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第42話 交錯する想い
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アレクは大広間の入口に立ち、落ち着きなく辺りに視線を彷徨わせていた。
彼の胸中にあるのは、昨晩の出来事。
ミカの唇の感触を思い出し、思わず手で顔を覆いそうになり、何とかそれを堪えて平静を保つ。
そんな悶々とした気持ちが彼の中に渦巻いていた。
乞われてとはいえ、少女相手に、あんなキスをしてしまうなんて──
あんなに濃厚に舌を絡め合うなんて、自分が劣情を抱いていますと白状したようなものじゃないか。
もしも、あれが原因で彼女が自分に対して嫌悪感を抱いたらどうしよう。
今日これから此処に来るであろう彼女に、どんな顔をして会えば良いのだろう。
今すぐ会いたいような、会いたくないような、複雑な心境であった。
アレクも普通の男だね。こんなことで仕事が手に付かなくなるくらいに悩むなんて。
私からしたら微笑ましいことだとは思うけれど、彼は真面目だから、深刻に考えてしまうんだろうね。
おや、ミカが来たようだよ。
彼女はアレクに注目したまま廊下を歩いてきて、彼の目の前で立ち止まった。
アレクは彼女が普段通りに此処に来たことに安堵を覚えつつ、いつものように微笑みを向けて声を掛けた。
「おはようございます。本日の体調は如何ですか?」
「……大丈夫」
ミカはアレクにいつもの微笑を向けられて、嬉しそうにはにかんだ。
「凄く、気持ち良く眠れたの。きっと、アレクのお陰だと思う」
頬がほんのりと赤く染まる。
彼女は恥ずかしそうにアレクから視線を外して、言った。
「昨日は、ありがとう」
「!……」
アレクは驚いたような表情をして、自らの胸に手を当てた。
彼の心臓は動いてはいないけれど、彼からしたら、心臓が跳ねたような気持ちになったんだろうね。
でも、彼も大人だ。すぐに平静を保って、ウェイターとしてミカを食事の席に案内した。
「どうぞ、お食事のお席に」
大広間は、昨日旅館に訪れた学生たちで賑わっていた。まるで団体旅行の風景を見ているようだ。
アレクはミカを彼らからは離れた窓際の席に案内した。
静謐な雰囲気の庭の風景が一望できるその席は、賑わいの中にありながらも落ち着いている。
「ねえ、アレク」
席に着きながら、ミカは定位置に戻ろうとしたアレクを呼び止めた。
怪訝そうな顔をするアレクを、彼女は上目遣いで見つめながら、
「また……昨日みたいに、してくれる?」
「…………」
アレクは硬直した。
ミカはアレクを見つめたまま、彼からの返事を静かに待っている。
しばしの間、そのまま二人の間の時は流れ。
ようやく硬直から脱したアレクは、ミカに顔を寄せて、耳元で囁くように言った。
「言ったはずですよ。僕も男ですから、欲が全くないわけではないと」
困ったように一度視線をそらし、すっと息を吸って、続けた。
「ひょっとしたら、次は歯止めが利かなくなるかもしれません。それでも良いんですか?」
「……私、言ったよ」
ミカは小さいながらも強い意志の篭もった声で、答えた。
「私、アレクになら何をされてもいい」
「…………」
ふ、とアレクは微苦笑した。
「……また、お休みの日に一緒にお出かけしましょう。その時に、ゆっくりお話しましょうか」
「……うん」
後ろ足でミカの傍から離れたアレクは、一礼をして大広間の入口へと戻っていった。
ミカはアレクと二人だけの会話を交わせたことに満足感を感じながら、静かに席を立った。
どうやら……彼女の中にある幸福感はしばらくの間続きそうだね。
彼の胸中にあるのは、昨晩の出来事。
ミカの唇の感触を思い出し、思わず手で顔を覆いそうになり、何とかそれを堪えて平静を保つ。
そんな悶々とした気持ちが彼の中に渦巻いていた。
乞われてとはいえ、少女相手に、あんなキスをしてしまうなんて──
あんなに濃厚に舌を絡め合うなんて、自分が劣情を抱いていますと白状したようなものじゃないか。
もしも、あれが原因で彼女が自分に対して嫌悪感を抱いたらどうしよう。
今日これから此処に来るであろう彼女に、どんな顔をして会えば良いのだろう。
今すぐ会いたいような、会いたくないような、複雑な心境であった。
アレクも普通の男だね。こんなことで仕事が手に付かなくなるくらいに悩むなんて。
私からしたら微笑ましいことだとは思うけれど、彼は真面目だから、深刻に考えてしまうんだろうね。
おや、ミカが来たようだよ。
彼女はアレクに注目したまま廊下を歩いてきて、彼の目の前で立ち止まった。
アレクは彼女が普段通りに此処に来たことに安堵を覚えつつ、いつものように微笑みを向けて声を掛けた。
「おはようございます。本日の体調は如何ですか?」
「……大丈夫」
ミカはアレクにいつもの微笑を向けられて、嬉しそうにはにかんだ。
「凄く、気持ち良く眠れたの。きっと、アレクのお陰だと思う」
頬がほんのりと赤く染まる。
彼女は恥ずかしそうにアレクから視線を外して、言った。
「昨日は、ありがとう」
「!……」
アレクは驚いたような表情をして、自らの胸に手を当てた。
彼の心臓は動いてはいないけれど、彼からしたら、心臓が跳ねたような気持ちになったんだろうね。
でも、彼も大人だ。すぐに平静を保って、ウェイターとしてミカを食事の席に案内した。
「どうぞ、お食事のお席に」
大広間は、昨日旅館に訪れた学生たちで賑わっていた。まるで団体旅行の風景を見ているようだ。
アレクはミカを彼らからは離れた窓際の席に案内した。
静謐な雰囲気の庭の風景が一望できるその席は、賑わいの中にありながらも落ち着いている。
「ねえ、アレク」
席に着きながら、ミカは定位置に戻ろうとしたアレクを呼び止めた。
怪訝そうな顔をするアレクを、彼女は上目遣いで見つめながら、
「また……昨日みたいに、してくれる?」
「…………」
アレクは硬直した。
ミカはアレクを見つめたまま、彼からの返事を静かに待っている。
しばしの間、そのまま二人の間の時は流れ。
ようやく硬直から脱したアレクは、ミカに顔を寄せて、耳元で囁くように言った。
「言ったはずですよ。僕も男ですから、欲が全くないわけではないと」
困ったように一度視線をそらし、すっと息を吸って、続けた。
「ひょっとしたら、次は歯止めが利かなくなるかもしれません。それでも良いんですか?」
「……私、言ったよ」
ミカは小さいながらも強い意志の篭もった声で、答えた。
「私、アレクになら何をされてもいい」
「…………」
ふ、とアレクは微苦笑した。
「……また、お休みの日に一緒にお出かけしましょう。その時に、ゆっくりお話しましょうか」
「……うん」
後ろ足でミカの傍から離れたアレクは、一礼をして大広間の入口へと戻っていった。
ミカはアレクと二人だけの会話を交わせたことに満足感を感じながら、静かに席を立った。
どうやら……彼女の中にある幸福感はしばらくの間続きそうだね。
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