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第79話 強盗VSシルバー
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空から注ぐ夕焼けの光で、通りが綺麗な黄金色に染まっている。
今日も一日繁盛したなぁ。
ふっと息を吐きながら、僕は金庫の中身を確認した。
今日一日の売り上げを詰めた金庫は大量の銀貨でぱんぱんになっていた。蓋がしっかりと閉まらない。
こんなに銀貨で一杯になっているのは、安価なポーションやトラッパーがよく売れたからだ。
僕は金庫の傍に畳んで置いてあった革袋を一枚取って、中に銀貨を詰め始めた。
そこに、唐突に突きつけられる剣の刃。
顔を上げると、黒いマフラーで覆面をした全身真っ黒の人物が目の前に立っていた。
中肉中背で、マフラーの間から覗いている目は黒い。外見だけなら男にも女にも思える人物だ。
「……金を出せ」
凛とした声で、その人物は僕に言った。声の低さからして男だろう。
僕は目を見開いて、両手を挙げた。
剣先は僕の顔のすぐ前にある。男がちょっと剣を前に突き出せば刺さる、そんな位置だ。
下手な動きを見せれば斬り捨てられる。
背筋に悪寒が走った。
「早くしろ。金を出せ!」
僕が動かないことに苛立ちを覚えたのか、語調を強めて男は再度要求してきた。
僕は作業台の方をちらりと見た。
物音に気付いたシルバーが、伏せていた頭を持ち上げてこちらを見ている。
僕は両手を挙げたまま一歩後ろに下がり、叫んだ。
「シルバー! 強盗だ!」
ひゅ、と風が吹いた。
風は刃となり、男の顔を覆っていたマフラーを切り裂いた。
マフラーがただの布切れとなって床に落ちる。
隠していた顔が露わになり、男は驚愕の顔を浮かべた。
「……何!?」
がうっという唸り声。
牙を剥き出しにしたシルバーが、背後から男に飛びかかった!
服の襟を咬まれて引っ張られ、男が倒れる。
手からすっぽ抜けた剣が、固い音を立てて床を転がっていった。
僕は急いでカウンターから抜け出して、落ちた剣を拾った。
「くそ……こいつめ……!」
男が暴れながらシルバーの鼻を掴んで引き剥がそうとする。
シルバーは微妙に表情を歪めて、男の服を引っ張りながら男を睨み付けた。
ばちっ!
何かが弾ける音が鳴り、男の全身がびくんと震える。
男は白目を剥いて、くたりとその場に力尽きてしまった。
最後までシルバーを引き剥がそうとしていた手が、ぴくぴくと痙攣するように震えている。
僕は恐る恐る倒れた男に近付きながら、シルバーに尋ねた。
「……何やったんだ? お前」
『雷のちょっと強いのを撃ってやったんだよ』
ああ……ショックが強すぎて意識が飛んだんだな。
人間を一撃で気絶させるほどの威力の雷魔術なんて、なかなか使い手はいないぞ。
その辺りは、流石フェンリルといったところか。
『しばらく動かないだろうけど、動けないようにしといた方がいいよ』
「あ……ああ。そうだな」
僕は店の奥から荷物を纏める時に使っているロープを持って来て、男を縛り上げた。
これでよし……後は警備隊を呼んできて引き渡すだけだ。
シルバーがいてくれて助かったよ、本当に。
強盗を捕まえた御褒美に、後でちょっと高級な肉を焼いたのを出してやろう。
「シルバー、警備隊を呼んでくるからそいつを見張ってて」
『分かった』
シルバーは男の横で座った。
僕は見張りをシルバーに任せ、警備隊を呼ぶために店の外に駆けた。
夕焼け色に染まった太陽が眩しい。
まるで強盗事件の終わりを街中に告げるかのように、カラスが一羽、澄んだ声で鳴きながら頭上を横切っていった。
今日も一日繁盛したなぁ。
ふっと息を吐きながら、僕は金庫の中身を確認した。
今日一日の売り上げを詰めた金庫は大量の銀貨でぱんぱんになっていた。蓋がしっかりと閉まらない。
こんなに銀貨で一杯になっているのは、安価なポーションやトラッパーがよく売れたからだ。
僕は金庫の傍に畳んで置いてあった革袋を一枚取って、中に銀貨を詰め始めた。
そこに、唐突に突きつけられる剣の刃。
顔を上げると、黒いマフラーで覆面をした全身真っ黒の人物が目の前に立っていた。
中肉中背で、マフラーの間から覗いている目は黒い。外見だけなら男にも女にも思える人物だ。
「……金を出せ」
凛とした声で、その人物は僕に言った。声の低さからして男だろう。
僕は目を見開いて、両手を挙げた。
剣先は僕の顔のすぐ前にある。男がちょっと剣を前に突き出せば刺さる、そんな位置だ。
下手な動きを見せれば斬り捨てられる。
背筋に悪寒が走った。
「早くしろ。金を出せ!」
僕が動かないことに苛立ちを覚えたのか、語調を強めて男は再度要求してきた。
僕は作業台の方をちらりと見た。
物音に気付いたシルバーが、伏せていた頭を持ち上げてこちらを見ている。
僕は両手を挙げたまま一歩後ろに下がり、叫んだ。
「シルバー! 強盗だ!」
ひゅ、と風が吹いた。
風は刃となり、男の顔を覆っていたマフラーを切り裂いた。
マフラーがただの布切れとなって床に落ちる。
隠していた顔が露わになり、男は驚愕の顔を浮かべた。
「……何!?」
がうっという唸り声。
牙を剥き出しにしたシルバーが、背後から男に飛びかかった!
服の襟を咬まれて引っ張られ、男が倒れる。
手からすっぽ抜けた剣が、固い音を立てて床を転がっていった。
僕は急いでカウンターから抜け出して、落ちた剣を拾った。
「くそ……こいつめ……!」
男が暴れながらシルバーの鼻を掴んで引き剥がそうとする。
シルバーは微妙に表情を歪めて、男の服を引っ張りながら男を睨み付けた。
ばちっ!
何かが弾ける音が鳴り、男の全身がびくんと震える。
男は白目を剥いて、くたりとその場に力尽きてしまった。
最後までシルバーを引き剥がそうとしていた手が、ぴくぴくと痙攣するように震えている。
僕は恐る恐る倒れた男に近付きながら、シルバーに尋ねた。
「……何やったんだ? お前」
『雷のちょっと強いのを撃ってやったんだよ』
ああ……ショックが強すぎて意識が飛んだんだな。
人間を一撃で気絶させるほどの威力の雷魔術なんて、なかなか使い手はいないぞ。
その辺りは、流石フェンリルといったところか。
『しばらく動かないだろうけど、動けないようにしといた方がいいよ』
「あ……ああ。そうだな」
僕は店の奥から荷物を纏める時に使っているロープを持って来て、男を縛り上げた。
これでよし……後は警備隊を呼んできて引き渡すだけだ。
シルバーがいてくれて助かったよ、本当に。
強盗を捕まえた御褒美に、後でちょっと高級な肉を焼いたのを出してやろう。
「シルバー、警備隊を呼んでくるからそいつを見張ってて」
『分かった』
シルバーは男の横で座った。
僕は見張りをシルバーに任せ、警備隊を呼ぶために店の外に駆けた。
夕焼け色に染まった太陽が眩しい。
まるで強盗事件の終わりを街中に告げるかのように、カラスが一羽、澄んだ声で鳴きながら頭上を横切っていった。
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