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第一章 狂人たちとの出会い

第四話 黒き怨念

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 レイドはそのまま歩き出し、税庁へ向かう。採用されるかどうか分からないが、今求人しているのはそれくらいだ。
 そのまま歩き続け、建物の前まで来た。
 豪華な石造りだが、やはり人気はないようだ。レイドは重い石扉を開けた。

「失礼します・・・」
 施設の中に入る。中には職員が数人いるが、机の数を考えると、出勤している人は相当少ないことが分かる。
「こんにちは、ここはコレル領税庁です。ご用件はなんでしょうか?」
 男性の職員がレイドに話しかけてくる。

「こんにちは、経理の求人を見てここまで来ました」
「!? それは本当ですか! 今人手不足で火の車だったんですよ!」
 人手不足か・・・ 大半の施設の職員はもう・・・

「えー、レイドさんですね。13歳と。経理はしたことがありますか?」
「はい。大丈夫です」
「では今すぐにでも採用しましょう。もう期限が近いですから。はい、これは契約書です」

 ふむふむ、日当銀貨25枚+ボーナスか。かなり高給料だ。これなら1週間で十分な金がたまるだろう。
 レイドは契約書にサインをする。
「レイドさん。これからよろしくお願いします。私は庁長のモーリスです。短い間ですが、共に頑張りましょう!」
 そういって、モーリスはレイドと握手した。

「では、貴方の臨時の席を与えましょう。どこでも良いですよ」
「・・・もともといた職員はどうなったのですか?」
 レイドは問う。
「・・・ほとんどの職員は、謎の病に犯されてしまったか、家族がその病にかかってしまい、その看病で休んでしまっています。 なんせ緊急事態なんでね、こうして追加の職員を採っているのですが、貴方が初めての人です」

 モーリスは顔を歪めながら話す。
「どうも、体が段々不自由になるらしいです。中には、黒くなった部分が急に暴れだしたとか何とか・・・」
 なんともおぞましい話だ。この街を早く出ていくことが賢明だろう。
 
「さて、雑談はここまでにして、いまから貴方に仕事を与えましょう。今から関税の集計を行ってもらいます、統計の作り方も同封しておいたので、そちらをご参照ください。これで、貴方が働ける人か判断します」
 さすがはリヨン。商業の中心地なだけあり、関税が大半の収入になっているな。最近は無いようだが・・・ 資料を見て思う。

「任してください。仕事はしっかりしますよ」
「その意気です」
 レイドは、人生初の仕事を行うのだった。

「・・・・・・」
 モーリスはレイドがとても優秀なことに気付いていた。
 彼が来てから2日目、とんでもない速さで仕事を片付けていく。
「モーリス庁長。レイドさんって何者ですか? 新人とは思えないですよ! トップ成績を狙えるほどです!」

 今モーリスに話しかけてきたのは同じ職員のアンヌだ。
「ええ。彼はとても優秀な人材です。でも不思議ですね、なぜ彼ほどの人がこんなところまで出稼ぎを・・・?」
 モーリスは彼の出自を疑っていたのだ。
 
「終わりました。ではこれで・・・」
 仕事終わりのレイドが話しかけてくる。
「お疲れさまでした。また明日」
「お疲れ様ー レイドさん」

 レイドはそそくさと出て行ってしまった。
(彼は絶対に何か事情を抱えているのでしょう。リヨンを害する者でなければよいですが・・・)
 モーリスに不安がよぎった。

 ~宿屋にて~

 レイドたちは安宿で寝泊まりをしている。
 もちろん、カインと一緒だ。
「カイン。仕事の調子はどうだ?」
「おう。ある厨房には入れたんだが、やっぱり人手が足りない状況だな」
「もうこの街は持たない。東の要所が無くなるとバイセン家に影響が出るな・・・」

「仕方ねえんじゃないの。俺らにできることは無いしな」
 病気の原因すら分からない今、どうすることもできない。
「それもそうだな。そろそろここを出よう。おやすみ」
 おっと、カインはもう意識が無いようだ。俺も寝るか・・・
 レイドは眠りについたのだった。

 
「・・・あ・・・す・・・」
 何か話し声が聞こえる。

「なんてことだ・・・」
 荒廃し滅んだ街を男が眺める。
 誰だ・・・ こいつは?
「リヨンの人々は皆 "黒き人” になってしまったらしいの・・・ 痛ましいわ」
 隣にいた女が言う。
 
 リヨンの外壁は崩れ、荒廃した街には全身真っ黒の人々がうごめいている。
 あの病気と一緒だ。まさか、これはリヨンの未来を映し出しているのか・・・?
「話によると隣領のバイセンもひどい有様らしい・・・ 苦しんでいる人々を解放するんだ。さあ、行こう、エマ」

「ええ、フィリップ」
 そして彼らはリヨンに向かう・・・
 
 どうやらこの2人組はフィリップとエマというらしい。こいつらは何者だ? 2つほど年上に見えるが・・・
 すると"映像”が途切れ、辺りに色が無くなる。

 どこからともなく声が聞こえてくる・・・
「レイド・・・ あなたはリヨンを見捨てようとしていますね。これでは "前” の貴方と同じ運命をたどってしまいます・・・」 
 前・・・? 一度目の俺のことか?

「レイド、リヨンの街を救うのです!それが貴方の生きる道、そしてエレーヌが助かる道なのです!」
 またこの声だ・・・ 全く話についていけない。
 お前は・・・ 誰だ?
 また、何かに飲み込まれていく・・・ わけが分からないまま、レイドはまた、意識を失うのだった・・・


 ~あとがき~

「面白そう!」
「続きが読みたい!」

 と思った方は、是非、応援よろしくお願いします!
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