亡国の近衛騎士 ~追放された王家直属の最強護衛、幼なじみの旅商人と共に世界を回ることにする~

アイスクリーム仕立て

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第30話 知への狂求、神を否定する者 その名はソフォス

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 シュベルト、レア、アリアは教会の扉の前にたどり着いた。
 周囲には、教会兵の姿すら見当たらない。

 ソフォスは戦の指揮を執ることなく、ただ教会内に留まっている。
 何かが隠されているはずだ。……そして、人質を必ず取り返す。

「アリア、協力してくれ。分かっているな?」
「ああ、もちろんだ。奴から、真実を……」
 アリアはそう言いながら、煉獄剣を強く握りしめる。

「レア、もし危なくなったら、すぐに逃げろ。分かったな?」
「うん、大丈夫」
 レアの表情は硬い。

「よし、みんな。いくぞ」
 アリアとレアは無言でうなずいた。

 ――キィィィ……
 そして俺たちは石扉を開け、教会の中に入った。

「静かだな……」
 だが、気配を感じる。 ……奴だ。

「おい! ソフォス! そこに居るんだろう? 出て来い!」
 アリアがそう叫び、教会内にこだまする。

 いったんの静けさの後に、壇上の方からひとり、現れたのだった……

「アリア、生きていたんですねぇ?」
「ソフォス……!」

 ソフォスは不気味な笑いを浮かべ、冷ややかにこちらを見下ろしている。

「はぁ。まあ、あなたたちがここに来ることは筋書き通り。全て予想通りです」
「お前……! 一体何が目的だ!」

「目的? それは研究の実験をしようと思いまして」
「実験? ハッ、仲間が戦っているのにお前だけ何をしている?」

 ソフォスは一旦黙ると、また笑顔を作り……

「そんなこと僕が気にしていると思ったんですか? あいつらは全員駒。もちろん、あなたもね」
「なに……!」
「いやぁ。本当に役に立ってくれました。……悲劇のヒロインとして」

「お前、まさか……!」
「ご名答! あなた予想通りです! アリアの両親を殺したのは、ぼ・く」
「あぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 途端に、爆発するようにアリアが動く!

 ――グサッ
 何も迷うことなく、ソフォスの胸に剣を突き刺した!

 やったか……? いや、何かが……

「この野郎……! 思い知れ!」
「アリア! 今すぐにそいつから離れろ!」

「……あぁ。これが死の苦しみですか。初めての経験だ……! は、ははっ、はははっ!」
「なにっ!?」

 アリアはとっさにソフォスから離れ、こっちに戻って来た。
 今の攻撃は確実に致命傷だった。なのに効いていない…… 

 こいつの自信は、これか!

「見ましたか? 分かりましたかぁ? 僕の研究の集大成……」
「なに? こいつなに? どうなってるの!?」
「落ち着け! レア」

「……不死の薬がぁ、ついに完成したぁっっ!!!」

 不死……だとっ!!
 ソフォスは喜びのあまり、目をガンギマらせながら斜め上を見ている。
 俺たちは呆然のあまり、ただ見ることしか出来ない。
 
「もう目標は達成されました。この街にも、教会にももう用はありません。あとは……死んでください」

 ……何が不死だ。
 絶対に、止めてやる……!

 
「フハハハハッ! どこへ行くんですかァ?」

 俺たちは散開し、それぞれ攻撃の機会を伺っている。
 どうやっても再生されてしまうなら、反撃を食らってしまうリスクがある。
 ここは、攻撃を誘発し、カウンターに回るぞ。

 俺はジグザグに走りながら、ゆっくりとソフォスに近づく。

「無駄なあがきをっ! さあ、腐食せよ!」
「……酸かっ!」

 ――プシャアッッ!!
 ソフォスが向けた手から魔法陣が浮かび上がり、酸の霧が吹き出る!

 強力な酸だ。さっき居たところにあった長椅子は跡形もなくなり、地面もえぐれている。
 だが、遅い。

 ――ヒュンッ!
 俺は突き出た左腕を切り落としたっ! そして、後ろに下がる。
 アリアもそれに乗じてソフォスに接近し始めた。

「……痛いじゃないですかぁ」

 ん? 再生しないぞ。肢体はそうなのか?

 ――ボコッ、ボゴボゴボゴッッ!!
 信じられないことに、左腕の付け根から肉塊が飛び出てきた!

 ところどころ血管が見え、血と肌の色が混ざった不気味な色。
 人間の物とは思えない、巨大な何かが生えてくる。

「おやっ、副作用? ……まぁいいか。これはこれで攻撃しやすいですねぇ!」
「……あ! アリア、危ないっ!」

 ソフォスの”左腕”がアリアに襲い掛かる!

「なっ! 受け身をっ……うあっ!」

 ――ドォンッ!
 アリアは勢い良く飛ばされ、レアの近くの長椅子に激突した!

「アリアっ! 大丈夫!?」
「バカッ、レア! 気を逸らすな!」
「そーれっ! 止めだっ!」

 ソフォスは左腕を使って大きく飛び跳ね、アリアに襲い掛かる!
 防御を! 駄目だ遠すぎる、俺では間に合わない……!

(やだ、このままじゃアリアがやられてしまう…… 何か、いい手は無いの?)
 レアは考える。だが、レアの魔法ではあれを止められない。

 レアは目を瞑った。

「……レア、目を開けなさい」
「っ!? お父さん!?」
「私がこの魔法を教えてあげよう。大切な人なんだろう? 助けなさい。その魔法は……」

「フハハッ! 終わりだぁっ!」
「……ありがとう、お父さん」

 レアは杖を両手で握り、ソフォスの方へ向けた。

 ――氷の精霊よ、我に従い、全てを凍てつかせよ。大地、空の蒼ささえも凍りつく、氷結の絶対領域……

「さあ凍れ! 絶対零度っ!!」
「んっ? ぬわぁぁあっ!!」

 ――キシィィィンッ!!
 レアから繰り出された白く輝くビームは、ソフォスを跳ね飛ばし、そのまま教会の天井へと氷と共に貼り付けた!

「はぁ、はぁ、はぁ…… アリア、大丈夫?」
「あ、あぁ…… なんだ? その攻撃は」
「……お父さんが教えてくれたの」

「レア! ……よくやってくれた。俺じゃ間に合わなかったよ」
 
 あのような氷結魔法は冒険者時代も見たことがない。恐らく最上級に位置する…… いやそれ以上かもしれん。
 
 そして今、解決されたな。人に打てないという悩みを。
 ……あれを人と呼んでいいのか分からないが。

 ――シュゥゥゥ……

「クソッ、あナた達…… ヨくも……」
 
 ――べちゃっ
 
 ソフォスは氷を溶かし、地面に着地した。
 もう、原型はない。

「ウワァぁァ!! 腹ガたツ! ミンな、溶ケろォ!!」
「ぬ、教会全体が魔法陣に……」

 ……教会全部を巻き込む気か。それなら……
 
 ――魔法陣展開 発動 魔法障壁!
 俺は3人を包み込むようにバリアを張った。

 ――ブッシャァァァッ!!
 その次の瞬間、酸が俺たちに襲い掛かる!

「キャァ!」
「ふフ、フふ…… ヌ、効イていナい?」

「ふう、何とか持ったようだな」

 もう教会は跡形もなくなり、ただの更地となってしまった。

 ……そして、お出ましだ。化け物が。
 
 完全に全身を損傷し、そして異形と変化したソフォスが……!
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