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Epilogue

福利厚生が充実し、思いやりの溢れる職場なのです

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【エリアボス】リリエラ・ホーリードラゴンの
討伐実績を解除しました!

【レベル】が、30になりました!
【ステータス】を10ポイント付与します!

【ジョブ】のグレードアップが可能になりました!

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「いいかしら? 卑怯かどうかなんて、どんな正義の尺度を持っているかによって変わるのよ。あのだまし討ちは勝つための戦術のひとつにすぎないし、あなたが卑怯だと感じたとしても私の正義には傷ひとつ付かないわ。そもそも、じゃああなたのその大きな身体は? 空を飛べる翼は? 光を操る強力なスキルは? 重装備をがちゃがちゃ鳴らしながらやって来て、『貴様ぁ、武器を使うなど騎士の風上にもおけぬわぁ』なんて言われたら逆に笑っちゃうわよ」

「ぬぅ……勝った途端、さらに饒舌になりおって。なんだかたたえる気が失せるのじゃ……」

 スラリアがローゼン・ソードを指輪に戻すと、ホワイトドラゴンを貫いていた薔薇たちも消えていった。
 というか、白いからホワイトドラゴンだと思ってたけど、実際はホーリードラゴンだったみたいだ。
 確かに神聖な雰囲気はひしひしと感じる、特に外見の方で。
 莉央りおはドラゴンの種類は色で分けられていると言っていたから、やはり少し特別なのだろう。
 まあ、名前のようなところを使って、次からは“リリエラ”という呼称を用いることにしよう。

 薔薇の呪縛から逃れたリリエラ。
 しかし、起き上がる力も尽きていたのだろうか、その場にゆっくりと伏せたのだった。
 少し話をしていくうちに先ほどの戦いについて言及しはじめたので、ちょっとしたお説教をしていたのだ。

「ふふん、勝てば官軍でしょ?」

「敗軍の将は兵を語らずということじゃな、なにも言い返せんのじゃ」

 ドラゴンの凜々しい顔つきなのに、しょんぼりしているとはっきりわかるリリエラ。
 なんだか可愛いから、鼻先をよしよしと撫でる。

 ふむ、しっかり硬いんだけど無機質には感じない、不思議な触り心地だ。
 ガラスのように突っぱることもないから、素材で言うと白磁が近いかもしれない。
 生きている白磁か……ぷにゅぷにゅきもちいいスラリアと同様に、ずっと触り続けたくなっちゃうな。

「ねえ、リリエラ、私たちといっしょに来ない?」

 いや、別に“手触り”要員を増やそうというわけではないけれど。
 さっきジョブがグレードアップしてその詳細を確認した結果、ちょっと面白いことができそうだったのだ。

「……お姉様?」

 隣にいたスラリアが、私の腕をぎゅっと抱きしめながら抗議してくる。
 なんだ、可愛いやつめ。

 心配しないでと伝えるために、近づけてきた顔の鼻先にちゅっとキスをする。
 はにゃぁ、と気の抜けた声を上げたきり、スラリアは静かになった。

「わらわをテイムしよう、そういうことじゃな?」

 問いかけてきたリリエラに、頷きを返す。
 リリエラは少しだけ悩んだのだろうか、数瞬の間を置いてから口を開いた。

「すまぬな、わらわが仕えるのはママだけなのじゃ」

 まあ、予想のついた返答ではある。
 リリアが“特別”な存在だと認めるリリエラが、一プレイヤーである私にテイムできるはずもない。
 それに、もしテイムできたとしたら、今度は私が“特別”になってしまう。
 運営側としても、そういう事態は避けたいと思うことだろう。

 だから、潔く諦めよう。

「そう、残念。リリアに会わせてあげられると思ったんだけど」

 もう一押しして、それでもダメだったらね。

「……疑問には思っておったのじゃが、さっきからおぬしが言っておる“リリア”というのはママのことなのかの?」

「そうだよ、女神様のリリア、でしょ?」

 疑いの眼差しを向けてくるリリエラ。
 “神に会わせてあげる”なんて人間、信じられないのは自然なことだ。

「会えるなど、そんなはずはないのじゃ。ママは地獄を封印するために、あの日、地の底に沈んでいったのだからの」

 痛みに耐えるような表情で、リリエラはかぶりを振る。
 ただ、強く否定することで後に傷つかないようにしているようにも見えた。

 うーん、“ママ”なリリアが気になるのはさておき、二人を会わせたいなぁ。
 どうなんだろ、難しいのかな。

「嘘じゃないんだけど……ねえ、スラリア?」

 信じてもらえるかはわからないが。
 私の腕に頭をすりすりさせていたスラリアに、助け船を求める。

「はい、女神様はいますよ。綺麗で優しくて、良い匂いがするのです」

 私にすり寄りながら、他の女の子を褒める尻軽スライムがここにいます。
 まあ、リリアを褒める内容は全て同意ではあるけれども。

「ううぬ、それだけでママとは言えぬが……」

 思い当たる節があるのだろう、リリエラはちょっと信じた。
 スラリアが、さらに一言を加える。

「あと、お膝が気持ちいいのです」

「っ! 確かに、それはママなのじゃ……!」

 断定できる情報だったのだろう、リリエラは完全に信じた。

 えっ? それって人によってそんなに変わることなの?
 すごく気になる……今度、リリアに膝枕してもらおう。

「えーと、信じてくれたってことでいいかしら?」

 私の問いかけに、力強い頷きを返してくるリリエラ。
 なにはともあれ、これでリリエラ側は解決か。

「ふははっ、しかし、もし嘘だったら容赦せんぞ? 主であることなど関係なく、おぬしに噛みついてわらわも死んでやるのじゃ」

 ふふっ、言っていることは物騒だけど、上機嫌なリリエラは可愛いな。
 けっこう私たちのことを信じてくれているみたいだ。

 その信頼に、応えたい。
 あとは、運営側のリリアが認めてくれるかどうかだ。

「リリエラはこう言っているけど、リリア、あなたはどうするの?」

 空に向かって、声を張り上げる。
 あれ、リリアがいるというのは地獄らしいから、下に向かって言った方がよかったかな?

 そんなことを考えつつ、わずかな時間が経って。
 目の前に、ぱっと黒い画面が現れた。

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【使用武器2】にリリエラ・ホーリードラゴンを設定しますか?

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