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第63話 恋仲として
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「よう、アレク」
静まり返った真夜中のフロントを歩くアレクを、カウンターからローゼンが呼び止めた。
「ルーブルの爺さんから聞いたよ。昼間は大変だったんだってな」
「……まあね」
アレクは襟首を緩めながら、ローゼンに近付いた。
その表情は、いつものように穏やかで、満ち足りたような気を纏っている。
ローゼンはその微細な雰囲気を察したようで、彼に尋ねた。
「……お前、何か元気いいな。死人のくせに」
「そうか?」
アレクは後頭部を掻いて、笑った。
「まあ、悪いことばかりじゃなかった……とだけ言っておくよ」
「ふむ……」
顎を撫でるローゼン。
彼の犬よりも優れた嗅覚が、アレクが纏っている匂いを嗅ぎ取って、彼はあっと声を上げた。
「ひょっとして、お前、遂にミカちゃんと……」
彼の言葉は半ばで途切れた。
アレクが人差し指で彼の唇を強制的に閉ざしたのだ。
アレクは困ったように微笑んで、声を潜め、言った。
「そのことは、人には言わないでもらえるか」
「……安心しろよ。言わないって、誰にも」
ローゼンは苦笑した。
「でも、お前って結構隠し事が下手だからな。俺を口止めする前に、そのバレやすい挙動を何とかする方が先なんじゃないか?」
「善処するよ」
ローゼンの口から指を離し、アレクはふっと微笑を消して、呟いた。
「僕は……失格だな。ホテルマンとして」
「何だよそれ」
ローゼンは呆れたように溜め息をついた。
腕を組み、アレクを見つめて、続ける。
「お前だって男なんだから、欲のひとつくらいあったって不思議でも何でもないっての。そりゃ無理矢理組み敷いたんなら問題だけどさ、ミカちゃんはお前のことをちゃんと受け入れてくれたんだろ? だったら恥じることなんかないさ。堂々としてりゃいい」
「……でも、全てのお客様に対して平等に接するというホテルマンとしての理念が……」
「お前、まだミカちゃんのことを客扱いしてるのかよ。いい加減考えを改めろって」
ローゼンは指先でアレクの額をぴこんと弾いた。
「お前とミカちゃんは好き同士。誰が見ても立派な恋仲だよ。それを客扱いしてる方がよっぽどミカちゃんに対して失礼だ」
額を撫でるアレクを見てふっと笑い、彼を追いやるように手を振った。
「そろそろ、答えをちゃんと体で示してやるべきなんだよ。お前は。ミカちゃんも、きっとお前がそうしてくれるのを待ってるはずなんだからな」
さあ行った、とローゼンにフロントから追い出され、アレクは自分の部屋へと続く廊下を歩きながら考えた。
今の今まで一介のホテルマンとして彼女に接してきた自分は、実は彼女をがっかりさせ続けてきたのだろうか……と。
急に全部変えるのは無理でも、少しずつ、彼女を大切に思う男として行動してみよう。
そのために自分はどうあるべきなんだろう。
来たる明日を今日よりも良いものにするために、彼は思考を巡らせるのだった。
静まり返った真夜中のフロントを歩くアレクを、カウンターからローゼンが呼び止めた。
「ルーブルの爺さんから聞いたよ。昼間は大変だったんだってな」
「……まあね」
アレクは襟首を緩めながら、ローゼンに近付いた。
その表情は、いつものように穏やかで、満ち足りたような気を纏っている。
ローゼンはその微細な雰囲気を察したようで、彼に尋ねた。
「……お前、何か元気いいな。死人のくせに」
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アレクは後頭部を掻いて、笑った。
「まあ、悪いことばかりじゃなかった……とだけ言っておくよ」
「ふむ……」
顎を撫でるローゼン。
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「ひょっとして、お前、遂にミカちゃんと……」
彼の言葉は半ばで途切れた。
アレクが人差し指で彼の唇を強制的に閉ざしたのだ。
アレクは困ったように微笑んで、声を潜め、言った。
「そのことは、人には言わないでもらえるか」
「……安心しろよ。言わないって、誰にも」
ローゼンは苦笑した。
「でも、お前って結構隠し事が下手だからな。俺を口止めする前に、そのバレやすい挙動を何とかする方が先なんじゃないか?」
「善処するよ」
ローゼンの口から指を離し、アレクはふっと微笑を消して、呟いた。
「僕は……失格だな。ホテルマンとして」
「何だよそれ」
ローゼンは呆れたように溜め息をついた。
腕を組み、アレクを見つめて、続ける。
「お前だって男なんだから、欲のひとつくらいあったって不思議でも何でもないっての。そりゃ無理矢理組み敷いたんなら問題だけどさ、ミカちゃんはお前のことをちゃんと受け入れてくれたんだろ? だったら恥じることなんかないさ。堂々としてりゃいい」
「……でも、全てのお客様に対して平等に接するというホテルマンとしての理念が……」
「お前、まだミカちゃんのことを客扱いしてるのかよ。いい加減考えを改めろって」
ローゼンは指先でアレクの額をぴこんと弾いた。
「お前とミカちゃんは好き同士。誰が見ても立派な恋仲だよ。それを客扱いしてる方がよっぽどミカちゃんに対して失礼だ」
額を撫でるアレクを見てふっと笑い、彼を追いやるように手を振った。
「そろそろ、答えをちゃんと体で示してやるべきなんだよ。お前は。ミカちゃんも、きっとお前がそうしてくれるのを待ってるはずなんだからな」
さあ行った、とローゼンにフロントから追い出され、アレクは自分の部屋へと続く廊下を歩きながら考えた。
今の今まで一介のホテルマンとして彼女に接してきた自分は、実は彼女をがっかりさせ続けてきたのだろうか……と。
急に全部変えるのは無理でも、少しずつ、彼女を大切に思う男として行動してみよう。
そのために自分はどうあるべきなんだろう。
来たる明日を今日よりも良いものにするために、彼は思考を巡らせるのだった。
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