異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

ちょっと黒い筆箱

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第7章 大罪天使の降誕

第117話 目を治そう!

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「ねーねーマツルー! 片目だけ見えないってどんな感じなの? 不便?」

 いつから話し掛けられていたのだろうか。漫画にヤキモチを妬いたように取り上げホノラが顔を覗き込む。

「どんな感じって......見え方はそんなに違わねぇよ。強いて言うなら、左側からの攻撃に一瞬反応が遅れる事位か?」

「なんか思ってたのと違うわね。ほら、『紅蓮の侍エラ』に出てくる盲目の剣士クラノみたいに“見えているのだよ......貴様の攻撃は”みたいな事常に考えてるのかと思ってた」

「現実でそれ考えてる奴相当痛いだろ――ってホノラ! 俺まだ読んでる途中なんだよ5巻! 妖魔大将マサカドとの決着が着きそうなんだって! 返せよ!」

「マツルは目、治さないの?」

「話逸らすなよ......まぁ、治ったら良いなとは思ってるけど、リインの回復魔法でもダメだったし完全回復薬パーフェクトポーションでも治らなかったからなぁ......」

 何度か治せそうなタイミングはあったのだが、その度に俺の左眼は戻って来なかった。
 ナマコ神様曰く、『闇をその身に宿した代償なのだから、それと同等の力が必要』との事だった。

「闇の欠片と同じくらいの力を持つ目を治せる物ってなんだよ!?」

「パッと思い浮かぶのはめちゃ凄い回復魔法使いとか魔道具、古代遺物アーティファクトよね......」

「「うーーーーん......」」

◇◇◇◇

「――という訳で皆さん! 俺達に知恵を貸してくれ!!」

 俺とホノラは知り合いに声を掛け、相談に乗って貰う事にした。

 集まってくれたのはメツセイ、コリン、ロージー、フューネスの四人だ!

「大体話は分かった。アタシの方からはドワーフの国...ハントヴァックの知り合いにその手の魔道具が無いか聞いてみよう」

「フューネスさん! 心強いです!」

「私は多少古代遺物アーティファクトについての知見がありますのでそちら方面を当たってみますね」

「コリン! 助かる!」

「じゃあ俺ァ治せる回復術士がいねぇか調べてみよう! 兄ちゃん達には世話かけっぱなしだからな! ようやく恩返しが出来るってモンよ! ガッハッハッ!!」

「メツセイさん人脈凄いんですね! ありがとうございます!」

「じゃー僕はみんなの応援、かな?」

「使えない中間管理職が」

「アンタも何か手伝いな」

「死ね」

「ねぇみんな僕にだけ当たり強くない? 酷くない? あとどさくさに紛れて死ねって言った人誰? ねぇ――――」

 みんな大体1週間もあれば大方調べはつくとの事だったので、1週間後に結果報告が行われることになった。

 その間、俺の方もナマコ神様の知恵を混じらせながら調べては見たが、めぼしい情報は無かった。

――――

 1週間後!!!!

「すまないマツル! それらしい魔道具は無かった!」

「フューネスさんに同じく、闇の欠片と同等の力を持っていてかつ人体の特定の部位の復元が出来る古代遺物アーティファクトとなると......」

 あるにはあったが、と繋がりそうな話し方でコリンは口を噤んだ。

「俺もスカだ......そもそもリインやウィールさんですら世界最高峰の回復術士である事を失念していたぞ」

「俺、自分でも調べて見たんですけどそれらしい情報はありませんでした......」

「ねぇみんな忘れてない? すごく強くて、マツル君の目を治せそうな彼女の事を!」

 ロージーの問は俺以外の四人へと向けられていた。

「彼女......いえ、あの御人は......」

「ギルマス......それはいくらなんでも無茶が過ぎると思うぞ!」

「確かにあの御方なら治せはするだろうけどその後マツルがどうなるか分かったもんじゃない!」

「私はマツルなら大丈夫だと思ってるけどね!」

 なんだなんだ!? 誰の話をしてるんだ!?

 だが、三人の口振りをみるにおそらくみんな一度は辿り着いた結論なのだろう。だがリスクに対しリターンが追い付かない程の危険人物という具合だろうか?

「ロージーは俺の目を治せるのは誰だと思ってるんだ?」

「ふっふっふ! よくぞ聞いてくれましたマツル君!! それはね......」

「それは......?」

「“大罪天使モータイル・エンジェル”の二つ名を持つ激情の女帝! 魔王アポキュアスその人さ!」


◇◇◇◇

 大陸の北、魔王アポキュアスの住処にて――

「あの......アポキュアス様......そんなに食べるとお身体に触ります!! どうか食事を控えて下さい――――キャッ!!」

 ベッドに寝そべりながら物を食べる少女。
 彼女が投げた皿は苦言を呈した侍女の顔に当たりそのまま砕け散った。

「下僕如きが何私に口答えしてんだぁ~? 好きな時に食べ好きな時に怠け好きな時にセックスして好きな時に蔑む! それが私のみに許された特権! 違う?」

「い......いえ! 仰る通りでございます!」

「解ればいいのよ。じゃ~私寝るから、あとやっといて」

「かしこまりました」

「あ~なんか面白い事起きねぇかな~。この私を楽しませてくれるような何かが欲しい!」

 彼女の名は魔王アポキュアス。全ての罪をその身に背負いし天使である。
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