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第141話 マンドラゴラとの取引
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マンドラゴラ。
錬金術を嗜む者にとっては馴染み深く、数々の錬金薬の材料になる植物だ。
錬金術師以外の人間の間では、植わっている地面から引き抜くと聞いた者を絶命させる悲鳴を上げる植物として有名な存在だろう。
適度に魔力を含んでおり、魔力の弱い人間には人間の女性の姿に見えるらしい。僕にはただの根っこにしか見えないが。
そんな植物が、何故僕に話しかけてきたのだろう。
僕は籠の前にしゃがみ、マンドラゴラをじっと見つめた。
「ねえ、君──」
『声に出さなくても言葉は通じるわ。これはテレパシーだから』
『あ、そう?』
僕は脳内で言葉を返した。
マンドラゴラに話しかけている姿を他人が見たら変な奴だと思われていただろうから、思念だけで会話ができるのは有難かった。
僕はマンドラゴラに尋ねた。
『君、何で僕に声を掛けたの? 助けてくれってどういうこと?』
『何でって……貴方、目立ってるもの。そんなに大量の薬草を持って』
……そんなに目立つ風貌なのだろうか。今の僕は。
そんなに薬草を買い漁ったつもりはないんだけどなぁ。
まあいいや。気にしないでおこう。
『そっか……で、助けてくれっていうのは?』
『わたし、このままだと薬の材料にされちゃうもの。まだ死にたくないわ』
マンドラゴラはぶるりと身震いした……ような、ニュアンスを感じた。
つまり、彼女(?)は死にたくないという一念で、たまたま目についた僕にテレパシーで助けを求めてきたということなのだろう。
随分と生存欲の強いマンドラゴラである。まあ、生き物は皆そうなのかもしれないけれど。
『お願い。わたしを助けて。もちろんただでとは言わないわ』
マンドラゴラは縋るように言った。
『わたしを助けてくれたら、いい事を教えてあげる。人間だったら誰でも喜ぶ話よ。貴方の損には絶対にならないわ』
『いい事?』
『わたしを助けてくれたら、教えてあげる』
彼女は先程の言葉を繰り返した。
何を教えてくれるのかは分からないが、彼女の言葉には裏表がないように感じられる。少なくとも彼女は嘘をついてはいないのだろう。
僕は少し考えて、彼女に尋ねた。
『それって、危険が伴うような話じゃないよね? ダンジョンとか』
助けた御礼にダンジョンの情報を教える、とかって話だったら遠慮したい。
冒険者なら喜んだかもしれないが、僕は冒険者ではないのだから。
しかし僕の懸念を他所に、彼女はあっさりと僕の言葉を否定した。
『そんなわけないじゃない』
ダンジョンの話を喜ぶなんて人間って変わってる、と彼女は言った。
どうやら、僕が嫌うような話ではないようだ。
それなら、話を飲んでもいいかなと僕は思った。
要は、このマンドラゴラを僕が買い取ればいいだけの話なんだろ? 簡単なことだ。
『分かった。助けてやるよ』
僕は店を経営している行商人に声を掛けて、マンドラゴラを売ってくれとお願いした。
価格は八ダイルだったが、まあ安いものだ。
マンドラゴラが教えてくれる話に期待しよう。
行商人からマンドラゴラを受け取って、薬草が入っている袋の中にそっと入れた。
『ありがとう』
マンドラゴラはようやく人心地ついたと言わんばかりの様子で、言った。
『約束通り、いい事を教えてあげるわ』
『その話、家に帰ってからでいいか? 話はゆっくり聞きたいんだ』
此処は人の往来が激しいし、騒がしいから落ち着かない。
ラフィナも連れているし、そんな状況で話を聞いてもちゃんと聞き取れないと思うんだよね。
分かった、とマンドラゴラは僕の言葉を承諾して、落ち着いた環境になったら話すと約束してくれた。
いい事……か。一体何だろうね。
僕は行商人の店を離れて、一人で串焼きを食べているラフィナの元へと戻った。
錬金術を嗜む者にとっては馴染み深く、数々の錬金薬の材料になる植物だ。
錬金術師以外の人間の間では、植わっている地面から引き抜くと聞いた者を絶命させる悲鳴を上げる植物として有名な存在だろう。
適度に魔力を含んでおり、魔力の弱い人間には人間の女性の姿に見えるらしい。僕にはただの根っこにしか見えないが。
そんな植物が、何故僕に話しかけてきたのだろう。
僕は籠の前にしゃがみ、マンドラゴラをじっと見つめた。
「ねえ、君──」
『声に出さなくても言葉は通じるわ。これはテレパシーだから』
『あ、そう?』
僕は脳内で言葉を返した。
マンドラゴラに話しかけている姿を他人が見たら変な奴だと思われていただろうから、思念だけで会話ができるのは有難かった。
僕はマンドラゴラに尋ねた。
『君、何で僕に声を掛けたの? 助けてくれってどういうこと?』
『何でって……貴方、目立ってるもの。そんなに大量の薬草を持って』
……そんなに目立つ風貌なのだろうか。今の僕は。
そんなに薬草を買い漁ったつもりはないんだけどなぁ。
まあいいや。気にしないでおこう。
『そっか……で、助けてくれっていうのは?』
『わたし、このままだと薬の材料にされちゃうもの。まだ死にたくないわ』
マンドラゴラはぶるりと身震いした……ような、ニュアンスを感じた。
つまり、彼女(?)は死にたくないという一念で、たまたま目についた僕にテレパシーで助けを求めてきたということなのだろう。
随分と生存欲の強いマンドラゴラである。まあ、生き物は皆そうなのかもしれないけれど。
『お願い。わたしを助けて。もちろんただでとは言わないわ』
マンドラゴラは縋るように言った。
『わたしを助けてくれたら、いい事を教えてあげる。人間だったら誰でも喜ぶ話よ。貴方の損には絶対にならないわ』
『いい事?』
『わたしを助けてくれたら、教えてあげる』
彼女は先程の言葉を繰り返した。
何を教えてくれるのかは分からないが、彼女の言葉には裏表がないように感じられる。少なくとも彼女は嘘をついてはいないのだろう。
僕は少し考えて、彼女に尋ねた。
『それって、危険が伴うような話じゃないよね? ダンジョンとか』
助けた御礼にダンジョンの情報を教える、とかって話だったら遠慮したい。
冒険者なら喜んだかもしれないが、僕は冒険者ではないのだから。
しかし僕の懸念を他所に、彼女はあっさりと僕の言葉を否定した。
『そんなわけないじゃない』
ダンジョンの話を喜ぶなんて人間って変わってる、と彼女は言った。
どうやら、僕が嫌うような話ではないようだ。
それなら、話を飲んでもいいかなと僕は思った。
要は、このマンドラゴラを僕が買い取ればいいだけの話なんだろ? 簡単なことだ。
『分かった。助けてやるよ』
僕は店を経営している行商人に声を掛けて、マンドラゴラを売ってくれとお願いした。
価格は八ダイルだったが、まあ安いものだ。
マンドラゴラが教えてくれる話に期待しよう。
行商人からマンドラゴラを受け取って、薬草が入っている袋の中にそっと入れた。
『ありがとう』
マンドラゴラはようやく人心地ついたと言わんばかりの様子で、言った。
『約束通り、いい事を教えてあげるわ』
『その話、家に帰ってからでいいか? 話はゆっくり聞きたいんだ』
此処は人の往来が激しいし、騒がしいから落ち着かない。
ラフィナも連れているし、そんな状況で話を聞いてもちゃんと聞き取れないと思うんだよね。
分かった、とマンドラゴラは僕の言葉を承諾して、落ち着いた環境になったら話すと約束してくれた。
いい事……か。一体何だろうね。
僕は行商人の店を離れて、一人で串焼きを食べているラフィナの元へと戻った。
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