アメミヤのよろず屋

高柳神羅

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第123話 不死の秘術

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 銃弾は僕の顔のすぐ横を貫いていった。
 いきなり飛んできた一撃に身が竦みそうになりながらも、僕は鞄からポーションを取り出してナナイの元に駆けた。
「ナナイ! 大丈夫か!」
「シルカちゃん……うん、ナナイは大丈夫」
 ポーションを渡すと、ナナイはそれを受け取って一気に呷った。
 瓶を投げ捨てて、剣を握る。
「シルカちゃんは離れてて。此処はナナイたちに任せて!」
「おおッ!」
 雄叫びを上げてブランが海賊王に肉薄する!
 ハルバードを斜めに一閃する。その刃は海賊王の顔のすぐ前を薙いで、海賊王の顔から数本の触手を切り落とした。
 海賊王がにやりとして銃口をブランに向ける。
 ぱぁんっ!
 ブランの髪が切られて宙に舞う。
 ブランはそれにも怯まずに海賊王との距離を詰めて、連続でハルバードを振るった。
「あくまで退かぬか。正しい判断だ」
 海賊王は冷静にブランの攻撃を避けながら、言った。
「そちらが接近戦を望むなら、こちらもそれなりの力を持って相手をしよう」
 海賊王の背から生えた触手が、一斉にブランに襲いかかる。
 触手の先端は槍のような鋭さがある。蜘蛛が足を抱くように振り下ろされるそれらは、さながら巨大な魔物の牙のようだった。
 ブランは舌打ちをして海賊王から距離を置いた。
 触手がブランの目の前を貫く。
 そこに、両手に剣を構えたナナイが突っ込んでいく!
 十字に振るわれるナナイの剣。それを海賊王は拳銃で受け止め、触手の何本かをナナイに向けて突き出した。
 ナナイが左の剣で触手を払う。斬られた触手の先端がぼとりと床に落ち、黒い血が点々と飛び散った。
「なかなか良い業物だ」
 斬られた触手に目をやりながら笑う海賊王。
「しかし、我を屠るには役不足だな」
 ぞる、と更に数本の触手が新たに海賊王の背に生える。
 一体何本あるんだ、あいつの触手は!
「サモン・リヴァイアサン」
 イオンの言葉に応えて幻獣が姿を現す。
 幻獣は身をくねらせながら宙を泳ぎ、海賊王めがけて突っ込んでいった。
 幻獣の牙が海賊王の左手に食らいつく!
 海賊王の左腕がちぎれ、大量の血が辺りに散る。
 海賊王は半ば感心したようにちぎれた左腕に目をやって、触手を大きく広げた。
「その力……部下に欲しいところだ。惜しいな」
「余所見する余裕があるのかい、海賊王さんよ!」
 縦にハルバードを振り下ろすブラン。
 ハルバードの刃は、薪を割るようにざくりと海賊王の肩口を断ち割った!
 海賊王の動きが止まる。そこに加えられるナナイの一撃。
 ナナイの剣は海賊王の心臓を貫いて、背へと抜けた。
 しかし、海賊王の態度からは余裕の色が消えない。
「心臓を潰した程度では我は止まらん。我は不死の存在だからな」
「だったら、動けないようにばらばらにしてやるまでだ!」
 ブランがハルバードを持った手に力を込める。
 肩を断ち割ったハルバードの刃が更に押し込まれ、海賊王の上半身を斜めに断つ!
 血と臓腑を零しながら、海賊王の上半身が床に転がる。
 下半身は数歩よろけて後退り、力を失って倒れて──
 ──いかない?
 海賊王の下半身は、まるで上半身を失ったことなど気にもしていない様子で立っていた。
 切断面から溢れていた血が──止まる。
「我が秘術の真髄、見せてやろう」
 床に転がった海賊王の上半身が身じろぎする。
 中身がはみ出た腹が、ざわざわと蠢いて──
 蛸の足のような触手が、腸を引きちぎりながら大量に生えてきた!
 下半身にも同じように大量の触手が生える。
 ひときわ長い触手が、鞭のように空を叩く仕草をする。
 先程幻獣に食いちぎられた左腕も、触手を生やして草のように床の上に立っていた。
 触手を足の代わりにして起き上がった海賊王の上半身は、拳銃を構えながらブランたちに迫った。
「理解したかね? 我をどんなに斬ろうが無駄だ。粉々になろうとも、我は動くことを止めぬ」
 つまり──肉片になっても動き続けるということか?
 大量の肉片が迫ってくる光景を想像して、僕は身震いした。
 何て気味の悪い奴なんだ!
「そんなのハッタリに決まってるだろ!」
 吠えて、ブランはハルバードを振るう。
 ブランの一撃を受けた下半身が、二つの肉となって床に転がる。
 それらも、先と同じように切り口から触手を生やして、個々の存在となって迫ってきた。
 ……駄目だ、斬れば斬るだけ相手が増える。復活しない方法を探さないと、永遠に此処で戦い続ける羽目になる。
 海賊王の笑い声を聞きながら、僕は必死に考えを巡らせた。
 この分だと、魔術で吹き飛ばしたとしても結果は同じだろう。
 おそらく、物理的な方法では駄目なのだ。
 何か、ないか。奴に通用しそうな手段は──
 海賊王の左腕が、触手を動かして僕の方へと迫ってきた。
 考え事をしていた僕は、すぐにはそれに気付けなかった。
「シルカ! そっちに行ったぞ!」
 ブランの言葉でようやく意識が目の前に向く。
 その時には、腕はもう目と鼻の先にいた。
 掌を広げ、僕を掴もうとしてくる!
「わぁぁ!?」
 僕は叫んでその場を飛び退き、無我夢中で腕に向かって掌を翳した。
「ファイアボール!」
 咄嗟に唱えた魔術が、腕に直撃する。
 炎は瞬く間に全体を飲み込んで、火柱となり激しく燃え上がった。
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