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第42話 元坑道のダンジョン
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内部は僕の予想通り、通路に梁が張り巡らされた坑道の形をしていた。
あちこち天井が崩れかかっており、梁で何とか支えられている状態だ。
壁は穴だらけで、かつては此処で採掘が行われていたという名残を見ることができた。
地面にはレールが敷かれており、真っ暗な道に向かってまっすぐに伸びている。
道なりに進んでいくと、途中でひっくり返っているトロッコを発見した。
車輪がすっかり錆び付いていてぼろぼろだ。これはもう使えそうにない。
更に先に進むと、やや広くなっている空間に出た。
どうやら此処で、鉱石の採掘が行われていたらしい。あちこちに砂利の山があり、つるはしやスコップが放置されていた。
魔物もいた。小さな鼠の姿をした魔物だ。
あまり好戦的ではない生き物のようで、ランタンの光を見ると魔物たちは一目散に通路の奥に走り去ってしまった。
「……静かだね」
辺りを見回してサーファさんが呟く。
それを聞いていたアミィさんがこくこくと小さく頷いた。
確かに彼らが言う通り、此処は静かだ。生き物の気配が殆ど感じられない。
アデルさんはしばし周囲の物音を探るように耳を澄ましていたが、引き締まった面持ちで僕たちの方に振り向いてきた。
「魔物だけが敵とは限らない。注意して進んでいこう」
彼の言う通りだ。入口が錬金術で封印されていたように、何か魔術的な罠が潜んでいる可能性はある。
これだけ崩れやすそうな様子の道だし、通路の崩落にも注意しなければならない。
敵は魔物だけとは限らないのだ。
僕たちは先に進んだ。
途中広くなっているところを幾つも通り抜け、巨大な空間に出た。
そこは、元は奥で採掘した石を集めるための場所として使われていたところのようだった。トロッコが何台も置かれており、地面にはレールが何本も敷かれている。
奥には扉に閉ざされた通路が幾つかあり、扉の傍にはおそらく扉を開くためのスイッチであろうレバーがそれぞれ設置されている。
あちこちにはボタ山がある。ひとつひとつが小さな丘ほどの大きさだ。
その前に、うねうねと動く巨大な生き物がいた。
蛇──にしては頭の形が変だ。触覚もあるし、何より体に鱗がない。
その生き物は、ボタ山に時折頭を突っ込んで何かをボリボリと食べていた。
「……何だあれ」
「ロックワームですね」
僕の呟きに、アデルさんが答えた。
ワーム……ということは、あれは巨大なミミズか?
「こういう岩だらけの場所に生息する魔物です」
岩を食べる魔物なので、奴らが住む洞窟は壁や地面を食べられて形を変形させてしまうらしい。
好戦的な魔物ではないが、洞窟で遭遇した場合は洞窟の崩落を防ぐために積極的に狩るのが鉄則なのだそうだ。
アデルさんは剣を抜いた。
「幸い、あれは食事に気を取られています。今のうちに狩ってしまいましょう」
背後から近付いていき、斜めに剣を振り下ろす。
ロックワームは体をふたつに断たれてくたりと紐のように地面に転がった。
「……ソーセージみたい」
ロックワームを見ていたアミィさんがぽつりと呟く。
やめてくれ。そう言われるとソーセージが食べられなくなるじゃないか。
気まずそうに沈黙するサーファさん。
アデルさんは剣を納めて戻ってくると、不思議そうに彼のことを見た。
「……何かあったのか?」
「何でもない」
しれっと答えるアミィさん。
アデルさんは微妙に小首を傾げて、閉ざされている扉の方に目を向けた。
「道が幾つかに分かれていますね。どの道を進みましょう?」
「……その前に、扉を開くレバーが今でも生きてるかどうかだよね」
僕はレバーのひとつに注目した。
レバーは、長いこと誰も触っていなかったということもあってすっかり錆び付いている。
この分では、動力は既に死んでいる可能性がある。
アデルさんは最も近くにあったレバーの元まで歩いていって、レバーに手を掛けた。
「動かしてみます」
ぐっと手に力を入れて、レバーを倒す。
レバーはぎぎぎと軋んだ音を立てて傾いていき、途中でぼきんと折れてしまった。
「……駄目か」
「こっちは?」
別の扉のレバーを掴むサーファさん。
彼がレバーを倒すと、がこんという重い音がして彼の傍にある扉が開いた。
砂っぽい空気が、奥から吹いてくる風に乗って流れてくる。
どうやら、この奥の空気は大分淀んでいるようだ。
「行きましょう」
先陣を切って扉の中に足を踏み入れるアデルさん。
僕は鼻を袖で覆いながら、彼の後に続いて扉をくぐり抜けた。
あちこち天井が崩れかかっており、梁で何とか支えられている状態だ。
壁は穴だらけで、かつては此処で採掘が行われていたという名残を見ることができた。
地面にはレールが敷かれており、真っ暗な道に向かってまっすぐに伸びている。
道なりに進んでいくと、途中でひっくり返っているトロッコを発見した。
車輪がすっかり錆び付いていてぼろぼろだ。これはもう使えそうにない。
更に先に進むと、やや広くなっている空間に出た。
どうやら此処で、鉱石の採掘が行われていたらしい。あちこちに砂利の山があり、つるはしやスコップが放置されていた。
魔物もいた。小さな鼠の姿をした魔物だ。
あまり好戦的ではない生き物のようで、ランタンの光を見ると魔物たちは一目散に通路の奥に走り去ってしまった。
「……静かだね」
辺りを見回してサーファさんが呟く。
それを聞いていたアミィさんがこくこくと小さく頷いた。
確かに彼らが言う通り、此処は静かだ。生き物の気配が殆ど感じられない。
アデルさんはしばし周囲の物音を探るように耳を澄ましていたが、引き締まった面持ちで僕たちの方に振り向いてきた。
「魔物だけが敵とは限らない。注意して進んでいこう」
彼の言う通りだ。入口が錬金術で封印されていたように、何か魔術的な罠が潜んでいる可能性はある。
これだけ崩れやすそうな様子の道だし、通路の崩落にも注意しなければならない。
敵は魔物だけとは限らないのだ。
僕たちは先に進んだ。
途中広くなっているところを幾つも通り抜け、巨大な空間に出た。
そこは、元は奥で採掘した石を集めるための場所として使われていたところのようだった。トロッコが何台も置かれており、地面にはレールが何本も敷かれている。
奥には扉に閉ざされた通路が幾つかあり、扉の傍にはおそらく扉を開くためのスイッチであろうレバーがそれぞれ設置されている。
あちこちにはボタ山がある。ひとつひとつが小さな丘ほどの大きさだ。
その前に、うねうねと動く巨大な生き物がいた。
蛇──にしては頭の形が変だ。触覚もあるし、何より体に鱗がない。
その生き物は、ボタ山に時折頭を突っ込んで何かをボリボリと食べていた。
「……何だあれ」
「ロックワームですね」
僕の呟きに、アデルさんが答えた。
ワーム……ということは、あれは巨大なミミズか?
「こういう岩だらけの場所に生息する魔物です」
岩を食べる魔物なので、奴らが住む洞窟は壁や地面を食べられて形を変形させてしまうらしい。
好戦的な魔物ではないが、洞窟で遭遇した場合は洞窟の崩落を防ぐために積極的に狩るのが鉄則なのだそうだ。
アデルさんは剣を抜いた。
「幸い、あれは食事に気を取られています。今のうちに狩ってしまいましょう」
背後から近付いていき、斜めに剣を振り下ろす。
ロックワームは体をふたつに断たれてくたりと紐のように地面に転がった。
「……ソーセージみたい」
ロックワームを見ていたアミィさんがぽつりと呟く。
やめてくれ。そう言われるとソーセージが食べられなくなるじゃないか。
気まずそうに沈黙するサーファさん。
アデルさんは剣を納めて戻ってくると、不思議そうに彼のことを見た。
「……何かあったのか?」
「何でもない」
しれっと答えるアミィさん。
アデルさんは微妙に小首を傾げて、閉ざされている扉の方に目を向けた。
「道が幾つかに分かれていますね。どの道を進みましょう?」
「……その前に、扉を開くレバーが今でも生きてるかどうかだよね」
僕はレバーのひとつに注目した。
レバーは、長いこと誰も触っていなかったということもあってすっかり錆び付いている。
この分では、動力は既に死んでいる可能性がある。
アデルさんは最も近くにあったレバーの元まで歩いていって、レバーに手を掛けた。
「動かしてみます」
ぐっと手に力を入れて、レバーを倒す。
レバーはぎぎぎと軋んだ音を立てて傾いていき、途中でぼきんと折れてしまった。
「……駄目か」
「こっちは?」
別の扉のレバーを掴むサーファさん。
彼がレバーを倒すと、がこんという重い音がして彼の傍にある扉が開いた。
砂っぽい空気が、奥から吹いてくる風に乗って流れてくる。
どうやら、この奥の空気は大分淀んでいるようだ。
「行きましょう」
先陣を切って扉の中に足を踏み入れるアデルさん。
僕は鼻を袖で覆いながら、彼の後に続いて扉をくぐり抜けた。
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