138 / 176
第138話 VSリルマーダー
しおりを挟む
リルマーダーの鋏が左右からセイルさんを襲う。
セイルさんはそれを避け、至近距離からリルマーダーの目玉が並ぶ頭を狙って剣を振るった!
がきん!
固い音がして、剣の刃が弾かれる。
リルマーダーの体は固い甲殻に覆われている。半端な力ではダメージを与えることはできないのだ。
リルマーダーが口を開いてセイルさんに咬み付こうとする。
セイルさんは舌打ちをすると、その場から飛び退きながらリルマーダーの口めがけて魔術を撃った。
「ファイアボール!」
ボンッ、とリルマーダーの口の中で炎が弾ける。
リルマーダーは声を上げてその場を後退した。
「エンチャント・ウィンド!」
セイルさんの戦いを見ていたソフィアさんが持っている短剣に魔力を込める。
淡い緑色のオーラを纏った短剣を両手に構え、リルマーダーに向かって床を蹴った。
驚異的な跳躍力でリルマーダーの背中に飛び乗り、頭を狙って短剣を振り下ろす!
どがっ、と短剣がリルマーダーの頭に突き刺さる。びゅっと体液が噴き出て、リルマーダーの顔を伝って落ちた。
リルマーダーが吠えた。尻尾を振り上げて、ソフィアさんを上から振り落とそうと暴れた。
「ウィンドスラッシュ!」
セイルさんがリルマーダーの目を狙って魔術を撃つ。
風の刃はざくりとリルマーダーの目を切り裂いた。
しかし、目がひとつ潰れた程度ではリルマーダーは止まらない。鋏を振り上げ、セイルさんを挟み込もうとしてくる!
セイルさんは剣を盾にしてリルマーダーの鋏を受け止めた。
ぎりぎりと力比べが始まる。閉じようとする鋏を、セイルさんは全力で押し返そうとする。
そこに、ソフィアさんが放った魔術が直撃した!
「アイシクルランス!」
氷の槍が鋏の付け根に突き刺さる。衝撃で鋏の力が緩み、その隙にセイルさんは鋏を押し返した。
「ソフィア、強化魔術を!」
セイルさんの声に応えて、リルマーダーの上に乗っているソフィアさんが掌をセイルさんに向けて翳す。
「エンチャント・ウィンド!」
セイルさんの剣が光を纏う。
セイルさんは一歩踏み込み、鋏の付け根を狙って剣を一閃した!
剣は、鋏を切り飛ばした。ごどん、と鋏が落ち、体液が辺りに飛び散る。
続けて剣を返すように振るうセイルさん。
残っていたもう一方の鋏も両断され、床に落ちる。
鋏を斬られたことに怒ったのか、リルマーダーが牙を剥き出しにしてセイルさんめがけて突進してきた。
リルマーダーの頭から短剣を抜いて、ソフィアさんがリルマーダーから飛び降りる。
セイルさんは横に大きく跳び、リルマーダーの突進をかわした。
リルマーダーは勢い良く壁に突っ込んでいき、ぶつかった。どしんと大きな音がして、天井からぱらぱらと土の欠片が落ちてきた。
リルマーダーが反転する。
すぐ傍にいた僕たちの姿が、リルマーダーの目に映る。
僕には、それがリルマーダーが僕たちのことを横目で見ているように思えた。
「ラフィナ、走って!」
僕はラフィナの背中を思い切り押した。
ラフィナが向こうの壁に向かって走る。
リルマーダーが尻尾を思い切り振り上げ、僕めがけて振り下ろしてくる!
「!」
僕はその場を飛び退いた。
僕が立っていた位置に、尻尾の毒針が突き刺さる。
僕は床の上に突っ伏すように転んだ。
早く……起きないと!
恐怖に竦みそうになる体を懸命に動かしてすぐに起き上がり、駆け出す。
振り下ろされた尻尾の毒針が、僕の背中のすぐ後ろを引っ掻いた。
「ファイアボール!」
セイルさんが尻尾めがけて火球を撃つ。
火球は毒針に命中し、先端を吹き飛ばした。
「エンチャント・ウィンド!」
ソフィアさんの魔術がセイルさんの剣に力を与える。
セイルさんは剣を構えてリルマーダーの真正面めがけて走った。
目の前まで来たところで床を蹴り、リルマーダーの背に飛び乗る。
そして、背中の中心──心臓めがけて、剣を力一杯突き落とす!
剣の刃はリルマーダーの甲殻を貫き、体内に深く潜り込む。
体液が派手に散り、リルマーダーはギュエエッと叫んだ。
尻尾がびくんと痙攣して、床に落ちていく。
そして、体も。
力を失い、ずしゃりと潰れるように倒れていった。
「…………」
ずる、とリルマーダーの背から剣を抜き、静かに床に飛び降りるセイルさん。
ソフィアさんも油断なくリルマーダーを見据えながら、近付いていく。
目を覗き込み、頭に触れて。
納得したように武器を鞘に収めて、僕たちのいる方に振り向いた。
「……もう大丈夫。倒したわ」
「…………」
僕はラフィナを抱いたまま、ほうっと息を吐いた。
背中がしっとりと濡れている。さっきの恐怖を感じた一瞬で、大量の冷や汗をかいたらしい。
さっきは冗談抜きで危なかったもんな。何とか体が動いて良かったよ。
ソフィアさんは僕たちの方に戻ってきながら、怪訝そうに言った。
「貴方、魔術使えるんでしょ? 逃げるよりも狙撃した方が早かったと思うんだけど」
「僕にはそんな度胸はないよ!」
僕はかぶりを振った。
いくら魔術が使えようが、唐突に目の前に湧いた恐怖に立ち向かえるほど心臓が強いわけではないのだ。あの場面ではラフィナを逃がすこととその場から逃げることで頭の中は一杯だったから、魔術で対抗しようなんて考えは全くなかった。
弱虫だって? 弱虫でいいよ、僕はただのよろず屋の店主なんだから、自分から好んで危険なことをするつもりはない。
セイルさんは僕たちを見て笑っていた。
「シルカさんたちを護衛するのが我々の務めだ。いいじゃないか、シルカさんはちゃんと自分の身を守ったんだから」
「……まあ、そうね」
ふっと笑みを零すソフィアさん。
彼女は使っていない短剣を鞘から抜いて光を点し、僕たちに言った。
「それじゃあ、無事に魔物も討伐できたことだし、地上に帰りましょう。冒険者ギルドに、分かったことを伝えないとね」
こうして何とかダンジョンの調査を終えた僕たちは、地上に戻った。
ダンジョンを出た時には既に日は暮れかけており、森は茜色に染まって薄暗くなりかけていた。
近場だというのに、随分遠くまで来たような気分だ。
早く家に戻って、平穏な空気に包まれたい。店を見て、いつもの日常に戻ってきたんだという実感をしたい。
そう思いながら、僕はラフィナの手を引いて森の中を歩いていった。
セイルさんはそれを避け、至近距離からリルマーダーの目玉が並ぶ頭を狙って剣を振るった!
がきん!
固い音がして、剣の刃が弾かれる。
リルマーダーの体は固い甲殻に覆われている。半端な力ではダメージを与えることはできないのだ。
リルマーダーが口を開いてセイルさんに咬み付こうとする。
セイルさんは舌打ちをすると、その場から飛び退きながらリルマーダーの口めがけて魔術を撃った。
「ファイアボール!」
ボンッ、とリルマーダーの口の中で炎が弾ける。
リルマーダーは声を上げてその場を後退した。
「エンチャント・ウィンド!」
セイルさんの戦いを見ていたソフィアさんが持っている短剣に魔力を込める。
淡い緑色のオーラを纏った短剣を両手に構え、リルマーダーに向かって床を蹴った。
驚異的な跳躍力でリルマーダーの背中に飛び乗り、頭を狙って短剣を振り下ろす!
どがっ、と短剣がリルマーダーの頭に突き刺さる。びゅっと体液が噴き出て、リルマーダーの顔を伝って落ちた。
リルマーダーが吠えた。尻尾を振り上げて、ソフィアさんを上から振り落とそうと暴れた。
「ウィンドスラッシュ!」
セイルさんがリルマーダーの目を狙って魔術を撃つ。
風の刃はざくりとリルマーダーの目を切り裂いた。
しかし、目がひとつ潰れた程度ではリルマーダーは止まらない。鋏を振り上げ、セイルさんを挟み込もうとしてくる!
セイルさんは剣を盾にしてリルマーダーの鋏を受け止めた。
ぎりぎりと力比べが始まる。閉じようとする鋏を、セイルさんは全力で押し返そうとする。
そこに、ソフィアさんが放った魔術が直撃した!
「アイシクルランス!」
氷の槍が鋏の付け根に突き刺さる。衝撃で鋏の力が緩み、その隙にセイルさんは鋏を押し返した。
「ソフィア、強化魔術を!」
セイルさんの声に応えて、リルマーダーの上に乗っているソフィアさんが掌をセイルさんに向けて翳す。
「エンチャント・ウィンド!」
セイルさんの剣が光を纏う。
セイルさんは一歩踏み込み、鋏の付け根を狙って剣を一閃した!
剣は、鋏を切り飛ばした。ごどん、と鋏が落ち、体液が辺りに飛び散る。
続けて剣を返すように振るうセイルさん。
残っていたもう一方の鋏も両断され、床に落ちる。
鋏を斬られたことに怒ったのか、リルマーダーが牙を剥き出しにしてセイルさんめがけて突進してきた。
リルマーダーの頭から短剣を抜いて、ソフィアさんがリルマーダーから飛び降りる。
セイルさんは横に大きく跳び、リルマーダーの突進をかわした。
リルマーダーは勢い良く壁に突っ込んでいき、ぶつかった。どしんと大きな音がして、天井からぱらぱらと土の欠片が落ちてきた。
リルマーダーが反転する。
すぐ傍にいた僕たちの姿が、リルマーダーの目に映る。
僕には、それがリルマーダーが僕たちのことを横目で見ているように思えた。
「ラフィナ、走って!」
僕はラフィナの背中を思い切り押した。
ラフィナが向こうの壁に向かって走る。
リルマーダーが尻尾を思い切り振り上げ、僕めがけて振り下ろしてくる!
「!」
僕はその場を飛び退いた。
僕が立っていた位置に、尻尾の毒針が突き刺さる。
僕は床の上に突っ伏すように転んだ。
早く……起きないと!
恐怖に竦みそうになる体を懸命に動かしてすぐに起き上がり、駆け出す。
振り下ろされた尻尾の毒針が、僕の背中のすぐ後ろを引っ掻いた。
「ファイアボール!」
セイルさんが尻尾めがけて火球を撃つ。
火球は毒針に命中し、先端を吹き飛ばした。
「エンチャント・ウィンド!」
ソフィアさんの魔術がセイルさんの剣に力を与える。
セイルさんは剣を構えてリルマーダーの真正面めがけて走った。
目の前まで来たところで床を蹴り、リルマーダーの背に飛び乗る。
そして、背中の中心──心臓めがけて、剣を力一杯突き落とす!
剣の刃はリルマーダーの甲殻を貫き、体内に深く潜り込む。
体液が派手に散り、リルマーダーはギュエエッと叫んだ。
尻尾がびくんと痙攣して、床に落ちていく。
そして、体も。
力を失い、ずしゃりと潰れるように倒れていった。
「…………」
ずる、とリルマーダーの背から剣を抜き、静かに床に飛び降りるセイルさん。
ソフィアさんも油断なくリルマーダーを見据えながら、近付いていく。
目を覗き込み、頭に触れて。
納得したように武器を鞘に収めて、僕たちのいる方に振り向いた。
「……もう大丈夫。倒したわ」
「…………」
僕はラフィナを抱いたまま、ほうっと息を吐いた。
背中がしっとりと濡れている。さっきの恐怖を感じた一瞬で、大量の冷や汗をかいたらしい。
さっきは冗談抜きで危なかったもんな。何とか体が動いて良かったよ。
ソフィアさんは僕たちの方に戻ってきながら、怪訝そうに言った。
「貴方、魔術使えるんでしょ? 逃げるよりも狙撃した方が早かったと思うんだけど」
「僕にはそんな度胸はないよ!」
僕はかぶりを振った。
いくら魔術が使えようが、唐突に目の前に湧いた恐怖に立ち向かえるほど心臓が強いわけではないのだ。あの場面ではラフィナを逃がすこととその場から逃げることで頭の中は一杯だったから、魔術で対抗しようなんて考えは全くなかった。
弱虫だって? 弱虫でいいよ、僕はただのよろず屋の店主なんだから、自分から好んで危険なことをするつもりはない。
セイルさんは僕たちを見て笑っていた。
「シルカさんたちを護衛するのが我々の務めだ。いいじゃないか、シルカさんはちゃんと自分の身を守ったんだから」
「……まあ、そうね」
ふっと笑みを零すソフィアさん。
彼女は使っていない短剣を鞘から抜いて光を点し、僕たちに言った。
「それじゃあ、無事に魔物も討伐できたことだし、地上に帰りましょう。冒険者ギルドに、分かったことを伝えないとね」
こうして何とかダンジョンの調査を終えた僕たちは、地上に戻った。
ダンジョンを出た時には既に日は暮れかけており、森は茜色に染まって薄暗くなりかけていた。
近場だというのに、随分遠くまで来たような気分だ。
早く家に戻って、平穏な空気に包まれたい。店を見て、いつもの日常に戻ってきたんだという実感をしたい。
そう思いながら、僕はラフィナの手を引いて森の中を歩いていった。
0
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
Chivalry - 異国のサムライ達 -
稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか?
これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~
白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた!
もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する!
とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する!
ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか?
過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談
小説家になろうでも連載しています!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】悪の尋問令嬢、″捨てられ王子″の妻になる。
Y(ワイ)
ファンタジー
尋問を生業にする侯爵家に婿入りしたのは、恋愛戦略に敗れた腹黒王子。
白い結婚から始まる、腹黒VS腹黒の執着恋愛コメディ(シリアス有り)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる