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第49話 魔術師を捨てた死神
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店に戻ると、閉ざされた戸口の前に腕を組んだ鎧姿の男が凭れ掛かっていた。
「……アラグ?」
「よう、シルカ。やっと帰ってきたか」
僕が声を掛けると、彼はゆっくりと戸口から背を離した。
彼の背中と戸口の間に挟まれていた『閉店中』の札がゆらゆらと左右に揺れている。
「せっかく来たのに店が閉まってるんだもんな。何処行ってたんだよ」
「墓参りに行ってたんだ。もう終わったよ」
僕は入口の鍵を開けた。
がらがらと扉を全開にして、店の中に入る。
アラグはそれにやや遅れて中に入ってきた。
「墓参り……ああ、そういえば冒険者の妹がいたんだってお前言ってたな」
作業台に薬草の束を並べ始める僕の手元を観察しながら、彼は自分の顎を撫でた。
それからやや神妙な顔つきになり、言った。
「なあ……冒険者に戻らんか? シルカ。今まで使えてた魔術だって、忘れたわけじゃないんだろ?」
腕を組んで、彼は僕に諭す。
「錬金術が使えるお前が冒険者に戻ってくれれば、色々助かるんだ。今でもお前の復帰を待ってくれてる連中だって大勢いる。そんなに悪い話じゃないと思うんだが」
「…………」
僕は静かにかぶりを振った。
「僕は冒険者に戻る気はない。魔術ももう捨てた。僕は此処で、ひっそりと商売をしながら暮らしていくって決めたんだ」
「妹さんだって、お前が此処で店を経営してるよりも世界で活躍してほしいって思ってるはずだ。妹さんのためにも、冒険者に戻ろうぜ? なあ──」
「あいつがそんなことを思ってるはずがない!」
僕は叫んで作業台をばんと叩いた。
「あいつにとって、僕は死神なんだ! あいつは僕が魔術師でいることを望んでない! 分かったようなことを言わないでくれ!」
衝撃で床に落ちた薬草の束を、アラグは静かに拾った。
作業台の上にそれをそっと戻して、溜め息をつく。
「悪かった。そんなに怒るな」
僕の背中に優しく手を置いて、言う。
「でも、今俺が言ったことも本当なんだ。昔お前と組んだことのある仲間は、お前が冒険者を引退したことを今でも惜しんでる。お前はいつでもこっちの世界に帰って来れるんだってことを、忘れないでくれ」
アラグの言葉が、僕の胸にちくりと突き刺さる。
魔術師を捨てた僕を、今でも待ってくれている人がいる。
それに応えられない僕は、今でも、彼らの仲間だと思われる資格はあるのだろうか。
「……何の用だ。何か用事があって此処に来たんだろ」
「ああ、そうだったな」
僕の言葉にアラグは相槌を打って、腰の袋から何かを取り出し、作業台の上に置いた。
刃の部分が水晶でできた短剣──かつて僕たちがダンジョンで手に入れた品だ。
「こいつについて色々情報を集めてみたんだが、それなりのことが分かったから伝えておこうと思ってな」
言って、彼は腰の袋から更にそれを取り出した。
同じ、刃が水晶の短剣──しかしこちらの短剣は刃の色が黄色である。
「こいつの正式名称は『精霊の剣』という。ある遺跡の仕掛けの鍵になっている重要な品だ」
「ある遺跡?」
眉を顰めた僕の問いに、アラグは頷いて言葉を続けた。
「ア・ロア遺跡──レオノア高原にあると言われる古代遺跡だ」
「……アラグ?」
「よう、シルカ。やっと帰ってきたか」
僕が声を掛けると、彼はゆっくりと戸口から背を離した。
彼の背中と戸口の間に挟まれていた『閉店中』の札がゆらゆらと左右に揺れている。
「せっかく来たのに店が閉まってるんだもんな。何処行ってたんだよ」
「墓参りに行ってたんだ。もう終わったよ」
僕は入口の鍵を開けた。
がらがらと扉を全開にして、店の中に入る。
アラグはそれにやや遅れて中に入ってきた。
「墓参り……ああ、そういえば冒険者の妹がいたんだってお前言ってたな」
作業台に薬草の束を並べ始める僕の手元を観察しながら、彼は自分の顎を撫でた。
それからやや神妙な顔つきになり、言った。
「なあ……冒険者に戻らんか? シルカ。今まで使えてた魔術だって、忘れたわけじゃないんだろ?」
腕を組んで、彼は僕に諭す。
「錬金術が使えるお前が冒険者に戻ってくれれば、色々助かるんだ。今でもお前の復帰を待ってくれてる連中だって大勢いる。そんなに悪い話じゃないと思うんだが」
「…………」
僕は静かにかぶりを振った。
「僕は冒険者に戻る気はない。魔術ももう捨てた。僕は此処で、ひっそりと商売をしながら暮らしていくって決めたんだ」
「妹さんだって、お前が此処で店を経営してるよりも世界で活躍してほしいって思ってるはずだ。妹さんのためにも、冒険者に戻ろうぜ? なあ──」
「あいつがそんなことを思ってるはずがない!」
僕は叫んで作業台をばんと叩いた。
「あいつにとって、僕は死神なんだ! あいつは僕が魔術師でいることを望んでない! 分かったようなことを言わないでくれ!」
衝撃で床に落ちた薬草の束を、アラグは静かに拾った。
作業台の上にそれをそっと戻して、溜め息をつく。
「悪かった。そんなに怒るな」
僕の背中に優しく手を置いて、言う。
「でも、今俺が言ったことも本当なんだ。昔お前と組んだことのある仲間は、お前が冒険者を引退したことを今でも惜しんでる。お前はいつでもこっちの世界に帰って来れるんだってことを、忘れないでくれ」
アラグの言葉が、僕の胸にちくりと突き刺さる。
魔術師を捨てた僕を、今でも待ってくれている人がいる。
それに応えられない僕は、今でも、彼らの仲間だと思われる資格はあるのだろうか。
「……何の用だ。何か用事があって此処に来たんだろ」
「ああ、そうだったな」
僕の言葉にアラグは相槌を打って、腰の袋から何かを取り出し、作業台の上に置いた。
刃の部分が水晶でできた短剣──かつて僕たちがダンジョンで手に入れた品だ。
「こいつについて色々情報を集めてみたんだが、それなりのことが分かったから伝えておこうと思ってな」
言って、彼は腰の袋から更にそれを取り出した。
同じ、刃が水晶の短剣──しかしこちらの短剣は刃の色が黄色である。
「こいつの正式名称は『精霊の剣』という。ある遺跡の仕掛けの鍵になっている重要な品だ」
「ある遺跡?」
眉を顰めた僕の問いに、アラグは頷いて言葉を続けた。
「ア・ロア遺跡──レオノア高原にあると言われる古代遺跡だ」
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