異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

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閑話

第114話 益荒男鰤③

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 しかし......ここまでデカいと有効打点も限られてくるよな......

 相手はほぼナ〇パの手足が付いているとは言っても魚。

 魚を捌く時は刃物必須。

 つまり俺の攻撃は効く!!!?

「よっしゃ勝利の法則が決まったァァァッ!!!! 刺身にして食ってやるよ!! オォラアッ!」

 五階建てのビル程の厚みを持つエラ目掛けて刃を振り下ろす。

 だが斬れたのは何十層にも重ねられた分厚い鱗の薄皮だけだった。

「かったすぎだろ!!!! 鱗だけでコレは反則だって!」

「じゃあ私の攻撃はどれくらい通るかしらね!【闘気変換】!!」

 あれがロックとの闘いで進化したホノラの本気......全身に迸る闘気......もう俺よか使いこなしてね?

 いや違うし! 俺は体内の魔力で変換出来ないから非効率なだけだし! もし俺に魔力があればもっと強くなれてるし!!

「オラオラオラオラァッ!!!!」

 ホノラの超接近戦闘インファイトが叩き込まれるがマスラオブリはなんの反応も示さずにただそこにいるだけだ。

 何が通るのか、動かない今のうちに試しておくか(どうせナマコ神様が現在地を割り出さなければ帰れない訳だし)

「うひょぉ......目だけでも俺の倍くらいあるよ......」

 全生物の弱点! 目を潰す!!

「せーのっ!!」

 バギィン!!!!

 刃は当然のように弾き返され、衝撃だけが全身に響いた。

「え、目ってこんな硬いもんなの? こいつ本当は化け物だろ」

 セカンドプラン! 脳を損傷させる!

 ガン!! ゴン!!

「......」

 いや、分かってたよ? 剥き出しの目ですら刃が通らなかったんだから滅茶苦茶守られてる頭なんかもっと攻撃が届く訳ないって。でも物は試しじゃん?

「――――ァァァァアァッッ......硬すぎて殴ってる感じがしない!! 楽しくない!!」

 無反応の硬いものを殴り続けるのは少しばかり苦痛だったみたいだな……わからんでもないッ!

「とにかく硬いのは鱗だホノラ!! 鱗さえどうにか出来れば攻撃が通るかもしれない!」

「分かったわ!! 要は鱗を剥げば良い訳ね......【超!! 凄い手刀!!】」

 ホノラが手を鱗の隙間に入れた......

「え、まじ?」

「大マジ!! フンヌァァァァァァッ!!」

 鱗はみるみるめくれ上がり、遂にはひっぺがされていた。

 パワープレイ過ぎる......いやでもアレしか方法なかった! ホノラ凄い!!

「ギュルヴォァァァァッ!!」

「急に動き始めた!! ホノラ! 一旦舟に戻る――――」

 舟に戻る為に頭から飛び退いたら、突如目の前が真っ暗になった。

 ソレが攻撃によるものだと認識出来た頃には、俺の身体には激痛が走っていた。

 超速で叩き付けられた海上は波の凹凸のある岩盤のようで、跳ね飛ばされる感覚はヤスリの上を引き摺られているようだった。

 何が起こった? 攻撃? 殴られた? 反応出来ない速度で?

――――不味い......水中で呼吸が出来ない......上がる手段もない......

「――マツル大丈夫!?」

「ああ......助かったよホノラ......引き上げてくれてありがとう......」

「今の攻撃何? 全っ然腕の動き見えなかったんだけど」

 ホノラにも捉えられてなかったか......予備動作無しであれだけのスピードとパワーを出せるのは流石化け物って所か。

「コォーン......」

 何だ? マスラオブリの口に魔力が集まって......

 俺の全神経が警笛を鳴らす。

「アレはヤバい」と

「ホノラ!! 全力で伏せろ!!!!」

「カッ」

 ホノラが伏せるとほぼ同時、俺たちの頭上を掠めるようにして極大の魔力弾が通過した。

 俺達より後方に着弾すると、海の上なのに巨大なキノコが生えてきた。

「あんなの直撃したら......死ぬわよね?」

「じゃなくて確定で死ぬわな」

「コォーン......」

 ヤバい。次だ......どうやって避ける!? 

 避けれる......のか!?

「絶対無理!! 俺が受け流す!! ホノラはモフロー持って俺の後ろへ!!」

「えぇ!? できるの!?」

「やらなきゃ死ぬ!! 闘気変か――ア゛ッ......」

「大丈夫!?」

「大丈夫!!!!」

 肺に肋骨が刺さってる......上手く呼吸が出来ない......つまり? 素で受け流すしかない!!

「カッ」

 来た!! なるべく全身の力を抜け......呼吸は最小限に......集中!

【我流“防御剣術”流静ながし颯免そうめん

 魔力の流れを逸らすだけ......添えるように......弾く!!

「いけた!!」

「待って!! 次が来る!!」

 はぁ!? 

「カッカッカッカッカッ」

 連続......そんな事もできるのかよ......

「ヴァァァァァァァッ――――ハァァァァァァッ!!!!!!!!!!」

 絶対に気を抜くな!! 一発でもミスれば死ぬ!! タイミングが難しい訳じゃない!! 絶対に一発も見逃すな!! 

 ナマコ神様まだ解析出来ないのか!?

『ちょっと待って!! なんだかここ魔力の流れが乱されてて上手く解析出来ない! 今それによって生じる誤差も確認しながら計測してるから待って!!』

「クッソォォォォォォ!!!!」

「がフッ......すまん小僧...ホノラ......我はもう......」

「モフロー......死んじゃ嫌だよ!! ねぇ! 返事してよ!!」

 モフローももう持たない......今ならまだ間に合うかもしれない......耐えろ......耐えろ......耐えろ! 耐えろ!! タエロ!!!!

「......あれ?」

 気が付いたら、右眼がブレーカーが落ちたように暗転し、何も見えなくなってしまった。

 同時に、凄まじい恐怖感が全身を喰い破り、意識を呑み込んだ。

 魔力弾が空気を破裂させながらこっちへ向かってくる音が聴こえる。

 ホノラは泣きながら何かを言っているようだがよく聴き取れない。

「また勝てなかった......」

――――

「――マツルさんとホノラさん! 並びにモフローちゃんの転送完了しました!」

「よくやった! ウィール! リイン! やるよ!」

「了解しました」

三位一体魔法トリニティ・マジック 回生の息吹ブレス・オブ・メビウス

「......う......ここは......?」

「良かった......魔力の乱れで転移が遅れてしまいましたが、なんとか生きてますね......」

「ウィールさん......」

 って事は......戻って来れたのか......ホノラとモフローも三人の回復魔法で無事。良かった......

「マヅルゥ......ごべんねぇぇぇぇ! 私が行きたいって言ったばっがりにごんなごどになっでぇぇぇぇ!」

「苦しいってホノラ! 気にしないで......ってぇぇ! 鼻水付いてる!! 拭いて拭いて!」

「あー、ラブラブしてる所悪いんだけど......どうだった?」

 ロージーが俺達の目線まで腰を落として聞いてくる。

「正直、人の形してた時の魔王ニシュラブよりは比べ物にならない位強いかな......はっきり言って無理ゲーかな。持ってこれた情報になりそうな物も鱗一枚だけ。こっちから攻撃しない限り攻撃してこないから放置が吉だと思いますけどね」

「成程......ウィール、この鱗は解析班の所へ。マツル君、ありがとう。良くやってくれたね――――」

「うーん......あれだけの回復魔法でも左眼は治らないのか~。右眼だけでも治って良かったけど」

「確か闇魔法で見えなくなったんだっけ? 普通の回復魔法じゃ治らないのかもね」

「ねぇなんで今僕カッコよくキメてたのに話聞いてないの? ねぇなんで?」

「ご安心くださいギルドマスター! 特段聞かれるような話では無かっただけですよ」

「うん、リインそれ慰めになってないね。傷口に塩揉み混んでるね。回復魔法でも治らないよこれ」

「ッッ!? まさかギルドマスターもいつの間にか闇魔法の攻撃を!?」

「......もういいや......はい! 元気になったらみんなかいさーん! 解散かいさーん!!」

 ロージーの慟哭にも聞こえる合図でこの日はお開きになったのだった。

 今日、俺は確信した。俺はまだまだ強くなれると。

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