130 / 176
第130話 店主の心配事
しおりを挟む
僕の教えの甲斐もあって、ラフィナは何とかポーションを一人で作れるようになった。
まだ手つきが若干おぼつかないところがあるけれど、それは数をこなしているうちに慣れるだろう。
「じゃあ、三十本。作ってね」
「はい、師匠」
ラフィナに指示を出し、僕は売り場に商品を出しに向かった。
その時だった。
店全体がぐらりと大きく揺れ、棚の品物がばらばらと落ちてきた。
地震だ!
「ラフィナ、棚から離れて!」
僕は抱えていた商品を床に置いて、激しい揺れに転びそうになりながらも何とか作業台のところにいるラフィナの元に辿り着いた。
ラフィナを急いで棚の傍から離して、床にしゃがむように指示を出す。そしてその上に覆い被さり、彼女を落下物から守った。
自分が痛い思いをしても、ラフィナを庇ってやらなければ。
子供を持つ親の気持ちってこんななんだろうなと思いながら、僕はひたすら地震が収まるまで耐えた。
カウンターのところでは、シルバーが大して慌ててもいない様子で顔を上げて店内の様子を見つめている。
凄い心臓だね、フェンリルってのは。危険だって思わないのかな。
地震は一分間ほど続き、店内を散々荒らして、収まった。
……ああ、店の中が目茶苦茶だ。
僕の下から這い出して、ラフィナはびっくりしたように周囲を見回した。
「……凄い」
「……片付けなきゃね」
僕は起き上がり、店内の惨状を目の当たりにして溜め息をついた。
いつかもあった地震の時並みに酷い有様だ。
棚から商品は残らず落ち、床に盛大に散らばっている。
壊れているものはないが、その数が半端ではない。
こりゃすぐには片付かないだろうなと思いつつ、ずれ動いた棚を元の位置に戻した。
「ラフィナ、商品を元の場所に戻して」
「はい」
僕はラフィナと協力して、店の中を片付けていった。
片付けながら、僕は胸中に生じた心配事のことを考えていた。
大きな地震の後は、決まって新しいダンジョンが現れる。その調査協力依頼が来たらどうしようという懸念だ。
ラフィナを残して店を留守にするわけにはいかないし、何より僕はダンジョンになんて行きたくはない。
決めた。僕は絶対にこの店から動かないぞ。
「……届かない……」
「手が届くところだけ片付けてくれればいいよ」
棚の上に向かって懸命に手を伸ばしているラフィナに声を掛け、僕は棚にポーションを並べ直していった。
店内は、一時間ほどで綺麗に片付いた。
案の定店は新しいダンジョンを探しに行こうとする冒険者たちで一杯になり、商品がよく売れて繁盛した。
店が繁盛するだけなら、何も言うことはないんだけどね。
ダンジョンに行こうなんて言い出す人が来ませんように。
密かに願いながら、僕は客たちの相手に追われて店内を何度も往来する時間をしばらくの間過ごした。
まだ手つきが若干おぼつかないところがあるけれど、それは数をこなしているうちに慣れるだろう。
「じゃあ、三十本。作ってね」
「はい、師匠」
ラフィナに指示を出し、僕は売り場に商品を出しに向かった。
その時だった。
店全体がぐらりと大きく揺れ、棚の品物がばらばらと落ちてきた。
地震だ!
「ラフィナ、棚から離れて!」
僕は抱えていた商品を床に置いて、激しい揺れに転びそうになりながらも何とか作業台のところにいるラフィナの元に辿り着いた。
ラフィナを急いで棚の傍から離して、床にしゃがむように指示を出す。そしてその上に覆い被さり、彼女を落下物から守った。
自分が痛い思いをしても、ラフィナを庇ってやらなければ。
子供を持つ親の気持ちってこんななんだろうなと思いながら、僕はひたすら地震が収まるまで耐えた。
カウンターのところでは、シルバーが大して慌ててもいない様子で顔を上げて店内の様子を見つめている。
凄い心臓だね、フェンリルってのは。危険だって思わないのかな。
地震は一分間ほど続き、店内を散々荒らして、収まった。
……ああ、店の中が目茶苦茶だ。
僕の下から這い出して、ラフィナはびっくりしたように周囲を見回した。
「……凄い」
「……片付けなきゃね」
僕は起き上がり、店内の惨状を目の当たりにして溜め息をついた。
いつかもあった地震の時並みに酷い有様だ。
棚から商品は残らず落ち、床に盛大に散らばっている。
壊れているものはないが、その数が半端ではない。
こりゃすぐには片付かないだろうなと思いつつ、ずれ動いた棚を元の位置に戻した。
「ラフィナ、商品を元の場所に戻して」
「はい」
僕はラフィナと協力して、店の中を片付けていった。
片付けながら、僕は胸中に生じた心配事のことを考えていた。
大きな地震の後は、決まって新しいダンジョンが現れる。その調査協力依頼が来たらどうしようという懸念だ。
ラフィナを残して店を留守にするわけにはいかないし、何より僕はダンジョンになんて行きたくはない。
決めた。僕は絶対にこの店から動かないぞ。
「……届かない……」
「手が届くところだけ片付けてくれればいいよ」
棚の上に向かって懸命に手を伸ばしているラフィナに声を掛け、僕は棚にポーションを並べ直していった。
店内は、一時間ほどで綺麗に片付いた。
案の定店は新しいダンジョンを探しに行こうとする冒険者たちで一杯になり、商品がよく売れて繁盛した。
店が繁盛するだけなら、何も言うことはないんだけどね。
ダンジョンに行こうなんて言い出す人が来ませんように。
密かに願いながら、僕は客たちの相手に追われて店内を何度も往来する時間をしばらくの間過ごした。
0
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
Chivalry - 異国のサムライ達 -
稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか?
これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~
白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた!
もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する!
とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する!
ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか?
過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談
小説家になろうでも連載しています!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】悪の尋問令嬢、″捨てられ王子″の妻になる。
Y(ワイ)
ファンタジー
尋問を生業にする侯爵家に婿入りしたのは、恋愛戦略に敗れた腹黒王子。
白い結婚から始まる、腹黒VS腹黒の執着恋愛コメディ(シリアス有り)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる