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第119話 いざ大海原へ
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出立の朝。その日も、空は綺麗に晴れていた。
遠くまで突き抜けるような青だ。この分なら、これから向かう現地も晴れていることだろう。
店の前で集合した僕たちは、イオンが召喚した幻獣に乗って、一路北──セロナの街を目指すことになった。
そこで今日は一泊し、翌日、船で神殿のある海へと向かう算段らしい。
幻獣で神殿がある場所まで行ってもいいのだろうが、神殿が海の何処に沈んでいるか分からないため、捜索中にイオンの魔力が尽きてしまう可能性があることを考慮して船で探すことにしたのだそうだ。
その船を何処で調達するのかは分からないが、それをブランに尋ねてもブランは任せておけと言うばかりで詳しいことは教えてはくれなかった。
まあ、彼があそこまで自信満々に言うのだ。信用して任せることにしよう。
不安が全くないわけでもなかったが、そこは考えたら負けのような気がする。
僕たち四人を乗せた幻獣は風のように大空を翔けていき、日没と共に、セロナの街に到着した。
翌朝。宿でゆっくり体を休めた僕たちは、街を出発した。
そして向かったのが──スエルニャ洞穴。不死の海賊たちと戦いを繰り広げ、金貨を手に入れた海賊のアジトである。
此処にはもう何もないはずだが……
「……今更こんな場所に来るなんて、何考えてるんだ?」
「すぐに分かる」
先陣を切ってブランは洞窟の中へと入っていった。
半分首を傾げながらも、彼に付いていく僕たち。
既に罠を解除してあり海賊たちも倒された後の此処は平穏そのもので、何の苦労もなく最深部の部屋に到着した。
かつて大きな錠前で封鎖されていた扉を開き、奥へと足を踏み入れて。
僕たちは、朽ちた船のある港へとやって来た。
船は相変わらずの様子で、外から入ってくる波と風とに揺られながら海の上に浮かんでいる。
「何これ……随分ぼろぼろの船だね」
初めて此処に来たナナイが、船を見上げて目を瞬かせている。
ブランはまっすぐに桟橋まで行くと、こちらに振り向いてきた。
「シルカ」
「何だ?」
返事をする僕に、彼は言った。
「お前の錬金術で、この船を修復してほしい」
「……これを?」
僕はぎょっとして、船を見た。
ひょっとして、ブランが考えがあると言っていたのは……この船を修理して使うつもりだったのか。
幽霊船同然のこの船は船体もマストもぼろぼろで、多分内部も甲板も目茶苦茶になっているだろう。
これを直してくれ、と言われても、一筋縄ではいかないことは容易に想像が付く。
「無理か?」
「……できなくはないだろうけど……完璧に元通りにするのは無理だ。損傷が激しすぎる」
僕は眉間に皺を寄せた。
例えば、船体に空いた穴。これを材料もなく塞ごうと考えたら、周囲の無事な箇所の装甲を寄せる必要がある。装甲を寄せたら当然その部分は薄くなり、結果として船全体が脆くなってしまうのだ。
これだけの穴を全部塞ごうと考えたら、一体何処まで装甲を寄せる必要があるのか。そして仮に全ての穴を塞ぐことができたとして、その船には航海に耐えられるだけの強度が残っているのか。
それが全く分からない状態で、この船を使う。それは余りにもリスクが高すぎる気がする。
「……僕は気が進まない。修理しても、使えるようになるとは限らないんだぞ」
「その時はその時だ。そうなったら別の手段を考える。……とにかく、直してみないことには分からないんだろ。頼む、やってくれ」
「……分かった」
渋々僕は頷いて、桟橋から船へと乗り込んだ。
やはり、甲板も穴だらけだ。折れたマストは転がってるし、何より長らく潮風に晒されていたせいで全体が傷んでいる。
これは……手こずりそうだ。
僕はその場に片膝を立ててしゃがみ、両手を甲板にしっかりと付けた。
ふーっと静かに深呼吸をして、精神を集中させる。
ばしっ!
船全体に、僕の魔力を行き渡らせる。
魔力に包まれた船体は少しずつ変化して、穴を塞ぎ、折れたマストを元通り立てて、使われていた頃の姿へと戻っていった。
見た目には何ともないように見えるが、船体が何処まで脆くなってるかは分からない。そこは気を付けるしかない。
とりあえず念のために甲板を歩き回って穴が空かないことを確認して、僕は桟橋にいるブランに声を掛けた。
「……できたぞ」
「元通りじゃないか。これなら問題なく使えそうだぞ」
「見た目はそう見えるかもしれないけど、全体的に装甲が薄くなってるんだ。衝撃で簡単に穴が空く可能性がある。ぶつけないように注意してくれよ」
ブランは船を見上げているイオンとナナイを呼び、船に乗り込んだ。
真っ先に向かったのが動力室。船体が直っても肝心の動力が死んでたら船は動かないからな。
船の動力にはオールを使って漕ぐ手動タイプと、魔石を用いて船体を動かす自動タイプがある。
この船は魔石を用いたタイプのようで、動力室には大きな魔石が備えられていた。かなり古いが、使うことはできそうだ。
甲板に戻り、ブランは甲板の先にある操縦席に立った。
舵を握り、声を張り上げる。
「よし、それじゃあ出航だ!」
彼の声に応えて──
船が、ゆっくりと前進を始めた。
岩のトンネルを越えて、大海原へと向かっていく。
それを甲板から見つめる僕たち。
海底に沈んだ神殿を探す海の旅が、始まった。
遠くまで突き抜けるような青だ。この分なら、これから向かう現地も晴れていることだろう。
店の前で集合した僕たちは、イオンが召喚した幻獣に乗って、一路北──セロナの街を目指すことになった。
そこで今日は一泊し、翌日、船で神殿のある海へと向かう算段らしい。
幻獣で神殿がある場所まで行ってもいいのだろうが、神殿が海の何処に沈んでいるか分からないため、捜索中にイオンの魔力が尽きてしまう可能性があることを考慮して船で探すことにしたのだそうだ。
その船を何処で調達するのかは分からないが、それをブランに尋ねてもブランは任せておけと言うばかりで詳しいことは教えてはくれなかった。
まあ、彼があそこまで自信満々に言うのだ。信用して任せることにしよう。
不安が全くないわけでもなかったが、そこは考えたら負けのような気がする。
僕たち四人を乗せた幻獣は風のように大空を翔けていき、日没と共に、セロナの街に到着した。
翌朝。宿でゆっくり体を休めた僕たちは、街を出発した。
そして向かったのが──スエルニャ洞穴。不死の海賊たちと戦いを繰り広げ、金貨を手に入れた海賊のアジトである。
此処にはもう何もないはずだが……
「……今更こんな場所に来るなんて、何考えてるんだ?」
「すぐに分かる」
先陣を切ってブランは洞窟の中へと入っていった。
半分首を傾げながらも、彼に付いていく僕たち。
既に罠を解除してあり海賊たちも倒された後の此処は平穏そのもので、何の苦労もなく最深部の部屋に到着した。
かつて大きな錠前で封鎖されていた扉を開き、奥へと足を踏み入れて。
僕たちは、朽ちた船のある港へとやって来た。
船は相変わらずの様子で、外から入ってくる波と風とに揺られながら海の上に浮かんでいる。
「何これ……随分ぼろぼろの船だね」
初めて此処に来たナナイが、船を見上げて目を瞬かせている。
ブランはまっすぐに桟橋まで行くと、こちらに振り向いてきた。
「シルカ」
「何だ?」
返事をする僕に、彼は言った。
「お前の錬金術で、この船を修復してほしい」
「……これを?」
僕はぎょっとして、船を見た。
ひょっとして、ブランが考えがあると言っていたのは……この船を修理して使うつもりだったのか。
幽霊船同然のこの船は船体もマストもぼろぼろで、多分内部も甲板も目茶苦茶になっているだろう。
これを直してくれ、と言われても、一筋縄ではいかないことは容易に想像が付く。
「無理か?」
「……できなくはないだろうけど……完璧に元通りにするのは無理だ。損傷が激しすぎる」
僕は眉間に皺を寄せた。
例えば、船体に空いた穴。これを材料もなく塞ごうと考えたら、周囲の無事な箇所の装甲を寄せる必要がある。装甲を寄せたら当然その部分は薄くなり、結果として船全体が脆くなってしまうのだ。
これだけの穴を全部塞ごうと考えたら、一体何処まで装甲を寄せる必要があるのか。そして仮に全ての穴を塞ぐことができたとして、その船には航海に耐えられるだけの強度が残っているのか。
それが全く分からない状態で、この船を使う。それは余りにもリスクが高すぎる気がする。
「……僕は気が進まない。修理しても、使えるようになるとは限らないんだぞ」
「その時はその時だ。そうなったら別の手段を考える。……とにかく、直してみないことには分からないんだろ。頼む、やってくれ」
「……分かった」
渋々僕は頷いて、桟橋から船へと乗り込んだ。
やはり、甲板も穴だらけだ。折れたマストは転がってるし、何より長らく潮風に晒されていたせいで全体が傷んでいる。
これは……手こずりそうだ。
僕はその場に片膝を立ててしゃがみ、両手を甲板にしっかりと付けた。
ふーっと静かに深呼吸をして、精神を集中させる。
ばしっ!
船全体に、僕の魔力を行き渡らせる。
魔力に包まれた船体は少しずつ変化して、穴を塞ぎ、折れたマストを元通り立てて、使われていた頃の姿へと戻っていった。
見た目には何ともないように見えるが、船体が何処まで脆くなってるかは分からない。そこは気を付けるしかない。
とりあえず念のために甲板を歩き回って穴が空かないことを確認して、僕は桟橋にいるブランに声を掛けた。
「……できたぞ」
「元通りじゃないか。これなら問題なく使えそうだぞ」
「見た目はそう見えるかもしれないけど、全体的に装甲が薄くなってるんだ。衝撃で簡単に穴が空く可能性がある。ぶつけないように注意してくれよ」
ブランは船を見上げているイオンとナナイを呼び、船に乗り込んだ。
真っ先に向かったのが動力室。船体が直っても肝心の動力が死んでたら船は動かないからな。
船の動力にはオールを使って漕ぐ手動タイプと、魔石を用いて船体を動かす自動タイプがある。
この船は魔石を用いたタイプのようで、動力室には大きな魔石が備えられていた。かなり古いが、使うことはできそうだ。
甲板に戻り、ブランは甲板の先にある操縦席に立った。
舵を握り、声を張り上げる。
「よし、それじゃあ出航だ!」
彼の声に応えて──
船が、ゆっくりと前進を始めた。
岩のトンネルを越えて、大海原へと向かっていく。
それを甲板から見つめる僕たち。
海底に沈んだ神殿を探す海の旅が、始まった。
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