み込んで来た!?
だが拳と刀の間合いなら俺の方が有利!
俺がグレンの存在した空間に木刀を刺しこんだ時、既にそこには何も無かった。
「消えた!?」
いや違う......こういう動きをしてくる時は大抵――
「後ろぉぉぉぉ!!」
後ろから俺を殴ろうとした拳を間一髪受ける事に成功する。
てか成功しても衝撃はそのまま体に響くのでクソ痺れる。痛い。
一瞬の膠着状態。言葉を交わすなら今!
「師匠はなんで身体エネルギーの移動とか俺に教えてくれなかったんですか......? 闘気のくだりとか俺初耳だったんですけど!?」
「だってお前は基礎が初めからできてたからだろうが! だから闘気の応用は自分で効かせられると思って言わなかったんだよ!」
師匠はキョトンとしながらもしっかりと答えてくれた。
「......でもちょっとくらい教えてくれても良かったじゃないですか!!」
「聞かれなかったから教えなかったんだよ!! 俺はドライな関係が好きだって知ってるだろうが!!」
ムカつくこの師匠!! 俺今闘気の基礎ができてる事知ったんですけど!? 親父との子供時代の稽古がそのまま基礎になってるって今知ったの今!!
「あぁもうめんどくさい!! 速攻俺が勝って洗いざらい話して貰いますからね!」
全身のエネルギーを呼吸や意識の流れで移動させるのが基礎なら、“闘気”自体はどこをどう応用すれば使えるんだ......?
「おうおうバカ弟子!! 止まって考え事してる暇なんか与えねぇぞ!?」
師匠の蹴りが鳩尾に迫る。
確か師匠は“闘気”で身体を覆って防御とか言ってたな......
じゃあ俺も全身のエネルギーを鳩尾に集めて防御――――
「ヴッ......!!!!」
蹴りが命中した瞬間、内蔵が爆発したかのような感覚に襲われる。
「マツルなら今のは避けれたでしょ!? 大丈夫なの!?」
脳の奥底にホノラの声が響く。
アホみたいな腹の痛みで考えが上手く纏まらないがこれで判明した事がある。
それは今俺が使える基礎の“エネルギー”と師匠の使う応用の“闘気”は似ている別の物という事。
しかし今までの師匠の発言から見るにエネルギーをどうにかすれば闘気になる事はほぼ確定なので、全身の”エネルギー“を”闘気“に変換する何かが必要なんだと思う。
〈しっかし何かってなんだ? ナマコ神様の知恵を貸してプリーズ〉
『』
無視かよ......
ノヴァーリスのバカラの一件から、何度かナマコ神様には話し掛けているのだが一向に返事が無い。自分で考えるしか無いか......
「マツルー? 俺殺しちゃってねぇよな?」
俺の顔を心配そうに覗き込む師匠が目に入る。どうやら俺は一瞬気絶していたようだ。
「大丈夫っす師匠......今エネルギーを闘気に変換する方法を考えてて......」
「今の蹴りでもうそこまで辿り着いたのか」
師匠が今度は驚いたように俺を見る。
「そこまで見抜かれたなら、これからより本気で戦えるように教えてやろう......全身のエネルギーを闘気に変換する為に必要なのは、『身体の中、もしくは外にある魔のエネルギーを混ぜ込む』事だ」
「よく分かんないんで分かりやすく教えて下さい。あとなんで耳打ちなんですか?」
おっさんの顔が俺のすぐ横にある。おっさんの耳打ちはなんか気持ち悪い。
「だって今ようやく基礎が出来るようになったホノラちゃんには教えられないし。今聞かなくても後々いずれ気が付くだろうし。マツルだけに伝えておきたいからに決まっているだろうが! そうでもなかったらなんで野郎に耳打ちせにゃならんのだ!」
馬鹿みたいに理不尽な理由でビンタされた後、闘気の説明が俺だけに行われた。
「闘気と言うのは、体内の魔力か、自然に存在する魔のエネルギーを自分の体内のエネルギーと混ぜる事で闘気に出来る。歴史云々を話すと長くなるから省くが、自分のコントロール出来るエネルギーを変換する性質上闘気の色とかに個人差が出るからな。まぁ頑張れ。すぐマスターして俺との戦いを再開しろ」
との事だった。要は魔力と混ぜましょうって事だな。
俺無理じゃぁァァァァん!!!! 俺魔力ないですやぁぁぁぁん!!!!
終わった。まさか肉弾戦で詰む事があるとは思わなかった。
じゃあ自然に存在する魔のエネルギーを使おうと思って師匠に話してみたのだが、
「魔力じゃなくて体外の魔のエネルギーを使う!? 闘気変換の効率が圧倒的に悪いから大人しく自分の魔力使っとけ!」
とのことだった。だが俺には魔力が無いのだ!! 何がなんでも取り込まねばなるまい!!
深呼吸だ!! 取り込み方がこれで合ってるかよくわからんが取り敢えず空気ごと吸い込め!!!!
大きな深呼吸を繰り返す。
これで取り込めたと思いたいが......あとは練り上げた全身のエネルギーを自然の魔力と混ぜる......取り敢えず捏ねてみよう。
暫く捏ねくり回す感覚を続けてみると、急激にエネルギーが別の物に変わる感覚が体に広がった。
「成功したなバカ弟子......オーラは“紅”か......」
全身を巡るエネルギーに明確な形が出来た感覚がする。
(やっと私を見つけれくれた......)
なんだ? ナマコ神様とは違う声が体に響いたような気がしたぞ......? 気のせいか?
「なんか......小僧の雰囲気が変わった気がするのである!」
「確かに!! なんかズバババーン!! って感じがする!」
ズバババーンが何かはよく分からないが、ホノラ達も俺が変わった事に気が付ける位に俺は変わったらしい。
「どうだマツル! それが闘気の感覚だ! これで俺も本当に本気を出せる!!!!」
うぉ...まじか......闘気を感じられるようになって初めて分かる圧倒的な師匠の圧力......さながら烈火を纏う自然そのものって感じだな。
「――だが、本気の俺と戦ったら俺が圧勝してしまうなぁ......そうだ。一太刀でも俺に当てられたらマツルの勝ちで良いぞ?」
俺の事舐めやがってからに!
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本気の師匠との、本気の戦いが幕を上げた。
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