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第128話 店主、弟子を取る
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「あのね、ラフィナちゃん」
僕は静かにカウンターから出て、ラフィナちゃんと目線の高さを合わせた。
「さっきも言ったけど、僕はよろず屋の店主が本業なんだ。錬金術師の弟子を取るつもりはないんだよ」
「わたし、お店の手伝いもします! お料理もできるし、お掃除だってお洗濯だってできます! 錬金術を教えて頂くのは手が空いた時でいいんです! どうか、弟子にして下さい!」
ラフィナちゃんは全く引かなかった。
僕は頭を掻いて、彼女に尋ねた。
「店の手伝いって……君、まだ子供だよね? そんなことを一人で決めちゃって、御両親は何も言わないの?」
「……わたし、両親はいません。両親は冒険者で、私が小さい時に魔物に……」
ラフィナちゃんの言葉に、僕は口を閉ざした。
彼女のように、両親がいない子供というのは世間的には珍しいものではない。そういう子供はストリートチルドレンとして街のあちこちで小さな仕事をしていたり、孤児院で大勢の同じ境遇の子供と一緒に生活していることを僕は知っている。
彼女はどちらかというと前者に近いのだろう。家事ができるということは、何処かでメイドの仕事をしていたのかもしれない。
「だから、錬金術師として早く一人前になって、世界を歩けるようになりたいんです」
……成程。それで僕の所に来たというわけか。
彼女が一時の気の迷いや半端な思いで此処に来たわけではないということは分かった。
問題は、僕が彼女を此処に置くかどうかだ。
彼女の身の上を聞いた限りでは、彼女には住む家はなさそうに思える。そんな彼女を弟子に取るとなると、必然的に僕の家に住まわせることになる。
年端もいかない女の子と、二人暮らし。食事も、睡眠も、風呂だって一緒になるかもしれない。
僕は子供を相手に劣情を抱くような趣味はないが、僕を知る人たちに何かいらぬ誤解を与えるかもしれない。
それは、正直言って御免だ。僕は平穏に暮らしたい。
僕は色々考えた末に、口を開いた。
「錬金術の腕を磨くのに錬金術師の弟子になるのは良いことだと思うよ。でも、それは僕じゃなくてもいいんじゃないかな」
世界を歩く錬金術師を目指しているのなら、此処で引き篭もってる僕の弟子になるよりも、冒険者ギルドで錬金術ができる冒険者を探して面倒を見てもらった方が何倍も彼女のためになる気がするのだ。
僕の平穏な暮らしも保たれるし、その方がずっといい。
そう伝えると、ラフィナちゃんは首を振った。
「わたしは、旅ができるほど体を鍛えてません。それに、錬金術ができる冒険者の人ってなかなかいないっていいますし……それだと、いつになっても錬金術の勉強ができません。わたしは、一日でも早く、錬金術師として腕を磨きたいんです」
この子、歳の割に結構頭がいい。社会の実情というものをよく知っている。
「わたしは決心したんです。師匠の下で錬金術の勉強をして、一人前の錬金術師になるって。……だから、お願いです。わたしを弟子にして下さい」
「…………」
僕は下を向いた。
──駄目だ、この子は考えを曲げそうにないし、僕の話術では説得できそうにない。
どうして、僕は、いつも。
相手に押されて、相手の言い分を飲んでしまうのだろう?
「……僕は子供だからって甘やかさない主義だ。厳しいのは覚悟してもらうよ」
僕は顔を上げて、ラフィナちゃんの目を見据えて、言った。
「ラフィナちゃん、特別だからね? 君を弟子に取る。僕と一緒に生活することになるんだから、店の仕事も手伝ってもらうからね」
「はい!」
ラフィナちゃんは顔を輝かせて、深々と頭を下げた。
「これから宜しくお願いします、師匠!」
──かくして、僕に小さな錬金術師の弟子ができた。
彼女のための寝床を用意してやらなくちゃ。後は、生活に必要な雑貨なども。
後でまとめて街の商店で買って来なければ、と僕は壁に掛かった時計を見ながらそう思ったのだった。
僕は静かにカウンターから出て、ラフィナちゃんと目線の高さを合わせた。
「さっきも言ったけど、僕はよろず屋の店主が本業なんだ。錬金術師の弟子を取るつもりはないんだよ」
「わたし、お店の手伝いもします! お料理もできるし、お掃除だってお洗濯だってできます! 錬金術を教えて頂くのは手が空いた時でいいんです! どうか、弟子にして下さい!」
ラフィナちゃんは全く引かなかった。
僕は頭を掻いて、彼女に尋ねた。
「店の手伝いって……君、まだ子供だよね? そんなことを一人で決めちゃって、御両親は何も言わないの?」
「……わたし、両親はいません。両親は冒険者で、私が小さい時に魔物に……」
ラフィナちゃんの言葉に、僕は口を閉ざした。
彼女のように、両親がいない子供というのは世間的には珍しいものではない。そういう子供はストリートチルドレンとして街のあちこちで小さな仕事をしていたり、孤児院で大勢の同じ境遇の子供と一緒に生活していることを僕は知っている。
彼女はどちらかというと前者に近いのだろう。家事ができるということは、何処かでメイドの仕事をしていたのかもしれない。
「だから、錬金術師として早く一人前になって、世界を歩けるようになりたいんです」
……成程。それで僕の所に来たというわけか。
彼女が一時の気の迷いや半端な思いで此処に来たわけではないということは分かった。
問題は、僕が彼女を此処に置くかどうかだ。
彼女の身の上を聞いた限りでは、彼女には住む家はなさそうに思える。そんな彼女を弟子に取るとなると、必然的に僕の家に住まわせることになる。
年端もいかない女の子と、二人暮らし。食事も、睡眠も、風呂だって一緒になるかもしれない。
僕は子供を相手に劣情を抱くような趣味はないが、僕を知る人たちに何かいらぬ誤解を与えるかもしれない。
それは、正直言って御免だ。僕は平穏に暮らしたい。
僕は色々考えた末に、口を開いた。
「錬金術の腕を磨くのに錬金術師の弟子になるのは良いことだと思うよ。でも、それは僕じゃなくてもいいんじゃないかな」
世界を歩く錬金術師を目指しているのなら、此処で引き篭もってる僕の弟子になるよりも、冒険者ギルドで錬金術ができる冒険者を探して面倒を見てもらった方が何倍も彼女のためになる気がするのだ。
僕の平穏な暮らしも保たれるし、その方がずっといい。
そう伝えると、ラフィナちゃんは首を振った。
「わたしは、旅ができるほど体を鍛えてません。それに、錬金術ができる冒険者の人ってなかなかいないっていいますし……それだと、いつになっても錬金術の勉強ができません。わたしは、一日でも早く、錬金術師として腕を磨きたいんです」
この子、歳の割に結構頭がいい。社会の実情というものをよく知っている。
「わたしは決心したんです。師匠の下で錬金術の勉強をして、一人前の錬金術師になるって。……だから、お願いです。わたしを弟子にして下さい」
「…………」
僕は下を向いた。
──駄目だ、この子は考えを曲げそうにないし、僕の話術では説得できそうにない。
どうして、僕は、いつも。
相手に押されて、相手の言い分を飲んでしまうのだろう?
「……僕は子供だからって甘やかさない主義だ。厳しいのは覚悟してもらうよ」
僕は顔を上げて、ラフィナちゃんの目を見据えて、言った。
「ラフィナちゃん、特別だからね? 君を弟子に取る。僕と一緒に生活することになるんだから、店の仕事も手伝ってもらうからね」
「はい!」
ラフィナちゃんは顔を輝かせて、深々と頭を下げた。
「これから宜しくお願いします、師匠!」
──かくして、僕に小さな錬金術師の弟子ができた。
彼女のための寝床を用意してやらなくちゃ。後は、生活に必要な雑貨なども。
後でまとめて街の商店で買って来なければ、と僕は壁に掛かった時計を見ながらそう思ったのだった。
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