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第140話 産業祭
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僕の心配を他所に、その日は朝から雲ひとつない快晴だった。
朝ゆったりと起床して朝飯を食べて、身支度を整えた僕とラフィナは、早速家を出て祭が開催されている会場へと向かった。
会場は街の中心にある大きな広場、そこに設けられていた。
大小様々な屋台が並んでいる。そこかしこから人を呼び込む威勢の良い掛け声がしており、美味しそうな匂いも漂ってくる。
朝飯は食べたけど、つい食べたくなる匂いだね。
客はそこそこおり、人気と思わしき屋台には既に行列ができていた。
「賑わってますね」
「年に一度のイベントだからね」
薬草を販売している店の傍を通りかかったので、覗いてみる。
ハイポーションの材料になる薬草が普段買い付けている値段の半分の価格で売られていたのを見つけ、思わず小躍りしたくなった。
薬草は早速購入した。普段の半額なら迷わず買いでしょ。
その他の薬草も品質の割に安かったので、目についたものをどんどん購入していった。
ただでさえ安いのにチラシを見せれば更に安くなるんだもの、このチャンスは活用しなきゃ損だよ。
会場に来てまだ十分も経っていないというのに、僕の荷物は買った薬草で一杯になっていた。
「師匠……凄い量ですね」
僕の格好を見てラフィナが若干呆れたような声を出している。
僕は緩んでいた頬を引き締めて、言った。
「商品の原価は安く抑える! 商売人の基本だよ」
「……持ち帰れない量になる前に節度を持って下さいね」
……そんなに大量に買ってるつもりはないんだけどな。
薬草を仕入れて満足した僕は、近くの屋台から漂ってくる匂いを嗅ぎながらラフィナの肩を叩いた。
「ラフィナ、そこでホワイトチキンの串焼き売ってるけど食べる?」
「はい。食べたいです」
ぱっ、とラフィナの表情が明るくなる。
せっかくの祭だし、少しは料理も楽しまないとね。
ホワイトチキンの串焼きは、一本一ダイルで売っていた。
街の屋台では一本二ダイルとかするから、そう考えると安いね。
屋台の店主に代金を払い、焼きたての串焼きを受け取る。
早速かぶりつくと、炭火で焼いたならではの肉の旨味が口一杯に広がった。
「美味しい!」
ラフィナは大喜びで串焼きを頬張っている。
歳の割に大人びてる子だなって思ってたけど、歳相応の子供らしいところもちゃんとあるんじゃないか。
彼女の様子を微笑ましく眺めながら串焼きを頬張っていると。
『ねえ、そこの薬草を大量に持ってるお兄さん』
甲高い少女の声が、何処からか話しかけてきた。
僕は口をもごもごと動かしながら辺りを見回した。
周囲には屋台を見て回る大人の客と屋台を経営する店主がいるが、少女の声を発しそうな存在はない。
気のせいか?
僕は視線を前方に戻した。
すると、再び少女の声が聞こえた。
『こっちよ、こっち。屋根のない店の、籠の中』
屋根のない店?
僕は少女の声が言う屋根のない店を探した。
それは、屋台の間に挟まるようにして小さく営業していた行商人の店だった。
何かの瓶詰めや乾燥した香草など、一風変わった商品を扱っている。
それらの商品が並んでいる中に小さな籠があり、その中に一本の植物が入っていた。
人型の根っこが特徴的な植物だ。大きさは人参ほどで、やや萎れた葉っぱが付いている。
籠の中……って、今の声はこの植物が?
『お願い。わたしを此処から助けて』
訝っていると、少女の声は切実に僕に訴えてきた。
人の言葉を話す植物。
僕はしばし考えを巡らせて──その植物の正体が何であるのかに気が付いた。
僕は串焼きを食べているラフィナをその場に残して、その植物の傍に近付いていった。
朝ゆったりと起床して朝飯を食べて、身支度を整えた僕とラフィナは、早速家を出て祭が開催されている会場へと向かった。
会場は街の中心にある大きな広場、そこに設けられていた。
大小様々な屋台が並んでいる。そこかしこから人を呼び込む威勢の良い掛け声がしており、美味しそうな匂いも漂ってくる。
朝飯は食べたけど、つい食べたくなる匂いだね。
客はそこそこおり、人気と思わしき屋台には既に行列ができていた。
「賑わってますね」
「年に一度のイベントだからね」
薬草を販売している店の傍を通りかかったので、覗いてみる。
ハイポーションの材料になる薬草が普段買い付けている値段の半分の価格で売られていたのを見つけ、思わず小躍りしたくなった。
薬草は早速購入した。普段の半額なら迷わず買いでしょ。
その他の薬草も品質の割に安かったので、目についたものをどんどん購入していった。
ただでさえ安いのにチラシを見せれば更に安くなるんだもの、このチャンスは活用しなきゃ損だよ。
会場に来てまだ十分も経っていないというのに、僕の荷物は買った薬草で一杯になっていた。
「師匠……凄い量ですね」
僕の格好を見てラフィナが若干呆れたような声を出している。
僕は緩んでいた頬を引き締めて、言った。
「商品の原価は安く抑える! 商売人の基本だよ」
「……持ち帰れない量になる前に節度を持って下さいね」
……そんなに大量に買ってるつもりはないんだけどな。
薬草を仕入れて満足した僕は、近くの屋台から漂ってくる匂いを嗅ぎながらラフィナの肩を叩いた。
「ラフィナ、そこでホワイトチキンの串焼き売ってるけど食べる?」
「はい。食べたいです」
ぱっ、とラフィナの表情が明るくなる。
せっかくの祭だし、少しは料理も楽しまないとね。
ホワイトチキンの串焼きは、一本一ダイルで売っていた。
街の屋台では一本二ダイルとかするから、そう考えると安いね。
屋台の店主に代金を払い、焼きたての串焼きを受け取る。
早速かぶりつくと、炭火で焼いたならではの肉の旨味が口一杯に広がった。
「美味しい!」
ラフィナは大喜びで串焼きを頬張っている。
歳の割に大人びてる子だなって思ってたけど、歳相応の子供らしいところもちゃんとあるんじゃないか。
彼女の様子を微笑ましく眺めながら串焼きを頬張っていると。
『ねえ、そこの薬草を大量に持ってるお兄さん』
甲高い少女の声が、何処からか話しかけてきた。
僕は口をもごもごと動かしながら辺りを見回した。
周囲には屋台を見て回る大人の客と屋台を経営する店主がいるが、少女の声を発しそうな存在はない。
気のせいか?
僕は視線を前方に戻した。
すると、再び少女の声が聞こえた。
『こっちよ、こっち。屋根のない店の、籠の中』
屋根のない店?
僕は少女の声が言う屋根のない店を探した。
それは、屋台の間に挟まるようにして小さく営業していた行商人の店だった。
何かの瓶詰めや乾燥した香草など、一風変わった商品を扱っている。
それらの商品が並んでいる中に小さな籠があり、その中に一本の植物が入っていた。
人型の根っこが特徴的な植物だ。大きさは人参ほどで、やや萎れた葉っぱが付いている。
籠の中……って、今の声はこの植物が?
『お願い。わたしを此処から助けて』
訝っていると、少女の声は切実に僕に訴えてきた。
人の言葉を話す植物。
僕はしばし考えを巡らせて──その植物の正体が何であるのかに気が付いた。
僕は串焼きを食べているラフィナをその場に残して、その植物の傍に近付いていった。
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