異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

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第6章 灰の反逆

第85話 4F〜ロージーの計画〜sideロージー①

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「――何故だ......反則だ......オレの魔法が......」

 魔王城4階、そこには身体中に孔が空き、血を噴き出しながら膝をつく五杯将アルカナの一人であるクープと、笑いを堪えつつクープを一瞥するロージーがいた。

 話は、ロージーの突入時まで遡る......

◇◇◇◇

「さてさて、僕の相手はどんな魔人さんかな~! 失礼しま~す!!」

 ロージーが鼻歌混じりにウキウキで扉を開けると、その瞬間に部屋の中から攻撃が仕掛けられる。

 その攻撃は空気を引っ掻くような動作で、咄嗟に避けたロージーの顔があった場所を掠めた。

「――ちょっとちょっと君!! 危ないじゃ無いの!! 名乗りも無しに不意打ちとか卑怯だと思わないの!?」

「ふん......侵略者、しかも下等な人間ごときに語る名など無い......」

 手で引っ掻かれた空間は異様な音を立てて削れ、周囲の物を引き寄せていた。

「それが君の魔法......それで君の名前は”クープ“って言うんだね! 行き倒れていた所をニシュラブに助けられ、それを恩義に感じ配下になる。それでクープ君の使う魔法は切削せっさく魔法......あらゆる物――それこそ空間すらも削ってしまう......いい魔法じゃないか!! 僕も強い人と戦えるのは嬉しいからね! 君には期待しているよ!」

 戦闘に必要な情報を全て知られてしまったクープはロージーと一旦距離を置く。
 語っていないのに名前と過去を、手の内を知られた事が恐ろしくなったのだ。

「く......うぁぁぁぁ!!【切削魔法 シェーブスクラッチ】!」

 錯乱してロージーに突っ込んだクープはロージーの胸から腹にかけてを引っ掻き抉った。

 バクンッ! という音と共にロージーの上半身が一部消滅する。

「ゴ......オブッ......」

 ロージーは肺が削られた結果、空気を声に変換する事が出来なくなり、血を吐きながら呻き声をあげその場に倒れてしまった。

 既に致死量の血を身体の前面から噴出させて倒れるロージーを前にクープは勝利を確信する。

「ククク......やはりオレの名前や魔法を知ったのはそれだけの魔法だったという事か......やはり下等な人間よ。せめて安らかに死ぬ――――ゴ......」

 クープは体の違和感を感じる。声が出ないのだ。それに急激に体温が下がる......恐る恐る自分の体を見てみると、そこにはあるはずの物が無かったのだ。

(おかしい!!!! なぜこの男と同じ部分が削れているのだ!! すぐに再生しなければ......クソ! なぜ回復しない!?)

 クープは頭の混乱を必死に抑えようと回復に神経の全てを注ぐ。
 だがいつもなら四肢の欠損程ならすぐに再生出来てしまうクープでも身体に空いた切削痕を治せなかったのだ。

「なぜ回復しないのか! それはね! まあ僕が邪魔してるからなんだよね」

 聞こえる筈のない男の声が脳に響く。

「僕の【共有】ってユニークスキルがとっても優秀でね、君の身体が削れた状態で固定された世界を”共有“してるから君は僕のスキルの効果範囲内にいる限り絶対にその傷が治る事はないよ!」

 出鱈目だ......クープは心の底から戦慄を覚えた。
 クープは仮にも上位の魔人。今までその圧倒的な魔法で相手を削り伏せて来た。だが今は自分の魔法で自分に傷を付け自分だけが地に伏している。この事実がクープには堪らなく我慢出来なかった。
 火山のような爆発した怒りがその身を突き動かす。

「ゴフッ......! ォォォォォォォオ゛ッ!!!!」

【切削魔法 切り削る魔弾シェーブ・スノウ

 クープは極限下での新たな魔法の体得した。
 触れた物全てを削り無に帰す数百発の魔力弾がロージーを襲う。

「すごいね! ここに来て新しい魔法を覚えるなんて! すごく良い――ガッ!!」

 ロージーは避けること無く全てをその身で受けた。
 右肩に当たれば腕をぼとりと落とし、腹に当たれば背を向ける壁が覗けるようになり、顔は三分の一を残して随分と小さくなってしまった。

 しかしその全てはクープに帰ってくる。

「........ッ!!!! ――――!!」

「どうしたの~? 痛みで声も出ない? ああ、そうか喋れないんだったね! 喉だけ回復......意外と難しいなこれ.....」

 全身穴だらけになったクープの前に立つのは先程の傷が全て消え去り、部位の欠損もないロージーであった。

◇◇◇◇

「――何故だ......反則だ......オレの魔法が......」

 肺から上のみ回復されたクープは、絞るように声を出す。

「なんでだろうね! 反則だね! じゃあ十分楽しんだし、そろそろ終わりを始めようか!」
 
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