アメミヤのよろず屋

高柳神羅

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第130話 店主の心配事

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 僕の教えの甲斐もあって、ラフィナは何とかポーションを一人で作れるようになった。
 まだ手つきが若干おぼつかないところがあるけれど、それは数をこなしているうちに慣れるだろう。
「じゃあ、三十本。作ってね」
「はい、師匠」
 ラフィナに指示を出し、僕は売り場に商品を出しに向かった。
 その時だった。
 店全体がぐらりと大きく揺れ、棚の品物がばらばらと落ちてきた。
 地震だ!
「ラフィナ、棚から離れて!」
 僕は抱えていた商品を床に置いて、激しい揺れに転びそうになりながらも何とか作業台のところにいるラフィナの元に辿り着いた。
 ラフィナを急いで棚の傍から離して、床にしゃがむように指示を出す。そしてその上に覆い被さり、彼女を落下物から守った。
 自分が痛い思いをしても、ラフィナを庇ってやらなければ。
 子供を持つ親の気持ちってこんななんだろうなと思いながら、僕はひたすら地震が収まるまで耐えた。
 カウンターのところでは、シルバーが大して慌ててもいない様子で顔を上げて店内の様子を見つめている。
 凄い心臓だね、フェンリルってのは。危険だって思わないのかな。

 地震は一分間ほど続き、店内を散々荒らして、収まった。

 ……ああ、店の中が目茶苦茶だ。
 僕の下から這い出して、ラフィナはびっくりしたように周囲を見回した。
「……凄い」
「……片付けなきゃね」
 僕は起き上がり、店内の惨状を目の当たりにして溜め息をついた。
 いつかもあった地震の時並みに酷い有様だ。
 棚から商品は残らず落ち、床に盛大に散らばっている。
 壊れているものはないが、その数が半端ではない。
 こりゃすぐには片付かないだろうなと思いつつ、ずれ動いた棚を元の位置に戻した。
「ラフィナ、商品を元の場所に戻して」
「はい」
 僕はラフィナと協力して、店の中を片付けていった。
 片付けながら、僕は胸中に生じた心配事のことを考えていた。
 大きな地震の後は、決まって新しいダンジョンが現れる。その調査協力依頼が来たらどうしようという懸念だ。
 ラフィナを残して店を留守にするわけにはいかないし、何より僕はダンジョンになんて行きたくはない。
 決めた。僕は絶対にこの店から動かないぞ。
「……届かない……」
「手が届くところだけ片付けてくれればいいよ」
 棚の上に向かって懸命に手を伸ばしているラフィナに声を掛け、僕は棚にポーションを並べ直していった。

 店内は、一時間ほどで綺麗に片付いた。
 案の定店は新しいダンジョンを探しに行こうとする冒険者たちで一杯になり、商品がよく売れて繁盛した。
 店が繁盛するだけなら、何も言うことはないんだけどね。
 ダンジョンに行こうなんて言い出す人が来ませんように。
 密かに願いながら、僕は客たちの相手に追われて店内を何度も往来する時間をしばらくの間過ごした。
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