噂の補佐君

さっすん

文字の大きさ
10 / 28

10

しおりを挟む
夕食もお風呂も済ませ、あとは寝るだけの状態。

一人部屋な俺は何もかも自分に合わせて行動が出来る。

今日はいつも以上に疲れた。

身体的にも、精神的にも。

脳が忙しかったし。


濡れた髪を首にかけてあるタオルで拭きながら、何か飲もうと冷蔵庫を開けた時、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。

ドアをコンコン叩く音も聞こえてくる。


こんな時間に誰だ……?


不審に思いながら、冷蔵庫の扉を閉め、施錠を外し、玄関のドアをゆっくり開ける。


「え、副会長……?」

「こんばんは」


毅然とした態度で礼儀正しく頭を下げる副会長。

俺もとりあえず挨拶を返す。


「ど、どうしたんですか?」


副会長が部屋を訪ねて来るなんて珍しい。

俺はこういう立場だし、来訪はちょいちょいある。

けれど、副会長が来たのは初めてだ。


「書類を渡しに来ただけです。
あなた今日来なかったですから」

「……わざわざすみません……」


今日の一件は俺あんまり悪くない……はず。


「これの提出、来週中じゃないですか」


書類に記載された提出期限を見て、俺は首を傾げる。

内容も、そこまで重要ではないようだ。

そんな書類をわざわざこんな時間なのに持って来てくれた事を俺は不思議に思う。


「なんですか?文句でもありますか」

「いや、文句はないですけど……」


というか文句あっても言わせない、というようなオーラが出てますよ……。

まぁ、副会長が触れてほしくないなら何も言わないですけど。

副会長はコホン、と咳払いをしてところで、と話を切り出した。


「あなた、腕の方は大丈夫ですか」

「あ、はい。もうすっかり」


痕も薄くなって来ましたし、と副会長に腕を見せる。

うっすらと手形が残っているが、最初より随分薄くなった。


「そうですか」


それだけ言って副会長は口を閉じた。


「………」

「………」


沈黙が流れる。

副会長帰らないのだろうか。

そろそろ寝ていい時刻だし……。


「髪、乾かさないのですか」

「え?」


突拍子もない副会長の言葉に一瞬呆気に取られる。

髪?

あ、俺お風呂上がったばかりだから髪濡れてるんだ。

思えば完全に部屋着で、首にタオルかけてるし、だらしない格好を副会長に見せてしまってるな……。


「ついさっきお風呂から上がったばかりなんです。
それに俺、あらかたタオルで拭いたら終わりなので、ドライヤーとか使わないんですよね」

「そうですか」


さっきと同じあまり興味の無さそうな返事だ。

どうしたんだ、副会長。


「……そんな姿じゃ、喰われてしまいますよ」

「え?」


ボソッと小さな声で副会長が何か言った。

でも俺には聞こえなかった。

もう一度言ってもらおうと聞き返そうとした時、いきなり副会長が俺の部屋に強引に入って来た。

それにびっくりして数歩後ずさった俺の腰に腕を回し、体を引き寄せる副会長。

パタンと玄関のドアが閉まる。

至近距離に副会長の顔があって当惑すると同時に顔が熱くなる。


「無防備過ぎるんですよ」


離れようと身をよじるが、そうはさせない、と言うように副会長の腕に力が入って逃げ出せない。


「ふ、く会長、近過ぎです!」

「当たり前でしょう、近付けているんですから」


平然と答える副会長。

離れようという気はないのかよ……!

肩を押して、副会長を退かせようとするがびくともしない。


「ちょっ、あっ」


副会長は俺の首元に顔をうずめ、首を舌でなぞった。

体がぞくぞくして力が入らなくなる。


「んっ、く……ぅ」


声を出さないように口元を手で押さえるが、副会長に手を掴まれ、外される。


「あ、ゃ……!っ、んぅ……ぁ」


きつく首を吸われて、痛みが走る。

なんでこんな事……!


首から副会長が離れたと思ったら、今度は唇を奪われた。

唇の間を割って、副会長の舌が侵入してくる。

絡む副会長の舌と自分のそれ。


「は、ぁん……や、ぁ……!ふ、ぅ……」


ピチャピチャと耳を塞ぎたくなるような生々しい水音に、泣きたくなる。

キスは深くなるばかりで、激しく舌が絡み、歯茎をなぞられ、呼吸が出来ない。


「あ……」


やっと副会長が離れ、体の力が抜けた俺はその場に崩れそうになる。

それを腰に回った副会長の腕が支えた。

肩で呼吸し、必死に酸素を体内に取り入れる。


「キス、下手ですね」

「っ……」


副会長はにやりと笑い、余裕そうだ。

あんだけ人を乱しておいてその口振りはなんなんだよ……!


「あなたが風紀委員長にキスをされたと聞いたものですから、消毒です」

「っ、余計なお世話です!」


精一杯副会長を睨むが、それは痛くも痒くもないようだ。


「では、私はこれで」


そう言って副会長は何事も無かったかのように部屋を出ていった。


なんなんだあの人……!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

天使の声と魔女の呪い

狼蝶
BL
 長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。  ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。 『も、もぉやら・・・・・・』 『っ!!?』  果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

平穏な日常の崩壊。

猫宮乾
BL
 中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。

ひみつのモデルくん

おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。 高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎ 主人公総受け、総愛され予定です。 思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。 後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。

脇役の脇役の物語

蒼月柚流
BL
王道学園でアンチ王道君が荒らした学園のその後の脇役の脇役の物語。 出来あがってる王子系副会長×脇役の脇役平凡があはんうふんなお話です。 たぶん副会長の片想いから始まってると思います。(適当) 少しでもお楽しみいただければ幸いです。 いつかここに至るまでの物語も語ってみたい思いだけはあります。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...