噂の補佐君

さっすん

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目が覚めると、何故だか泣きそうな顔をした広尾先生と、明らかに苛立った様子の冬木先生がいた。

広尾先生は床で正座させられていて、冬木先生は壁のように広尾先生の前に立って、見下ろしている。


「佐野!お前からもなんもしてないって証言してくれ!」


俺が起きた事に気付いて、泣きつくように広尾先生は言った。

俺はただ首を傾げる。


「晴、お前広尾先生と何したんだ!」


ギロリとこちらを睨む冬木先生に俺はビクッと肩を揺らす。

めっちゃ怖い……!


「な、何もしていません!」


それになんか勘違いしているみたいだし!

慌てて否定する俺を、冬木先生はしばらく怪しむようにじっと見つめたが、はあ、とため息をついて無理矢理なようだが、分かった、と納得した。


「なんにせよ、晴はこんな朝っぱらからなんで宿直室にいるんだ。まさか広尾先生が無理矢理……」

「ち、違います!」


冬木先生はちらりと視線を俺から広尾先生に向けた。

それに対し、広尾先生は顔を赤くしてすぐさま否定した。

一体何を考えているんだ、冬木先生は……。

冬木先生の大きな勘違いにだんだん呆れてくる。


「えっと、昨夜よく眠れなくて早く学校に来ちゃったんです。それで、鍵を取りに宿直室に行ったんです」

「そしたら、佐野の顔色が良くない事に気付いたので宿直室で休ませたんです」


冬木先生はいぶかしげに俺達をかわるがわる見た後、嘘を吐いていないと判断したらしく、そうか、と引き下がった。


「あんまり無理すんなよ」


冬木先生はぽんぽんと俺の頭を撫でて、小さく笑った。

その顔があまりにも綺麗で、その手つきがあまりにも優しくて、俺は熱い頬を隠すように視線を逸らした。

それに気付いているのかいないのか分からないが、冬木先生は何も言わず、俺から広尾先生に向き直る。


「この間の新歓の役割決めの時、広尾先生見回りになりましたよね?これ目を通しておいてください」

「あ、はい。分かりました」


差し出された一枚のプリントを広尾先生はお礼を言って受け取る。

にしても広尾先生見回りをするんだ。

新歓には毎年先生も参加するらしい。

学校を挙げて楽しむなんて意外と生徒に協力的だな、と思う。


「では、また。晴、腕見たいから今日のどっかの時間に保健室来いよ」

「分かりました」


冬木先生はそう言って宿直室を出ていった。

俺も壁にかかっている時計を確認して、支度にとりかかる。

といってもワイシャツのボタンをとめ、ネクタイをしめる程度しかない為すぐに終わった。


「広尾先生、ありがとうございました。また教室で」

「あぁ。ちゃんと体に気を遣うんだぞ」


広尾先生は少年のようにニッと笑って手を振る。

俺はそれに頷いて、頭を下げてから宿直室を出た。

にしても、広尾先生ってすごく優しいな。

いつも勉強を教えてもらう時くらいしか話す機会なかったから知らなかった。

誰もいない静かな廊下を歩いてそんな事を考える。

時刻は七時過ぎ。

もう職員室は開いているはずだから、教室の鍵を取りに向かう。

さっきまで寝ていたおかげで、頭がスッキリしている。

今日の授業はすごく集中出来そうだ。
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