婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜

みのすけ

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婚約破棄?その言葉待っていました!

招待③

この言葉をすんなりと口に出せるようになったのは、私の中で確信があるからだろう。

まもなく目的を遂げる。
攫われた子供全員を取り戻すという目的を。


けれどもこの言葉はモランには聞かせられない。
彼はセバスチャンと共に私を支えてくれる人だから、今までのことを思い出して責任を感じてしまう。家令に責任なんてないのに、私のことを背負わせてしまう。


幸いなことに、私達の会話は部屋の外にいる家人には聞こえないだろう。


だからこそ口に出来た本音だった。

私と向かい合う彼は住む世界が違う人だから、知られても問題ないと思ったのだ。

それほどまでに公爵家と子爵家には身分の差がある。接点がないから、彼が王都に戻ればもう会うこともない。


それを分かっているのかいないのか、クローディア公爵子息は静かに口を開いた。


「『その責任』が果たされた後、貴方はどうする?」

「……まだわかりません」

「……聡い貴方の事だ。いつまでも領地にいられないことは分かっているだろう?」

「はい。私は出来れば平民となって、セレス家を陰から支えられればと思います」

私が前から考えていることだった。
彼の前でそれを素直に口にしてしまったのは、やはり知られても問題ないからだろう。


「平民になるとセレス子爵家から離れることになるだろう?貴方はそれでいいのか?」

「はい。後継は問題ないので」

「貴方は家や家族を大事に思っているように見受けられるが」

「……大切だから、離れて見守りたいのです」

これは叔母夫婦に襲爵を願い出た時から決めていたことだった。その理由は、同門の家長達にも納得してもらっている。



「……だが、平民になるのは難しいのではないか?セレス子爵が承知するとは思えない」

クローディア公爵子息の指摘はもっともだった。「彼はよく分かっているな」と私は感心する。


「そうですね、何と言って説得すれば良いでしょうか?……クローディア公爵子息、何か良い案はありませんか?」


クローディア公爵子息は少し目を見開いた。彼にとっては思いがけない反撃だろう。

彼にしては珍しく、考えている仕草をする。表情はあまり変わらないが、多少は面食らってもらえただろうか?


「案がないことはない」

「ぜひ教えて頂けませんか?」

「1つ条件がある」

「何でしょう?」

雲行きが怪しくなってきた。
悪手だったか?

「これからは貴方のことをアレキサンドライトと名前で呼んでも良いだろうか?私の事はユリウスと呼んで欲しい」

「!?」

全く予想外の話で私は混乱した。
クローディア公爵子息の意図が掴めない。

「お、畏れ多くて私には……」

「『クローディア公爵子息』では長いだろう?」

「あの、私の名前も長いから家名で……!」

いきなり彼に手を握られて、私は驚く。

確かクローディア公爵子息の『居場所がわかる魔術』とやらは相手に触れることが必要になるはず。

術をかけられたら大変なので私は手を引っ込めたいのだが、意外としっかり握られて抜けない。


後々考えれば、私に術をかけられたところで居場所が分かっても差し支えないように行動すれば良かった。なのに、その時の私は焦って手を離すことに意識がいっていた。



「ふむ……家族には何と呼ばれているのだ?」 

「えぇと……レイと」

「では俺も同じで」

「!?」

我に返ったが少し遅かった。
私は何で誤魔化さなかったのか!
寝不足で判断が鈍るのが恨めしい。

クローディア公爵子息はパッと手を離した。

「レイ、俺の案を聞きたいか?」

呼び方、、そもそも承諾していないし、沈黙は肯定と捉えられた?でも家族と同じ呼び名ってちょっと、、
あぁ、そんな笑顔で早速呼びかけられたら、戻してほしいと言いにくい、、


私は混乱した。
とりあえず呼び名の件は一旦忘れることにする。


「き、聞きたいです。クローディア公爵子息」

「呼び方間違えている」

「えぇと、ユリウス様」

「様はなくていい」

「公爵家の方に対して、それは難しいです」

「……わかった」

表情は変わらないが、なんか拗ねてる声音。


気を取り直してクローディア公爵子息改め、ユリウス様が言う。

「レイがクローディア公爵家の家庭教師になる案だ」

「!?」

畏れ多くて考えたこともない、非現実的な案だ。

「私は父を説得する案を教えて頂けると思っていたのですが……」

「ああ、まず家庭教師として自立して、それからセレス子爵を説得する案だ」

「なるほど……良い案だと思いますが、公爵家の家庭教師を子爵家出身の者が務めるのは難しいと思います」

「我が家は能力主義でね。身分は問わない。ただレイが気にするなら、それもまもなく解決する」

「どういうことです?」

「すぐにわかる」

ユリウス様はそう言って席を立った。
私に近づきながら続ける。

「クローディア家なら家庭教師の実績を積める。待遇は他家よりも良いし、住み込みになれば自立も早いだろう。クローディア領に同行すればセレス領とも近い。家庭教師として悪い条件ではないだろう?」

確かに家庭教師なら、両親も許してくれそうだ。住み込みならセレス家から自立できる。公爵家の家庭教師は身分的に難しいから、子爵家か男爵家で探してみようかな。



そうこう考えているうちに、ユリウス様は私の手を取り軽く口づける。

「レイ、検討しておいてくれ」

手を離す前に、彼と目が合う。

アイスブルーの瞳が楽しそうに見えたのは気のせいだろうか?




後から考えても、この時の私は本当にどうかしていたのだろう。自分の対応の甘さで家族以外に呼び名を許すなんて。

でも何だかもう頭が働かない。
寝不足が響いているのだろうか?

彼と話すと、どうしてか彼のペースになってしまう。近しい年の人を相手にして、これほど会話がままならないなんて初めてだ。

悔しいが相手の方が完全に上手だと認めざるを得ない。

色々反省することがあるが時には諦めることも肝要、呼び名も今だけのことと割り切る。

目の前のこの方は雲の上の御方。私と関わるはずのない身分の人なのだから。
学園を卒業し王都からも離れた今、彼とこの先会う機会もないだろう。


私は自分の失態も含めて、早く忘れることにした。


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今日はもう一話投稿します。

引き続き楽しんでいただけると幸いです。

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