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婚約破棄?その言葉待っていました!
深夜の外出①
屋敷が寝静まった頃、私はゆっくりと寝台から起き上がる。最低限の灯りをつけて、手早く身支度を済ませた。
以前市井に出る時に使用していた男物の服に剣を差す。髪を邪魔にならない様に結ってローブも被る。
家人への書き置きを机の上にそっと乗せた。
灯りを消して窓の外を盗み見る。
監視の目は見当たらない。が、私が探知できない可能性も想定している。
一息ついて気持ちを落ち着かせる。
家人に気付かれないように細心の注意を払って転移魔法を展開。
一瞬にして、私はセレス領北部の森へ転移した。
この森を抜けて北上するとベルン領に出る。
ベルン領は海に面している交易都市だ。
しばらく身を隠すにはちょうど良い。
けれどもベルン領に行く前に、確かめたいことがある。
私は森に入り少し歩いた。
少し開けた場所に出て辺りを見渡す。
ここでも細心の注意を払って魔法陣を展開する。
そして適当な木を見つけ、身を隠した。
幸い今夜は月明かりで夜目が利く。
息を潜めて、気配を消すことに注力する。
ほどなくして人の気配を探知する。
1人だ。
森に着いて施した魔法陣の効果でわかる。
なるべく相手に気付かれないように痕跡を消して身を隠しているが、果たしてこれから来る相手に通用するかどうか?
ザクザクザク
地面を踏み締める音がする。
だんだんと近付いてくる。
相手は近付く気配を隠そうとしない。
確信があるんだろう。
こちらに向かって来る人影は、私の予想通りだった。
「こんばんは、セレス嬢」
夜の静寂に、彼の低く伸びやかな声が響く。
月明かりを受け、銀色の髪が輝く。
照らされた端正な顔は美しく、アイスブルーの瞳が見る者を惹きつける。
日の下でも月の下でも輝くような存在感だ。
やはりクローディア公爵子息だった。
彼は夜の森に溶け込めない。
明らかに異質の存在だ。
公爵家の嫡男が、護衛も連れずに……
常識では考えられない光景だ。
それなのに此処にいる。
だから彼とその周りだけ幻想的に見える様に、脳内補正がなされているのかもしれない。
「良い月夜ですね」
彼の声に、私は現実に引き戻される。
クローディア公爵子息は私が身を隠している木の下に近付いて、私を見上げる。夕方会った時と同じ格好だった。
おそらく私が夜に抜け出すのを予想していたのだろう。
アイスブルーの瞳が真っ直ぐにこちらを捉えていた。
私は木の上から飛び降りて礼をとる。
「クローディア公爵子息、ご機嫌麗しゅう。
こんな時間に、夜のお散歩ですか?」
「ええ、貴方に会いたくなって」
「お会いするのは、明日をご希望では?」
「まもなく『明日』になる。気が急いで早く会いに来てしまった」
美形が真顔でこういう台詞を使うと相手が勘違いしそうなものだけど、今の私には警戒しかない。
月を見上げる。そろそろ日付が変わる時間か。
私はそっとため息をついた。
クローディア公爵子息は私が転移魔法を使えることをわかっているだろう。
そしておそらく彼も転移魔法を使用できる。
彼はクローディア領に滞在すると言っていた。仮令それが偽りでも、この森に来るまでの時間を考えると転移魔法が使えると考えた方が妥当だ。
そうすると、どこへ行っても結局は追いつかれてしまう。術の熟練度や体力の差はあれど、彼から逃れるのは難しそうだ。
しかも土地勘のない夜の森に単身踏み入れるなんて……自分の身は自分で守れる自信があるのだろう。自分の立場も良く分かっているはず。
ならば彼は転移魔法が使えると断定して差し支えないだろう。
そうでなければ、公爵子息が深夜に単独行動なんてできない。
もっとも私も相手からそう思われているのだろうが。
私は諦めを隠して、微笑みを作る。
「そんなに急ぎのご用事でしたか?
夜も更けて参りましたので、仕切り直してもよろしいでしょうか?家人もクローディア公爵子息においでいただくのを楽しみにしておりますので、日のあるうちに当家にお越しください。歓迎いたします」
彼との対話は回避できない。
それならば腹を括るしかない。
「お誘いいただき嬉しい限り。ぜひ伺おう。
ただ、今少しだけ……お話してもよろしいか?」
私は一瞬躊躇したが、彼の真意を見極める機会になると思い直す。
私は出来るだけ落ち着いた声で答えた。
「……少しだけなら」
逃げられないのならば、
できる限り最善を尽くすのみ。
以前市井に出る時に使用していた男物の服に剣を差す。髪を邪魔にならない様に結ってローブも被る。
家人への書き置きを机の上にそっと乗せた。
灯りを消して窓の外を盗み見る。
監視の目は見当たらない。が、私が探知できない可能性も想定している。
一息ついて気持ちを落ち着かせる。
家人に気付かれないように細心の注意を払って転移魔法を展開。
一瞬にして、私はセレス領北部の森へ転移した。
この森を抜けて北上するとベルン領に出る。
ベルン領は海に面している交易都市だ。
しばらく身を隠すにはちょうど良い。
けれどもベルン領に行く前に、確かめたいことがある。
私は森に入り少し歩いた。
少し開けた場所に出て辺りを見渡す。
ここでも細心の注意を払って魔法陣を展開する。
そして適当な木を見つけ、身を隠した。
幸い今夜は月明かりで夜目が利く。
息を潜めて、気配を消すことに注力する。
ほどなくして人の気配を探知する。
1人だ。
森に着いて施した魔法陣の効果でわかる。
なるべく相手に気付かれないように痕跡を消して身を隠しているが、果たしてこれから来る相手に通用するかどうか?
ザクザクザク
地面を踏み締める音がする。
だんだんと近付いてくる。
相手は近付く気配を隠そうとしない。
確信があるんだろう。
こちらに向かって来る人影は、私の予想通りだった。
「こんばんは、セレス嬢」
夜の静寂に、彼の低く伸びやかな声が響く。
月明かりを受け、銀色の髪が輝く。
照らされた端正な顔は美しく、アイスブルーの瞳が見る者を惹きつける。
日の下でも月の下でも輝くような存在感だ。
やはりクローディア公爵子息だった。
彼は夜の森に溶け込めない。
明らかに異質の存在だ。
公爵家の嫡男が、護衛も連れずに……
常識では考えられない光景だ。
それなのに此処にいる。
だから彼とその周りだけ幻想的に見える様に、脳内補正がなされているのかもしれない。
「良い月夜ですね」
彼の声に、私は現実に引き戻される。
クローディア公爵子息は私が身を隠している木の下に近付いて、私を見上げる。夕方会った時と同じ格好だった。
おそらく私が夜に抜け出すのを予想していたのだろう。
アイスブルーの瞳が真っ直ぐにこちらを捉えていた。
私は木の上から飛び降りて礼をとる。
「クローディア公爵子息、ご機嫌麗しゅう。
こんな時間に、夜のお散歩ですか?」
「ええ、貴方に会いたくなって」
「お会いするのは、明日をご希望では?」
「まもなく『明日』になる。気が急いで早く会いに来てしまった」
美形が真顔でこういう台詞を使うと相手が勘違いしそうなものだけど、今の私には警戒しかない。
月を見上げる。そろそろ日付が変わる時間か。
私はそっとため息をついた。
クローディア公爵子息は私が転移魔法を使えることをわかっているだろう。
そしておそらく彼も転移魔法を使用できる。
彼はクローディア領に滞在すると言っていた。仮令それが偽りでも、この森に来るまでの時間を考えると転移魔法が使えると考えた方が妥当だ。
そうすると、どこへ行っても結局は追いつかれてしまう。術の熟練度や体力の差はあれど、彼から逃れるのは難しそうだ。
しかも土地勘のない夜の森に単身踏み入れるなんて……自分の身は自分で守れる自信があるのだろう。自分の立場も良く分かっているはず。
ならば彼は転移魔法が使えると断定して差し支えないだろう。
そうでなければ、公爵子息が深夜に単独行動なんてできない。
もっとも私も相手からそう思われているのだろうが。
私は諦めを隠して、微笑みを作る。
「そんなに急ぎのご用事でしたか?
夜も更けて参りましたので、仕切り直してもよろしいでしょうか?家人もクローディア公爵子息においでいただくのを楽しみにしておりますので、日のあるうちに当家にお越しください。歓迎いたします」
彼との対話は回避できない。
それならば腹を括るしかない。
「お誘いいただき嬉しい限り。ぜひ伺おう。
ただ、今少しだけ……お話してもよろしいか?」
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