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第122話 箱の中で眠るもの
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真っ白な石でできた神殿は、長いこと海の中に沈んでいたにも拘らず、藻などの付着もなく綺麗な状態を保っていた。
大きさは五十メートル四方ほど。今までに見てきた遺跡や神殿、城なんかと比較するとかなり小さい。
壁には細かな彫刻が施され、小さいながらもなかなかの美しさを誇っている。
「……いよいよだな」
ブランは神殿の入口の前に立って、神殿を見上げていた。
ようやく追いついた僕たちも、それに倣って神殿を見上げた。
「多くの冒険者が夢に見た海賊王の宝……早速拝ませてもらおうじゃないか」
ゆっくりと、僕たちは神殿の中に足を踏み入れた。
神殿の内部は、廊下などは一切なく、がらんとした広い空間が一杯に広がっていた。
天井の中央には大きな穴が設けられており、差し込む太陽の光が空間を明るく照らしている。
その光の中心に。
人一人が入りそうなほどの大きさの箱が、置かれていた。
色は赤。金で縁取られ、箱自体がひとつの財産になりそうな雰囲気の立派な宝箱である。
あれが──海賊王の宝。
僕たちは箱に近付いた。
ブランは嬉しそうに笑っていた。そりゃずっと追ってきた宝が目の前にあるんだから、そうなる気持ちも分かるよ。
「……何が入ってるかな」
箱の目の前に立ち、蓋に両手を掛けるナナイ。
ブランは言った。
「開けてみよう」
彼の言葉に頷いて、ナナイは箱の蓋を開けた。
ぎ……と軋み音を立てて蓋が開いていく。
中に入っていたのは──
「……?」
僕たちの表情が変わった。
箱の中にあったもの。
それは、夢に描いていたような金銀財宝ではない。
何処かで見たことあるような、緑色の触手の群れだったのだ。
「何、これ──」
眉を顰めたナナイの言葉が途切れる。
触手の何本かが勢い良く箱の中から飛び出して、ナナイの左肩を貫いたのだ!
「あっ!?」
「……何だ!?」
咄嗟にハルバードを抜いて振るうブラン。
しかし触手はすぐに引っ込んでしまい、ハルバードの刃は空しく空を切った。
「──我が宝を狙う賊か。実に何年ぶりであろうな──」
箱の中から声がした。
触手が蠢き、箱の外に這い出してくる。
僕たちが身構える中、それはゆっくりと立ち上がり、人の形になっていく。
立派な装束に身を包んだ緑色の触手の怪物が、そこにいた。
「気が遠すぎて、暦などとうに忘れてしまったが……な」
怪物は触手に埋もれた目を細めて、笑った。
この怪物……見覚えがある。
スエルニャ洞穴で戦った不死の海賊たち。あれと同じ姿なのだ。
怪物は箱から出てくると、両腕を控え目に広げて、言った。
「我が名は海賊王ブレシャス……此処に封じたのは、我が生涯を費やし完成させた究極の宝」
ぞろり、と怪物──海賊王の背から何本もの触手が伸びて、蠢く。
「この世のどんな財宝よりも価値のある、不死の秘術──それを狙う賊は始末せねばならん」
海賊王は懐から拳銃を取り出すと、その銃口を僕たちへと向けた。
「海の藻屑となれ。哀れで愚かな賊たちよ」
「散開!」
ブランが叫ぶ。
彼の号令で僕たちが海賊王から距離を置くのと、海賊王の拳銃が銃弾を放ったのは同時だった。
大きさは五十メートル四方ほど。今までに見てきた遺跡や神殿、城なんかと比較するとかなり小さい。
壁には細かな彫刻が施され、小さいながらもなかなかの美しさを誇っている。
「……いよいよだな」
ブランは神殿の入口の前に立って、神殿を見上げていた。
ようやく追いついた僕たちも、それに倣って神殿を見上げた。
「多くの冒険者が夢に見た海賊王の宝……早速拝ませてもらおうじゃないか」
ゆっくりと、僕たちは神殿の中に足を踏み入れた。
神殿の内部は、廊下などは一切なく、がらんとした広い空間が一杯に広がっていた。
天井の中央には大きな穴が設けられており、差し込む太陽の光が空間を明るく照らしている。
その光の中心に。
人一人が入りそうなほどの大きさの箱が、置かれていた。
色は赤。金で縁取られ、箱自体がひとつの財産になりそうな雰囲気の立派な宝箱である。
あれが──海賊王の宝。
僕たちは箱に近付いた。
ブランは嬉しそうに笑っていた。そりゃずっと追ってきた宝が目の前にあるんだから、そうなる気持ちも分かるよ。
「……何が入ってるかな」
箱の目の前に立ち、蓋に両手を掛けるナナイ。
ブランは言った。
「開けてみよう」
彼の言葉に頷いて、ナナイは箱の蓋を開けた。
ぎ……と軋み音を立てて蓋が開いていく。
中に入っていたのは──
「……?」
僕たちの表情が変わった。
箱の中にあったもの。
それは、夢に描いていたような金銀財宝ではない。
何処かで見たことあるような、緑色の触手の群れだったのだ。
「何、これ──」
眉を顰めたナナイの言葉が途切れる。
触手の何本かが勢い良く箱の中から飛び出して、ナナイの左肩を貫いたのだ!
「あっ!?」
「……何だ!?」
咄嗟にハルバードを抜いて振るうブラン。
しかし触手はすぐに引っ込んでしまい、ハルバードの刃は空しく空を切った。
「──我が宝を狙う賊か。実に何年ぶりであろうな──」
箱の中から声がした。
触手が蠢き、箱の外に這い出してくる。
僕たちが身構える中、それはゆっくりと立ち上がり、人の形になっていく。
立派な装束に身を包んだ緑色の触手の怪物が、そこにいた。
「気が遠すぎて、暦などとうに忘れてしまったが……な」
怪物は触手に埋もれた目を細めて、笑った。
この怪物……見覚えがある。
スエルニャ洞穴で戦った不死の海賊たち。あれと同じ姿なのだ。
怪物は箱から出てくると、両腕を控え目に広げて、言った。
「我が名は海賊王ブレシャス……此処に封じたのは、我が生涯を費やし完成させた究極の宝」
ぞろり、と怪物──海賊王の背から何本もの触手が伸びて、蠢く。
「この世のどんな財宝よりも価値のある、不死の秘術──それを狙う賊は始末せねばならん」
海賊王は懐から拳銃を取り出すと、その銃口を僕たちへと向けた。
「海の藻屑となれ。哀れで愚かな賊たちよ」
「散開!」
ブランが叫ぶ。
彼の号令で僕たちが海賊王から距離を置くのと、海賊王の拳銃が銃弾を放ったのは同時だった。
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