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第129話 弟子との暮らし
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僕の弟子になったラフィナは、仕事熱心で探究心の強い子だった。
呼び捨てになってるって? これは彼女の希望でもあるんだよ。弟子なのにちゃん付けはおかしいから呼び捨てにしてほしいって彼女が言ったのだ。
彼女は昼間は僕の店で働き、夜になったら錬金術の勉強に熱心に取り組んだ。
その必要はないのに食事の準備までしてくれた。師匠の面倒を見るのは弟子の当然の仕事ですとか言って、びっくりするような御馳走を作ってくれたよ。
たったあれだけの材料でどうやってあんな食事を作ったのか……少なくとも彼女の料理の腕は僕よりも上だ。それは素直に認めよう。
まだ十一歳だというが、その辺の大人よりも余程しっかりしている。
大人として恥ずかしくないように接しないとな、と、彼女と暮らしているうちに僕の背筋も伸びていったのだった。
かちゃかちゃと杖を組み立てている僕の手元を、ラフィナがじっと見つめている。
僕は店を営業しながら商品作りをすることがよくある。その作業を見ることも、ラフィナにとっては錬金術の勉強の一環になるのだ。
彼女はまだ物を作ったりといったことはできないが、こうして僕のやることを見るのは彼女にとってためになると僕は思っている。
無論、彼女から質問をされたらそれに答えるのも師匠としての大切な務めだ。
「師匠、どうして魔術師の杖は鍛冶師が作るのと錬金術師が作るのとでは性能が違うんですか?」
「それはね、錬金術師が作る物には魔力が篭るからだよ」
スプライトの核で作った宝玉を杖の先端に填めて、僕はラフィナの目の前にそれを置いた。
「魔力の篭った杖には、魔術師が操る魔術の効果を高める力がある。僅かな力ではあるけど、戦場ではその僅かな差が戦局を左右するんだ」
無論、僕が持っているミスリルの杖のように例外もある。一概にそうだとは言えないのだが。
とりあえず、杖を選ぶのに迷うようだったら、錬金術師が作った品を選べばまずハズレがないということを覚えておくといい。
「杖を作る時は、魔力の込め方ひとつで杖の性能が変わるんだということを念頭に置くんだよ。いい加減に魔力を込めたらいい加減な杖ができる。そんな失敗作を世に出すわけにはいかないからな」
「はい、師匠」
別のパーツを組み立てて、杖の本体に填める。
最後に錬金術でパーツが外れないように接着して、完成だ。
値札を付けて、ラフィナに渡す。
「これ、売り場に出して」
「はい」
ラフィナは僕から杖を受け取って、売り物の杖を置いてある棚へと持って行った。
さて……まだ商品作りをする余裕がありそうだな。
ポーションの作り置きでもするかな。
僕は調合用の道具一式を箱の中から薬草と一緒に取り出して、作業台の上に置いた。
ポーション精製は、錬金術の中では初歩的な技術に入る。ラフィナに物作りを教えるなら、まずはこの辺りから教えていくのが良いだろう。
ラフィナは料理ができるから火の扱いには慣れてるし、物覚えが良いから、手順をしっかり教えればすぐにできるようになるはずだ。
「ラフィナ。これからポーションを作るけど、やってみるか?」
「はい!」
元気の良い返事をするラフィナ。
錬金術を学ぶ時の彼女は本当に楽しそうだ。
「じゃあ、此処に座って」
僕は席を立ち、ラフィナをそこに座らせた。
「まず、使う薬草だけど──」
小さな弟子と過ごす時間は穏やかに過ぎていく。
こういう暮らしをするのも、案外悪くはないものだね。
呼び捨てになってるって? これは彼女の希望でもあるんだよ。弟子なのにちゃん付けはおかしいから呼び捨てにしてほしいって彼女が言ったのだ。
彼女は昼間は僕の店で働き、夜になったら錬金術の勉強に熱心に取り組んだ。
その必要はないのに食事の準備までしてくれた。師匠の面倒を見るのは弟子の当然の仕事ですとか言って、びっくりするような御馳走を作ってくれたよ。
たったあれだけの材料でどうやってあんな食事を作ったのか……少なくとも彼女の料理の腕は僕よりも上だ。それは素直に認めよう。
まだ十一歳だというが、その辺の大人よりも余程しっかりしている。
大人として恥ずかしくないように接しないとな、と、彼女と暮らしているうちに僕の背筋も伸びていったのだった。
かちゃかちゃと杖を組み立てている僕の手元を、ラフィナがじっと見つめている。
僕は店を営業しながら商品作りをすることがよくある。その作業を見ることも、ラフィナにとっては錬金術の勉強の一環になるのだ。
彼女はまだ物を作ったりといったことはできないが、こうして僕のやることを見るのは彼女にとってためになると僕は思っている。
無論、彼女から質問をされたらそれに答えるのも師匠としての大切な務めだ。
「師匠、どうして魔術師の杖は鍛冶師が作るのと錬金術師が作るのとでは性能が違うんですか?」
「それはね、錬金術師が作る物には魔力が篭るからだよ」
スプライトの核で作った宝玉を杖の先端に填めて、僕はラフィナの目の前にそれを置いた。
「魔力の篭った杖には、魔術師が操る魔術の効果を高める力がある。僅かな力ではあるけど、戦場ではその僅かな差が戦局を左右するんだ」
無論、僕が持っているミスリルの杖のように例外もある。一概にそうだとは言えないのだが。
とりあえず、杖を選ぶのに迷うようだったら、錬金術師が作った品を選べばまずハズレがないということを覚えておくといい。
「杖を作る時は、魔力の込め方ひとつで杖の性能が変わるんだということを念頭に置くんだよ。いい加減に魔力を込めたらいい加減な杖ができる。そんな失敗作を世に出すわけにはいかないからな」
「はい、師匠」
別のパーツを組み立てて、杖の本体に填める。
最後に錬金術でパーツが外れないように接着して、完成だ。
値札を付けて、ラフィナに渡す。
「これ、売り場に出して」
「はい」
ラフィナは僕から杖を受け取って、売り物の杖を置いてある棚へと持って行った。
さて……まだ商品作りをする余裕がありそうだな。
ポーションの作り置きでもするかな。
僕は調合用の道具一式を箱の中から薬草と一緒に取り出して、作業台の上に置いた。
ポーション精製は、錬金術の中では初歩的な技術に入る。ラフィナに物作りを教えるなら、まずはこの辺りから教えていくのが良いだろう。
ラフィナは料理ができるから火の扱いには慣れてるし、物覚えが良いから、手順をしっかり教えればすぐにできるようになるはずだ。
「ラフィナ。これからポーションを作るけど、やってみるか?」
「はい!」
元気の良い返事をするラフィナ。
錬金術を学ぶ時の彼女は本当に楽しそうだ。
「じゃあ、此処に座って」
僕は席を立ち、ラフィナをそこに座らせた。
「まず、使う薬草だけど──」
小さな弟子と過ごす時間は穏やかに過ぎていく。
こういう暮らしをするのも、案外悪くはないものだね。
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