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第83話 約束
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ひと波乱あった晩餐会も無事に終わり、王様たちはクロエミナ国に帰ることになった。
飛竜が待つ城門の前で、俺は圭と固い握手を交わした。
「本当に、一緒に帰らないのか? 真央」
「ああ」
俺は後方をちらりと見た。
後方には、魔王とフランシスカが佇んでいる。見送りのために城から出てきたのだろう。
「俺にとっては、もう此処が家なんだ。俺はこれからも此処で、料理人として働いていくよ」
「そっか」
圭は微妙に淋しそうな顔をして、俺の決意に満ちた顔を見つめた。
笑って、俺の手を離す。
「俺たち、これからも親友だよな?」
「何言ってんだ、当たり前だろ」
俺は圭の背中を叩いた。
「これは別れじゃない。これからも、会おうと思えばいつだって会えるんだ。淋しがる必要なんかないさ」
「真央」
圭は、俺をぎゅっと抱き締めた。
俺はそれを、優しく抱き返した。
「絶対、また会おうな。約束だぞ、圭」
「うん!」
月に吸い込まれるように飛び去っていく飛竜の群れを見送っていた魔王が、呟いた。
「余との約束、忘れてはおらぬであろうな」
「約束?」
俺が訝ると、魔王は声を大きくして言った。
「隷属の首輪がなくともうぬは異世界の馳走を作ると申したではないか」
「ああ、それな」
何だ、俺が勢いだけで言ったことだと心配してたのか。
魔王らしいっていえば魔王らしいとは思うけど。
「俺は自分で言った約束は守る。そんな心配しなくても、俺はもう此処の料理人だよ」
俺は魔王の方に向き直り、親指で自分のことを指差した。
大きくてちょっともたついてるこの制服は、今となっては大切な服なのだ。こいつを脱ぐつもりはさらさらない。
それだけではない。
シーグレット。リベロ。グレン。此処には、俺を必要としてくれている仲間がいる。
あいつらのためにも、俺はフライパンを握り続けなければならないのだ。
それが、今の俺に与えられた存在意義だと思うから。
隷属の勇者──最初はその肩書きを何だと思っていたけれど、今は違う。
俺は此処で、皆と共に料理を作っていたいのだ。そのために隷属でいるのも悪くはないって、思えるのだ。
「マオは此処で美味しい料理を作ってくれるって約束した。それを破るわけないじゃない」
魔王の顔を見上げてフランシスカが唇を尖らせた。
「マオは約束をちゃんと守る。兄様、心配するなんてどうかしてる」
「そうか」
魔王はその一言で安心したのか、肩の力を抜いた。
「余はこれからも異世界の馳走を食する。この世界の馳走ではもはや満足はできぬ、それほどまでに異世界の馳走は魅力に溢れておる」
人差し指の先を俺の方に突きつけて、言う。
「勇者よ。これからも余の下で異世界の馳走を作り続けよ。うぬの手腕、期待しておるぞ」
「任せておけって」
俺は腰に手を当てて、笑った。
さあ、シーグレットたちが待っている厨房に帰ろう。晩餐会の後片付けが待っているからな。
俺を慕ってくれる顔ぶれを思い出しながら、俺は彼らの待つ職場へと踵を返したのだった。
飛竜が待つ城門の前で、俺は圭と固い握手を交わした。
「本当に、一緒に帰らないのか? 真央」
「ああ」
俺は後方をちらりと見た。
後方には、魔王とフランシスカが佇んでいる。見送りのために城から出てきたのだろう。
「俺にとっては、もう此処が家なんだ。俺はこれからも此処で、料理人として働いていくよ」
「そっか」
圭は微妙に淋しそうな顔をして、俺の決意に満ちた顔を見つめた。
笑って、俺の手を離す。
「俺たち、これからも親友だよな?」
「何言ってんだ、当たり前だろ」
俺は圭の背中を叩いた。
「これは別れじゃない。これからも、会おうと思えばいつだって会えるんだ。淋しがる必要なんかないさ」
「真央」
圭は、俺をぎゅっと抱き締めた。
俺はそれを、優しく抱き返した。
「絶対、また会おうな。約束だぞ、圭」
「うん!」
月に吸い込まれるように飛び去っていく飛竜の群れを見送っていた魔王が、呟いた。
「余との約束、忘れてはおらぬであろうな」
「約束?」
俺が訝ると、魔王は声を大きくして言った。
「隷属の首輪がなくともうぬは異世界の馳走を作ると申したではないか」
「ああ、それな」
何だ、俺が勢いだけで言ったことだと心配してたのか。
魔王らしいっていえば魔王らしいとは思うけど。
「俺は自分で言った約束は守る。そんな心配しなくても、俺はもう此処の料理人だよ」
俺は魔王の方に向き直り、親指で自分のことを指差した。
大きくてちょっともたついてるこの制服は、今となっては大切な服なのだ。こいつを脱ぐつもりはさらさらない。
それだけではない。
シーグレット。リベロ。グレン。此処には、俺を必要としてくれている仲間がいる。
あいつらのためにも、俺はフライパンを握り続けなければならないのだ。
それが、今の俺に与えられた存在意義だと思うから。
隷属の勇者──最初はその肩書きを何だと思っていたけれど、今は違う。
俺は此処で、皆と共に料理を作っていたいのだ。そのために隷属でいるのも悪くはないって、思えるのだ。
「マオは此処で美味しい料理を作ってくれるって約束した。それを破るわけないじゃない」
魔王の顔を見上げてフランシスカが唇を尖らせた。
「マオは約束をちゃんと守る。兄様、心配するなんてどうかしてる」
「そうか」
魔王はその一言で安心したのか、肩の力を抜いた。
「余はこれからも異世界の馳走を食する。この世界の馳走ではもはや満足はできぬ、それほどまでに異世界の馳走は魅力に溢れておる」
人差し指の先を俺の方に突きつけて、言う。
「勇者よ。これからも余の下で異世界の馳走を作り続けよ。うぬの手腕、期待しておるぞ」
「任せておけって」
俺は腰に手を当てて、笑った。
さあ、シーグレットたちが待っている厨房に帰ろう。晩餐会の後片付けが待っているからな。
俺を慕ってくれる顔ぶれを思い出しながら、俺は彼らの待つ職場へと踵を返したのだった。
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