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第77話 家族が増えた
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僕が皿に盛って持ってきた山盛りの鶏肉のソテーを、フェンリルはばくばくと食べている。
この食べっぷり、そんなに腹が減ってたのか、こいつ。
店に訪れる客たちがフェンリルを見てぎょっとしてたけど、犬と勘違いしているのか特に何も言わずに普通に買い物をしていった。
さて……僕がこいつに食い殺される心配はとりあえず必要なくなったわけだけど、どうすればいいんだ、この状況。
早いところ森に帰ってもらうのが一番いいんだろうが……
やがて、肉を完食したフェンリルが満足そうに顔を上げた。
『ごちそうさま。やっぱり焼いてあるお肉は美味しいね』
「それは何より」
僕は空になった皿を作業台の上に置いた。
「さ、腹一杯になったんなら森に帰りな」
『ううん、帰らない』
……は?
フェンリルは尻尾を揺らしながら、言った。
『僕は決めたよ。此処で暮らす』
「…………はい?」
おいおいおい。ちょっと待て。
僕は口をぽかんと開けてフェンリルを見た。
此処で暮らすって……まさか、ずっと居座る気か?
この店は動物禁制ではないし、僕も特に動物嫌いというわけではないが、此処に居座られるというのは流石に困る。
こいつは普通の犬ではない。フェンリルなのだ。
そんなものが此処にいるって人に知られたら大騒ぎになる。
大騒ぎになったら、僕が愛している此処での平穏な生活が壊されてしまう。
そんなのは御免だ。
僕は慌てて反論した。
「そんなの許されるわけないだろ。此処は人間の街なんだぞ。フェンリルが暮らせるような場所じゃない」
『人間の街のことは、多少は知ってるよ。僕はこれでも二百年生きてるんだ。世界を支配する種族のことは勉強しているつもりさ』
二百年……千年を生きる種族であることを考えたら、なかなか若い。
おそらくこのフェンリルはまだ子供なのだ。だからそんなに大きくないし、年頃の若者みたいな砕けた口調をしているのだろう。
此処で暮らすと言い出したのも、若さ故のことか。
「……僕にあんたの世話をしろって言うのか?」
『ただで世話をしろなんて言うつもりはないよ。何かあった時は、僕が君のことを守ってあげる。悪い話じゃないはずさ』
……番犬を飼うようなものだと考えれば、いけるのか?
店に来た客たちはこいつを犬だと思ってたっぽいし、幸いこいつは大型犬くらいの大きさだし……
……いやいや。見る人が見たらフェンリルだって分かる。ずっと隠し通せるはずがない。
やっぱり、駄目だ。こいつを此処に置くわけにはいかない。
僕は毅然とした態度で言った。
「……森に帰れ。僕はあんたを此処に置く気はない」
『君が何と言おうと、僕はもう決めたから』
そう言うと、フェンリルはその場に寝そべってしまった。
目を閉じて、すっかり寛ぎモードだ。
『……あ、そうそう』
と思ったら、僅かに顔を上げて、言った。
『君は僕の主人になるわけだから、名前を付けてよ』
「おい、人の話を」
『それじゃあ、宜しく。毎日の食事、期待してるからね』
「…………」
僕は頭を抱えて溜め息をついた。
きっと森で出会った時にサンドイッチをあげたのが失敗だったんだ。
身の安全のためと思ってやったことが、とんでもない事態を招いてしまった。
どうしよう、これから。
押しかけ女房のような形で僕のペットになってしまったフェンリルを見ながら、僕は増えてしまった懸念に頭を悩ませるのだった。
この食べっぷり、そんなに腹が減ってたのか、こいつ。
店に訪れる客たちがフェンリルを見てぎょっとしてたけど、犬と勘違いしているのか特に何も言わずに普通に買い物をしていった。
さて……僕がこいつに食い殺される心配はとりあえず必要なくなったわけだけど、どうすればいいんだ、この状況。
早いところ森に帰ってもらうのが一番いいんだろうが……
やがて、肉を完食したフェンリルが満足そうに顔を上げた。
『ごちそうさま。やっぱり焼いてあるお肉は美味しいね』
「それは何より」
僕は空になった皿を作業台の上に置いた。
「さ、腹一杯になったんなら森に帰りな」
『ううん、帰らない』
……は?
フェンリルは尻尾を揺らしながら、言った。
『僕は決めたよ。此処で暮らす』
「…………はい?」
おいおいおい。ちょっと待て。
僕は口をぽかんと開けてフェンリルを見た。
此処で暮らすって……まさか、ずっと居座る気か?
この店は動物禁制ではないし、僕も特に動物嫌いというわけではないが、此処に居座られるというのは流石に困る。
こいつは普通の犬ではない。フェンリルなのだ。
そんなものが此処にいるって人に知られたら大騒ぎになる。
大騒ぎになったら、僕が愛している此処での平穏な生活が壊されてしまう。
そんなのは御免だ。
僕は慌てて反論した。
「そんなの許されるわけないだろ。此処は人間の街なんだぞ。フェンリルが暮らせるような場所じゃない」
『人間の街のことは、多少は知ってるよ。僕はこれでも二百年生きてるんだ。世界を支配する種族のことは勉強しているつもりさ』
二百年……千年を生きる種族であることを考えたら、なかなか若い。
おそらくこのフェンリルはまだ子供なのだ。だからそんなに大きくないし、年頃の若者みたいな砕けた口調をしているのだろう。
此処で暮らすと言い出したのも、若さ故のことか。
「……僕にあんたの世話をしろって言うのか?」
『ただで世話をしろなんて言うつもりはないよ。何かあった時は、僕が君のことを守ってあげる。悪い話じゃないはずさ』
……番犬を飼うようなものだと考えれば、いけるのか?
店に来た客たちはこいつを犬だと思ってたっぽいし、幸いこいつは大型犬くらいの大きさだし……
……いやいや。見る人が見たらフェンリルだって分かる。ずっと隠し通せるはずがない。
やっぱり、駄目だ。こいつを此処に置くわけにはいかない。
僕は毅然とした態度で言った。
「……森に帰れ。僕はあんたを此処に置く気はない」
『君が何と言おうと、僕はもう決めたから』
そう言うと、フェンリルはその場に寝そべってしまった。
目を閉じて、すっかり寛ぎモードだ。
『……あ、そうそう』
と思ったら、僅かに顔を上げて、言った。
『君は僕の主人になるわけだから、名前を付けてよ』
「おい、人の話を」
『それじゃあ、宜しく。毎日の食事、期待してるからね』
「…………」
僕は頭を抱えて溜め息をついた。
きっと森で出会った時にサンドイッチをあげたのが失敗だったんだ。
身の安全のためと思ってやったことが、とんでもない事態を招いてしまった。
どうしよう、これから。
押しかけ女房のような形で僕のペットになってしまったフェンリルを見ながら、僕は増えてしまった懸念に頭を悩ませるのだった。
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