アメミヤのよろず屋

高柳神羅

文字の大きさ
43 / 176

第43話 アンデッドの恐怖

しおりを挟む
 扉の奥に続く坑道は、今までよりも狭く複雑に曲がりくねっていた。
 途中幾つにも枝分かれしており、その度にどっちに進むかで僕たちは頭を悩ませた。
 壁を食べて穴を広げているロックワームを倒しながら、歩を進めていくと。
 道の途中で、奇妙なものに遭遇した。
 それは、天井から逆さに生えた人間の男だった。
 その体は半分透けており、頭は不自然に陥没している。
 男はくるりと音もなくこちらに振り向いてくると、血にまみれた顔をにたりと歪めてこちらにすーっと音もなく近付いてきた。
「わぁぁ!?」
「アミィ、頼む!」
 悲鳴を上げる僕を庇うように前に立ちながら、アミィさんを呼ぶアデルさん。
 アミィさんは杖を取り出すと、水晶が填まっている杖の先を男へと向けた。
「ホーリーライト」
 ぱあっ、と柔らかな光が男を包み込む。
 男は苦悶の表情を浮かべると、ひぃぃと甲高い悲鳴を上げながら宙に霧散して消えていった。
 僕はぺたんとその場に尻餅をついた。
「レイスがいるなんて聞いてない!」
「まさかアンデッドがいるダンジョンとはね……こっちの剣を使った方が良さそうだな」
 アデルさんは短く息を吐くと、抜いていた剣を背に納めて腰に差していた細身の剣を抜いた。
 あれは、純銀製の剣だ。
 純銀製の武器は柔らかく強度がそれほどでもないので普通の武器として使うには向かないが、アンデッドに対しては強い効果を発揮するのだ。
 アデルさんが剣を持ち替えたのを見て、サーファさんも腰の後ろに差していたナイフを抜いた。
 どうやら彼らは、それなりにアンデッドと戦ってきた経験があるようである。
 アデルさんは僕に手を差し伸べた。
「大丈夫ですよ。アミィの魔術もありますし、アンデッドなどに後れは取りませんから」
「……うぅ」
 僕はアデルさんの手を借りて立ち上がった。
 アンデッドは嫌いなのだ。何処から出てくるか分からないし、何より見た目が宜しくないから。
 この様子だと、このダンジョンに潜んでいるアンデッドはレイスだけではないだろう。
 もう帰りたい。胸中で頭を抱える僕だった。
「では、行きましょう。アミィ、いつでも魔術を放てるように準備だけはしておいてくれ」
 アミィさんに一声掛けて、アデルさんは剣を片手に坑道を進んでいく。
 置いて行かれては堪らない。僕は早足で彼の後を追いかけた。
 案の定──
 奥に進めば進むほど、僕たちの前に現れるアンデッドの数は増えていった。
 壁をすり抜けて襲いかかってくるレイスを筆頭に、人間の骨格標本がそのまま動いているような姿をしたスケルトン、人間の腐乱死体が歩いているような姿のゾンビなど。
 僕たちは、それを倒しながら前へと進んでいった。
 特に、アミィさんが放つ光魔術の効果は絶大だった。
 彼女の魔術の前に、アンデッドたちは抵抗もできずに消滅していった。
 僕はアミィさんの傍にぴったりと寄り添って、ランタンを懸命に翳すことに尽力したよ。
 錬金術にはアンデッドを何とかするような力はないからね。
 そうして襲いかかってくるアンデッドたちを蹴散らし、遂に僕たちは、ダンジョンの中心部と思われる部屋へと到着した。
 そこは坑道らしかった今までの様子からは一変して、綺麗に壁が整えられた洞窟のような形をしていた。
 部屋の広さは十メートル四方ほど。部屋の中心には、何かの魔術なのか、複雑な形状をした紋様を描いた円形の台座が誂えられている。
 紋様は、血のような真っ赤な液体で描かれているようだった。これが血と決まったわけではないが、見ていて気味が悪い。
「これは……」
 アデルさんは台座に近付いた。
 彼が、台座に描かれている紋様に指先を触れた、その時。

「ほう。客人か……これは珍しい」

 僕たちが歩いてきた通路の方から、歌うような声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか? これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】悪の尋問令嬢、″捨てられ王子″の妻になる。

Y(ワイ)
ファンタジー
尋問を生業にする侯爵家に婿入りしたのは、恋愛戦略に敗れた腹黒王子。 白い結婚から始まる、腹黒VS腹黒の執着恋愛コメディ(シリアス有り)です。

処理中です...