隷属の勇者 -俺、魔王城の料理人になりました-

高柳神羅

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第66話 勇者、復活する

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 薬がよく効いたのか、病気自体が大したものではなかったのか、それともフランシスカのおまじないが効果あったのか。夕方になる頃にはその辺を歩き回っても差し支えないほどに俺の身体は回復を遂げていた。
 眩暈もしないし、寒気を感じもしない。
 この分なら、明日には職場に復帰できそうだ。
 元気になったと分かると、何だか身体を動かしたくなるのは一種の性なのか。
 俺は部屋着姿のまま、厨房へと足を運んだ。
 厨房では、夕飯作りのために料理人たちが忙しく動き回っていた。
 シーグレットは相変わらず大声で料理人たちにあれこれ指示を出している。
 俺は皆の邪魔にならないように厨房に入り、シーグレットの元に向かった。
「シーグレット」
「何だ、部屋でくたばってるのはもう終いか?」
 シーグレットは俺の全身を舐めるように見て、言った。
「人間の病気ってぇのはそんなすぐに治るもんなのか。案外大したことねぇんだな」
「普通はそんな簡単には治らないよ。薬がよく効いたからなんじゃないか」
 俺は肩を竦めた。
 実際、この回復の早さは普通じゃないと思う。
 まあ、治りが早いのはいいことだけどな。
「そういうわけで、明日からは働けそうだから。それだけ言いに来た」
「そうか。まあ今日はゆっくり休んでおけ。今のお前の仕事は体調を整えることだからな」
 シーグレットから労わりの言葉が聞けるなんて意外だ。
 シーグレットは口が悪いし俺様気質なところがあるから、そういうことは言わないんじゃないかって思ってた。
 そうだ、と思い出したようにシーグレットが俺の顔を見る。
「夕飯はまかないと同じもんでいいのか? 昼みてぇに別のもんがいいってんなら作らせるけどよ」
 夕飯か。
 体調はもう普段の時とそんなに変わらないし、病人食にする必要はなさそうだな。
 何より、今はがっつりと食べたい。雑炊は美味いけど胃にはそんなに溜まらないからな。
 俺は頷いた。
「同じのでいいよ」
「それじゃあ、夕飯の時に呼んでやるから此処に食いに来い」
 それだけ言って、シーグレットはしっしっと手を振った。
「ほれ、働いてねぇやつは出ていけ。仕事の邪魔だ」
 厨房から追い出された俺は、自分の部屋に戻りながら夕飯のことを考えて胃の辺りを撫でた。
 まかないは何だろう。朝、昼と胃に優しいものしか食べてないから肉とかだと嬉しいな。
 まあ、時間はまだある。風呂にでも入って時間を潰していよう。
 寝てる間に汗かいたみたいで、身体が微妙にべたついてるんだよな。
 そうと決まったら早速風呂に入りに行こう。
 部屋に戻った俺はクローゼットから着替えを取り出して、浴場へと向かった。
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