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第13話 よろず屋だってやる時はやる
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僕は必死に考えを巡らせた。
動けるのが僕しかいない以上、捕まった二人を助けるためには僕が動くより他にない。
だが、僕はただのよろず屋の店主だ。僕にはオクトラーケンと一戦交えられるような力はない。
錬金術を上手く使えば二人を救出するくらいはできるのではないかと思えるかもしれないが、それは甘い。
錬金術を発動させるには、集中力が必要だ。誰にも邪魔されないような環境があることが絶対条件なのだ。
いつオクトラーケンに襲われるか分からない環境下では、集中力が乱れてしまい錬金術を発動させることができないのである。
でも、何かしなければ二人は──
オクトラーケンの触手に力が篭る。
それまで気丈に振る舞っていたフラウが悲鳴を上げた。
オクトラーケンは二人を絞め殺すつもりだ!
「フラウ! 魔術で何とか脱出しろ!」
「あ……ぐっ……無理、集中……できないっ……!」
僕の呼びかけに、フラウは首を振った。
華奢な彼女の体ではこれ以上は耐えられない。
くそっ、何かないか! 二人の束縛を解く方法は!
オクトラーケンが残りの触手を僕めがけて叩きつけてきた。
僕はその場を横跳びに離れた。
僕が今し方立っていた場所を、オクトラーケンの太い触手がばちんと叩く。
僕は避けるので精一杯で、避けた後のことは考えていなかった。
濡れた地面に足を取られて、僕は投げ出されるように倒れた。
肩から下げていた鞄が地面に叩きつけられて、中からころりと何かが零れ出てくる。
それは、六角形の掌サイズほどのチップだった。
トラッパー!
別の触手が僕の脳天に振り下ろされる。
僕は咄嗟に地面に落ちたトラッパーを拾って、迫り来る触手めがけて投げつけた。
トラッパーは触手に張り付き、黄金に光り輝いた。
ボンッ!
触手がちぎれて僕の頭上をすっ飛んでいく。
短くなった触手は僕の目の前の地面を叩いた。水滴が飛び、僕の顔にぴたぴたと掛かった。
これだ!
僕は鞄に手を突っ込んで、ありったけのトラッパーを取り出した。
立ち上がって、フラウを掴んでいる触手を狙ってトラッパーを投げる。
ボン! ボボン!
トラッパーの爆発で触手の表面が深く抉れる。触手の力が抜けた隙を突いて、フラウは戒めから強引に脱出した。
「ファイアボール!」
宙を落下していきながら、フラウはアラグを掴んでいる触手を狙って魔術を放つ。
ぼっ、と弾ける炎。触手がちぎれ、アラグは自由を取り戻した。
着地したと同時にアラグは剣を構えてオクトラーケンに向かっていく。
そこに、フラウの魔術が発動した。
「エンチャント・サンダー!」
アラグの剣が淡い紫色に輝く。
アラグは剣を思い切り振りかぶって、オクトラーケンの目と目の間にそれを突き立てた。
ばちっ、と太い稲妻がオクトラーケンの体を這う。
オクトラーケンはびくっと震えて、残った触手を扇のように広げた。
そして、そのままゆっくりと空気が抜けていくように。
くたり、と地面に触手を広げて、湖の中に派手な水飛沫を上げながら倒れていった。
アラグが身構えたまま、ふぅ……と深く息を吐く。
「今度こそ、効いただろ……どうだ」
オクトラーケンの反応はない。
僕は緊張の糸が切れて、その場にへたりと座り込んでしまった。
「…………や、やった……」
遂に、倒したのだ。この巨大な魔物を。
僕たちは、しばしの間湖の上にぷかりと浮かんでいるオクトラーケンを見つめていた。
遠くから聞こえてくる滝の音が、まるで僕たちの勝利を祝うドラムの音のように思えた。
動けるのが僕しかいない以上、捕まった二人を助けるためには僕が動くより他にない。
だが、僕はただのよろず屋の店主だ。僕にはオクトラーケンと一戦交えられるような力はない。
錬金術を上手く使えば二人を救出するくらいはできるのではないかと思えるかもしれないが、それは甘い。
錬金術を発動させるには、集中力が必要だ。誰にも邪魔されないような環境があることが絶対条件なのだ。
いつオクトラーケンに襲われるか分からない環境下では、集中力が乱れてしまい錬金術を発動させることができないのである。
でも、何かしなければ二人は──
オクトラーケンの触手に力が篭る。
それまで気丈に振る舞っていたフラウが悲鳴を上げた。
オクトラーケンは二人を絞め殺すつもりだ!
「フラウ! 魔術で何とか脱出しろ!」
「あ……ぐっ……無理、集中……できないっ……!」
僕の呼びかけに、フラウは首を振った。
華奢な彼女の体ではこれ以上は耐えられない。
くそっ、何かないか! 二人の束縛を解く方法は!
オクトラーケンが残りの触手を僕めがけて叩きつけてきた。
僕はその場を横跳びに離れた。
僕が今し方立っていた場所を、オクトラーケンの太い触手がばちんと叩く。
僕は避けるので精一杯で、避けた後のことは考えていなかった。
濡れた地面に足を取られて、僕は投げ出されるように倒れた。
肩から下げていた鞄が地面に叩きつけられて、中からころりと何かが零れ出てくる。
それは、六角形の掌サイズほどのチップだった。
トラッパー!
別の触手が僕の脳天に振り下ろされる。
僕は咄嗟に地面に落ちたトラッパーを拾って、迫り来る触手めがけて投げつけた。
トラッパーは触手に張り付き、黄金に光り輝いた。
ボンッ!
触手がちぎれて僕の頭上をすっ飛んでいく。
短くなった触手は僕の目の前の地面を叩いた。水滴が飛び、僕の顔にぴたぴたと掛かった。
これだ!
僕は鞄に手を突っ込んで、ありったけのトラッパーを取り出した。
立ち上がって、フラウを掴んでいる触手を狙ってトラッパーを投げる。
ボン! ボボン!
トラッパーの爆発で触手の表面が深く抉れる。触手の力が抜けた隙を突いて、フラウは戒めから強引に脱出した。
「ファイアボール!」
宙を落下していきながら、フラウはアラグを掴んでいる触手を狙って魔術を放つ。
ぼっ、と弾ける炎。触手がちぎれ、アラグは自由を取り戻した。
着地したと同時にアラグは剣を構えてオクトラーケンに向かっていく。
そこに、フラウの魔術が発動した。
「エンチャント・サンダー!」
アラグの剣が淡い紫色に輝く。
アラグは剣を思い切り振りかぶって、オクトラーケンの目と目の間にそれを突き立てた。
ばちっ、と太い稲妻がオクトラーケンの体を這う。
オクトラーケンはびくっと震えて、残った触手を扇のように広げた。
そして、そのままゆっくりと空気が抜けていくように。
くたり、と地面に触手を広げて、湖の中に派手な水飛沫を上げながら倒れていった。
アラグが身構えたまま、ふぅ……と深く息を吐く。
「今度こそ、効いただろ……どうだ」
オクトラーケンの反応はない。
僕は緊張の糸が切れて、その場にへたりと座り込んでしまった。
「…………や、やった……」
遂に、倒したのだ。この巨大な魔物を。
僕たちは、しばしの間湖の上にぷかりと浮かんでいるオクトラーケンを見つめていた。
遠くから聞こえてくる滝の音が、まるで僕たちの勝利を祝うドラムの音のように思えた。
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