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第125話 最期の願い
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僕は心臓を握り潰されたような感覚を感じていた。
僕が、ナナイを殺す──
突きつけられたその現実に、目の前が真っ暗になった。
「……何で」
僕は身を震わせながら言った。
「何で、僕が」
「お願いだよ、シルカちゃん」
ナナイは手にした剣を僕へと握らせようと突き出してくる。
「ナナイは、此処にいる皆のことが大事なの。この手で殺してしまうようなことは、したくない。だから……お願い。ナナイが人間でいる今のうちに、ナナイを殺して」
「だから、何で僕がやらなくちゃいけないんだよ!」
僕は大声を上げた。
ナナイが寄越してくる剣を突っぱねて、ナナイの両肩を掴む。
僕の手に払われた剣は、澄んだ音を立てながら神殿の床を転がっていった。
「此処にはブランも、イオンもいるだろ! 何で僕なんだ!」
「ナナイはシルカちゃんのことが大好きだから!」
ナナイは僕の手を掴んだ。
ぐっと握り締められて、僕は彼女の肩を揺するのをやめた。
ナナイは僅かに目を伏せて、続けた。
「シルカちゃんが大好きだから……シルカちゃんにやってもらいたいの。シルカちゃんの手で、殺してもらいたいの。ナナイの我儘だけど……最後のお願い、叶えさせて」
……何て告白なんだよ。
そんな言い方をするなんて、ずるいよ。
そう言われたら──嫌だって、言えないじゃないか。
僕は顔を伏せた。
目の奥が、じわりと熱くなる。
目に映るナナイの姿が滲んで、広がっていった。
「……おね、がい」
ナナイの触手が、僕の体に絡み付く。
何かを強請る子供のように、首に巻き付いて。
ぎゅうっと、喉を絞め付けてきた。
「……お願い、だよ……」
ナナイの手が僕の手から離れる。
僕はぶるぶると身を震わせて、吠え声を上げた。
「……ぁああああ──ッ!!」
僕は掌をナナイの胸に向けた。
目から、大粒の涙が零れて落ちた。
「バーストフレア!」
僕の叫びと共に掌から放たれた光が、ナナイの心臓を吹き飛ばす。
掌にぴたぴたと振りかかる、ナナイの温もり。
僕の首に巻き付いていた触手が力を失い、ぱらぱらと床に落ちた。
「……シルカちゃん」
はあはあと肩を激しく上下させる僕の呼吸音に溶け込むように、ナナイの静かな声が聞こえた。
「……ありがとう」
ぼやけた視界の中に、ナナイの微笑み顔が、はっきりと浮かび上がっていた。
ナナイはゆっくりと、僕の腕の中に倒れていった。
僕はそれを抱き止めて、大声で泣いた。
ブランがそっと僕の肩に手を置く。
イオンが僕の顔を覗き込んで、何かを語りかけるような優しい視線を向けてくる。
それらを気にもせず、僕は頬を目一杯涙で濡らして泣き続けた。
──こうして、海賊王の宝探しの旅は幕を閉じた。
再び海底へと沈んでいく神殿を眼下に納めながら、僕たちは幻獣に乗って街へと帰還した。
ブランも、イオンも、道中は何も言わなかった。ただゆっくり休めと言うように、僕を宿の部屋に残して何処かへと出かけていった。
僕は、ベッドの上に横になり、ひたすら眠っていた。
思い浮かぶのは、かつて僕が殺してしまった妹のこと。
あの時もこんな風に泣いていたな……と思いつつ。
相手に望まれて相手を殺すことは、果たして本当に正しいことなのだろうかと、独りごちるのだった。
僕が、ナナイを殺す──
突きつけられたその現実に、目の前が真っ暗になった。
「……何で」
僕は身を震わせながら言った。
「何で、僕が」
「お願いだよ、シルカちゃん」
ナナイは手にした剣を僕へと握らせようと突き出してくる。
「ナナイは、此処にいる皆のことが大事なの。この手で殺してしまうようなことは、したくない。だから……お願い。ナナイが人間でいる今のうちに、ナナイを殺して」
「だから、何で僕がやらなくちゃいけないんだよ!」
僕は大声を上げた。
ナナイが寄越してくる剣を突っぱねて、ナナイの両肩を掴む。
僕の手に払われた剣は、澄んだ音を立てながら神殿の床を転がっていった。
「此処にはブランも、イオンもいるだろ! 何で僕なんだ!」
「ナナイはシルカちゃんのことが大好きだから!」
ナナイは僕の手を掴んだ。
ぐっと握り締められて、僕は彼女の肩を揺するのをやめた。
ナナイは僅かに目を伏せて、続けた。
「シルカちゃんが大好きだから……シルカちゃんにやってもらいたいの。シルカちゃんの手で、殺してもらいたいの。ナナイの我儘だけど……最後のお願い、叶えさせて」
……何て告白なんだよ。
そんな言い方をするなんて、ずるいよ。
そう言われたら──嫌だって、言えないじゃないか。
僕は顔を伏せた。
目の奥が、じわりと熱くなる。
目に映るナナイの姿が滲んで、広がっていった。
「……おね、がい」
ナナイの触手が、僕の体に絡み付く。
何かを強請る子供のように、首に巻き付いて。
ぎゅうっと、喉を絞め付けてきた。
「……お願い、だよ……」
ナナイの手が僕の手から離れる。
僕はぶるぶると身を震わせて、吠え声を上げた。
「……ぁああああ──ッ!!」
僕は掌をナナイの胸に向けた。
目から、大粒の涙が零れて落ちた。
「バーストフレア!」
僕の叫びと共に掌から放たれた光が、ナナイの心臓を吹き飛ばす。
掌にぴたぴたと振りかかる、ナナイの温もり。
僕の首に巻き付いていた触手が力を失い、ぱらぱらと床に落ちた。
「……シルカちゃん」
はあはあと肩を激しく上下させる僕の呼吸音に溶け込むように、ナナイの静かな声が聞こえた。
「……ありがとう」
ぼやけた視界の中に、ナナイの微笑み顔が、はっきりと浮かび上がっていた。
ナナイはゆっくりと、僕の腕の中に倒れていった。
僕はそれを抱き止めて、大声で泣いた。
ブランがそっと僕の肩に手を置く。
イオンが僕の顔を覗き込んで、何かを語りかけるような優しい視線を向けてくる。
それらを気にもせず、僕は頬を目一杯涙で濡らして泣き続けた。
──こうして、海賊王の宝探しの旅は幕を閉じた。
再び海底へと沈んでいく神殿を眼下に納めながら、僕たちは幻獣に乗って街へと帰還した。
ブランも、イオンも、道中は何も言わなかった。ただゆっくり休めと言うように、僕を宿の部屋に残して何処かへと出かけていった。
僕は、ベッドの上に横になり、ひたすら眠っていた。
思い浮かぶのは、かつて僕が殺してしまった妹のこと。
あの時もこんな風に泣いていたな……と思いつつ。
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