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第120話 前途多難な船旅
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空を穏やかに流れる雲。
海全体を眩く照らす太陽。
海面を駆け抜けていく風。
水面を掻き分けて前へと進んでいく船。
ゆらりゆらりと船体が左右に揺れている。
それらが与えてくれる感覚を全身で感じながら、
僕は甲板の真ん中に突っ伏していた。
「……気持ち悪い……」
僕の呟きに答える者はいない。
僕は胸の中で渦巻いている感覚と孤独に戦っていた。
馬車の揺れには慣れているが、船のこの脳そのものを揺さぶられるような感覚はどうしても慣れない。
ちょっとでも気を抜いたら吐いてしまいそうだった。
「シルカちゃん、凄い格好だね。大丈夫?」
甲板の後方で海を眺めていたナナイが、僕の傍にやって来る。
僕は顔を上げて、彼女の足をちらりと見た。
「……何であんたたちはそう平然としてられるんだ……」
「何でって……船には結構乗るから慣れてるもの」
船酔いしていたら冒険者はやってられない、ってか。
頑丈だな、冒険者という人種は。
ナナイは僕の体を優しく抱き起こした。
「こんなところにいるより手摺りの傍で遠くを見てた方が酔わないよ。連れて行ってあげようか?」
「……うん……」
僕はナナイの肩を借りて手摺りのある場所まで移動した。
手摺りに寄り掛かりながら、水平線の彼方に目を向ける。
……確かに、この方が酔わないような……気はする。
ナナイは操舵席にいるブランに声を掛けた。
「ブランちゃん、神殿は見つかりそう?」
ブランは左手に握っているコンパスに目を向けて、かぶりを振りながら答えた。
「いや、まだだ。それっぽいものは何も見えんな」
コンパスの針が方角ではなく宝の在り処を指していると僕たちが気付いたのは、スエルニャ洞穴を発って少ししてからのことだった。
理由は、それまで北を指していたコンパスの針が、いつの間にか西を指していたからだ。
コンパスが指す方向に船を進めていけば、神殿に辿り着くことができる。
そう信じて、船の舵をコンパスが指す方に向けているのだが──
出発して三時間。まだ、それらしきものがある場所には辿り着かない。
見えるのは海。そればかりだ。
「ま、すぐに見つからんのは仕方ない。気長に探すさ」
「だって。頑張って、シルカちゃん」
頑張ってどうにかなるなら今頃苦しんでなどいない。
こんなことになるなら酔い止めの薬を調合しておくんだった。
溜め息をついた、その直後。
船体が、ぐんっと大きく揺れた。
「!」
僕は必死に手摺りにしがみ付き、海面を見つめた。
海の青を映した視界が、ぐらりと揺れる。
胸の奥から込み上げてくる不快感。
僕は小さな声で呻いた。
「……駄目だ……吐く……」
ナナイは苦笑して、僕の背中を優しくぽんと叩いた。
「そっか。此処、外だし丁度良かったね。吐いてすっきりしちゃいなよ」
僕は手摺りの外に身を乗り出した。
「うぇぇぇ……」
僕の船旅は前途多難である。
海全体を眩く照らす太陽。
海面を駆け抜けていく風。
水面を掻き分けて前へと進んでいく船。
ゆらりゆらりと船体が左右に揺れている。
それらが与えてくれる感覚を全身で感じながら、
僕は甲板の真ん中に突っ伏していた。
「……気持ち悪い……」
僕の呟きに答える者はいない。
僕は胸の中で渦巻いている感覚と孤独に戦っていた。
馬車の揺れには慣れているが、船のこの脳そのものを揺さぶられるような感覚はどうしても慣れない。
ちょっとでも気を抜いたら吐いてしまいそうだった。
「シルカちゃん、凄い格好だね。大丈夫?」
甲板の後方で海を眺めていたナナイが、僕の傍にやって来る。
僕は顔を上げて、彼女の足をちらりと見た。
「……何であんたたちはそう平然としてられるんだ……」
「何でって……船には結構乗るから慣れてるもの」
船酔いしていたら冒険者はやってられない、ってか。
頑丈だな、冒険者という人種は。
ナナイは僕の体を優しく抱き起こした。
「こんなところにいるより手摺りの傍で遠くを見てた方が酔わないよ。連れて行ってあげようか?」
「……うん……」
僕はナナイの肩を借りて手摺りのある場所まで移動した。
手摺りに寄り掛かりながら、水平線の彼方に目を向ける。
……確かに、この方が酔わないような……気はする。
ナナイは操舵席にいるブランに声を掛けた。
「ブランちゃん、神殿は見つかりそう?」
ブランは左手に握っているコンパスに目を向けて、かぶりを振りながら答えた。
「いや、まだだ。それっぽいものは何も見えんな」
コンパスの針が方角ではなく宝の在り処を指していると僕たちが気付いたのは、スエルニャ洞穴を発って少ししてからのことだった。
理由は、それまで北を指していたコンパスの針が、いつの間にか西を指していたからだ。
コンパスが指す方向に船を進めていけば、神殿に辿り着くことができる。
そう信じて、船の舵をコンパスが指す方に向けているのだが──
出発して三時間。まだ、それらしきものがある場所には辿り着かない。
見えるのは海。そればかりだ。
「ま、すぐに見つからんのは仕方ない。気長に探すさ」
「だって。頑張って、シルカちゃん」
頑張ってどうにかなるなら今頃苦しんでなどいない。
こんなことになるなら酔い止めの薬を調合しておくんだった。
溜め息をついた、その直後。
船体が、ぐんっと大きく揺れた。
「!」
僕は必死に手摺りにしがみ付き、海面を見つめた。
海の青を映した視界が、ぐらりと揺れる。
胸の奥から込み上げてくる不快感。
僕は小さな声で呻いた。
「……駄目だ……吐く……」
ナナイは苦笑して、僕の背中を優しくぽんと叩いた。
「そっか。此処、外だし丁度良かったね。吐いてすっきりしちゃいなよ」
僕は手摺りの外に身を乗り出した。
「うぇぇぇ……」
僕の船旅は前途多難である。
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