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「あ、会長達お帰り!」
定期委員会が終わり、生徒会室に入ると、空先輩の元気な声に出迎えられた。
それに対して、あぁ、とだけ言い、副会長はただいま戻りました、と社交辞令のごとく返事。中尾先輩は俯いてペコリと頭を下げた。
会長は冷た過ぎでしょ……。せっかく出迎えてくれたのに、あぁ、だけって……。
まあでも、今の会長の機嫌はすこぶる悪い。
というのも先ほどの定期委員会で論争だと銘打って敦先輩と言い争いをしているからだ。
会長は敦先輩の言葉ひとつひとつにちゃちゃを入れる。会長の敦先輩の嫌いようは半端じゃないみたい。
どうしてそんなに嫌っているんだろう。
ともかく、そういう訳で会長はものすごく不機嫌。
副会長は会長と敦先輩の論争をいちいち止めなければならなかったから疲れているみたい。
副会長も大変だな……。
「ねぇねぇ」
一人苦笑しているとクイクイと袖を引かれる。そちらを見ると、椅子に腰かけた空先輩が俺を見上げている。空先輩は人差し指を使ってこっちに近付くよう指示した。俺はそれに従い、その場にかがみ、空先輩の言葉に耳を貸す。
「会長、何があったの?
めっちゃ機嫌悪いみたいなんだけど」
声を潜め、空先輩は言う。
俺は、敦先輩と論争を繰り広げたんです、と割愛して答えた。すると空先輩は驚いた顔をした。
「今喧嘩禁止令出てなかったっけ」
「そうなんですけど……論争は喧嘩じゃないって言われまして」
その言葉に今度は空先輩が苦笑を漏らした。
空先輩は明るくて、生徒会のメンバーの中では一番話しやすい方だ。にこにことした笑顔を絶やさずフレンドリー。イタズラ好きな面もあるけれど、とてもいい先輩だ。
「そうだ。晴君がこの間言ってたプリン、買ったんだ!
晴君の分も買ったから良かったら今夜届けに行こうか?」
嬉々とした様子で話す空先輩。
俺は思わぬ提案にえっと驚く。
この間言ってたプリンというのはもちろん覚えがある。学園の近くにあるケーキ屋さんの一日三十個限定のプリン。甘くて美味しいからすごく人気ですぐに売り切れてしまう。それプラスすごく高い。一個千円程で、俺にはなかなか手が出しづらいものだ。
「いいんですか?いただいても」
「もちろん!晴君の為に買ったんだから」
にこりと笑いかけられ、わあ!と興奮してしまう。
嬉しい!甘いものが大好きな俺に最高のご褒美。
「じゃあ今日、晴君の部屋に行くね?」
「分かりました!待ってますね」
「お邪魔しまーす」
「どうぞ~」
インターホンが鳴り、ドアを開けると思っていた通り、空先輩がそこにいた。俺は部屋に招き入れ、どうぞ、と椅子に座るように促して冷たい麦茶を注いだコップを置く。空先輩はありがと、とお礼を言って手に持っていた袋から例のプリンを出した。
「ふわぁ~!美味しそうですね!」
空先輩の向かい側に座りながら綺麗な薄めの黄色のプリンを見て俺の心は踊る。そんな俺を見て空先輩はクスクス笑った。
「ふふっ、晴君めちゃくちゃ嬉しそう。じゃあ早速食べようっ」
いただきます、と手を合わせ、プリンの封を切る。すぐに甘い香りが俺の鼻をくすぐる。スプーンですくうとプルプルと揺れて、更に食欲をそそる。
ふわぁ~!!美味しそう!!
一口目を口に含む。その途端、甘さが口いっぱいに広がった。
「美味しいです!」
「そうだね。僕も初めてあそこのプリン食べるけど、絶品だ!」
俺達はあっという間にプリンを平らげた。麦茶を飲みながら雑談をする。
「なんだか眠くなってきたね」
そう言って空先輩はあくびをして、目尻の涙を拭う。それが移ったのか俺もあくびをしてしまう。
「明日の朝ってゆっくり出来るよね?」
「はい。学校休みですから」
そう答えた俺に空先輩はニシシと笑った。
「だったら今夜はここに泊まっていっちゃおうかな」
「え?」
泊まっていく?
「泊まるのは構いませんが、俺の部屋、ベッド一つしかないですよ?」
「全然いいよ」
俺は首を傾げながら、何故かにこにこ笑っている空先輩に曖昧に頷いた。
「せ、先輩、近くないですか?」
「だってこれだけ近付かないと僕落ちちゃうよ」
そう言われ、俺は口をつぐむ。だってそれを言われたら文句言えないから。
俺は壁際でその隣に空先輩が横になっている。ともかく距離が近くて、先輩の息がかかる程だ。居心地が悪くて体を動かして反対側を向く。
「ひゃあっ」
ススッと何かが俺の腰からお尻を撫でた。驚いて振り返る。そこにはニヤニヤといたずらっ子の笑いを浮かべた空先輩がいた。
「な、何するんですか!?」
「ごめんごめん。手が当たっちゃって」
悪びれもなく謝る空先輩に俺は喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。もう少しのところで良くない言葉が出そうだった。俺は睨みつつ、また空先輩とは別の方向を向く。すると今度はは服の間に手が侵入してきて、腹周りを這う。
「あっ!っ、う……!」
両手で口を押さえ、声が漏れないようにする。そのせいで抵抗が出来ず、空先輩の手はどんどん上に上がってきた。
やだっ!なんで……!?やめて……!!
「感じてる?晴君」
「やっ!」
耳元で艶やかな声で囁かれビクッと肩を震わす。
その時、先輩の指が俺の乳首にカリッと刺激を与えた。
「あ、んっ」
「もしかして晴君の乳首、陥没してる?」
そう指摘され、俺の顔に一気に熱が集中した。何も刺激していないのに、言葉を発しない俺に図星だと気づく空先輩。
「可愛い、晴君」
なんでそんな事言うの……!!!?
「やめてくださいっ!」
俺は体を起こして空先輩を睨む。
だいたいおかしいんだ。聞いた話によると空先輩は抱く側じゃなくて、抱かれる側らしい。つまり、俺にしたような事をする側じゃなくてされる側。だというのにこんな事をするなんて……!
「遊びでもいたずらでも、こんな事はやめてください!」
「えぇ~、それは無理」
「なっ」
本気な俺に対し、空先輩はひょうきんな態度。意味が分からない、と苛立ってしまう。
空先輩も起き上がり、俺と向かい合う。ベッドサイドのミニ電球がほのかに辺りを照らしている。うっすらと見える空先輩の顔は先ほどの発言からは想像出来ない程真剣味を帯びていた。
「僕ね、晴君の事好きだよ」
唐突の告白に、俺はどういう反応をして良いか分からずただ黙り込む。“好き”がどういうものなのか分からない。
「プリンを買ったのだって晴君と同じ時間を過ごす為の口実」
俯いていて表情はよく読み取れないけれど、空先輩がふざけている訳ではないという事は声から分かる。
「泊まっていいかって聞いて、オッケーもらった時、ショックだった。
晴君に男として意識してないって言われてるみたいだった」
正直空先輩はとても仲がいい先輩としか思っていなかった。だから、否定なんて出来るはずがなかった。
「同じ部屋で、同じベッドで一夜を共にするのになんも思わない。そんなの許せなかった。
だから__」
突然、自分の周りの影が濃くなった。いつの間にか下がっていた顔を上げると、瞬きをする間もなく、唇が重なってた。
「んぅっ!……っ、は、んっ…ゃあ……!」
絡め取られる舌。離れないよう固定された頭。離さないとでも言いたげな強い力。クチュ、クチュと耳を塞ぎたくなる水音。全て、ちっとも想像していなかった。
口付けられたままベッドに倒され、更に抵抗出来なくなる。
「ふ、ぅ……はっ、ぁ…ん……!」
やっと離された唇。口の端から唾液が垂れる。空先輩はそれを拭い、舐めた。
呼吸するのでいっぱいいっぱいで、反論も反抗も出来ない。
「キスは初めてじゃないよね?
だったら、これは?」
するりと服に入って来た空先輩の指先が、先ほどと同じように乳首に触れた。
「んっ、い、たぃ……!」
「痛いだけじゃないよね?だって晴君の乳首、反応してる。気持ちいいんでしょ?」
「違っ!」
つままれ、軽く引っ張られ、刺激を受けた乳首は本当に痛みしかない。ぶんぶんと顔を勢いよく横に振って嫌だ、違う、と反応を示す。
空先輩はふぅんと冷たく言った。
「強情だね。見てみたら分かるよ」
バッと突然服をたくしあげられ、俺の胸が露になった。
「あっ……!」
羞恥心が体中を巡り、泣きたくなった。
なんで俺がこんな事されなきゃならないの。俺がどんな悪い事をしたっていうの。
「舐めたら出てくるかな、乳首」
空先輩は妖しく笑い、赤い舌を出した。俺の凹んだ所に入れ込み、小さく動かす。
「あっ、あ、ぅ…!ひ、ゃだ…、んぅ」
「その反応いいね。もっとナいて」
知らないっ。知らない……!こんな空先輩知らない!!俺が空先輩を泊めたからいけないの?俺が全部悪いの?分かんないよ……!俺は、空先輩のそんな言葉が欲しいんじゃない!
「っ……」
ぼろぼろと涙が溢れた。何も抵抗出来ない自分の未熟さが嫌だ。空先輩があんな事をするのも嫌だ。もう、どうすればいいの……?
ピタリと手と舌の動きが止まった。空先輩はゆっくり離れて、まくられた服を戻してくれる。スッと俺の涙をすくい、ごめんね、と弱々しく謝った。
「どんなに泣いても止めないつもりだったけど、無理。晴君に泣かれるなんてつらいよ」
悲しそうに笑う空先輩。初めて見る顔だった。
「僕、自分の部屋に帰るね」
「あっ」
思わず伸ばした手は何も掴むことなどなく、ただ行き場を失う。そのまま引き止める事が出来ず、無情にもドアが閉まった。
あれ。また、このパターン。俺は理由も聞けず、ただ固まってるだけ。それで、いっぱい相手につらい思いさせて、悩ませるんだ。
また、それをするの?
俺もまた同じ思いをするの?
俺は気付いたら駆け出していた。
ドアを開け、飛び出す。そして、前を歩くその人のその手を掴んだ。驚き振り返った空先輩に俺は思いの丈を口にした。
「俺、怒ってません。痛かったし、怖かったけど、それより、理由を聞けない方が嫌です。
だから、お願いだから、空先輩が思ってる事教えてくださいっ」
目を見開く空先輩。今にも泣きそうな顔だった。
「晴君……」
名前を呼ばれたかと思ったら突然抱き締められる。でも、反抗はしなかった。何も言わなかった。
「……晴君が好き過ぎて苦しい。
俺を意識しない晴君がもどかしい。
泣いても、無理矢理僕のものにしてしまおうって思うくらい、好きだよ。
絶対に嫌われたくない……!」
ギュ、と空先輩の背中に回る腕に力が入った。
グス、と空先輩の泣くような声が、ただ心地よく感じられた。
定期委員会が終わり、生徒会室に入ると、空先輩の元気な声に出迎えられた。
それに対して、あぁ、とだけ言い、副会長はただいま戻りました、と社交辞令のごとく返事。中尾先輩は俯いてペコリと頭を下げた。
会長は冷た過ぎでしょ……。せっかく出迎えてくれたのに、あぁ、だけって……。
まあでも、今の会長の機嫌はすこぶる悪い。
というのも先ほどの定期委員会で論争だと銘打って敦先輩と言い争いをしているからだ。
会長は敦先輩の言葉ひとつひとつにちゃちゃを入れる。会長の敦先輩の嫌いようは半端じゃないみたい。
どうしてそんなに嫌っているんだろう。
ともかく、そういう訳で会長はものすごく不機嫌。
副会長は会長と敦先輩の論争をいちいち止めなければならなかったから疲れているみたい。
副会長も大変だな……。
「ねぇねぇ」
一人苦笑しているとクイクイと袖を引かれる。そちらを見ると、椅子に腰かけた空先輩が俺を見上げている。空先輩は人差し指を使ってこっちに近付くよう指示した。俺はそれに従い、その場にかがみ、空先輩の言葉に耳を貸す。
「会長、何があったの?
めっちゃ機嫌悪いみたいなんだけど」
声を潜め、空先輩は言う。
俺は、敦先輩と論争を繰り広げたんです、と割愛して答えた。すると空先輩は驚いた顔をした。
「今喧嘩禁止令出てなかったっけ」
「そうなんですけど……論争は喧嘩じゃないって言われまして」
その言葉に今度は空先輩が苦笑を漏らした。
空先輩は明るくて、生徒会のメンバーの中では一番話しやすい方だ。にこにことした笑顔を絶やさずフレンドリー。イタズラ好きな面もあるけれど、とてもいい先輩だ。
「そうだ。晴君がこの間言ってたプリン、買ったんだ!
晴君の分も買ったから良かったら今夜届けに行こうか?」
嬉々とした様子で話す空先輩。
俺は思わぬ提案にえっと驚く。
この間言ってたプリンというのはもちろん覚えがある。学園の近くにあるケーキ屋さんの一日三十個限定のプリン。甘くて美味しいからすごく人気ですぐに売り切れてしまう。それプラスすごく高い。一個千円程で、俺にはなかなか手が出しづらいものだ。
「いいんですか?いただいても」
「もちろん!晴君の為に買ったんだから」
にこりと笑いかけられ、わあ!と興奮してしまう。
嬉しい!甘いものが大好きな俺に最高のご褒美。
「じゃあ今日、晴君の部屋に行くね?」
「分かりました!待ってますね」
「お邪魔しまーす」
「どうぞ~」
インターホンが鳴り、ドアを開けると思っていた通り、空先輩がそこにいた。俺は部屋に招き入れ、どうぞ、と椅子に座るように促して冷たい麦茶を注いだコップを置く。空先輩はありがと、とお礼を言って手に持っていた袋から例のプリンを出した。
「ふわぁ~!美味しそうですね!」
空先輩の向かい側に座りながら綺麗な薄めの黄色のプリンを見て俺の心は踊る。そんな俺を見て空先輩はクスクス笑った。
「ふふっ、晴君めちゃくちゃ嬉しそう。じゃあ早速食べようっ」
いただきます、と手を合わせ、プリンの封を切る。すぐに甘い香りが俺の鼻をくすぐる。スプーンですくうとプルプルと揺れて、更に食欲をそそる。
ふわぁ~!!美味しそう!!
一口目を口に含む。その途端、甘さが口いっぱいに広がった。
「美味しいです!」
「そうだね。僕も初めてあそこのプリン食べるけど、絶品だ!」
俺達はあっという間にプリンを平らげた。麦茶を飲みながら雑談をする。
「なんだか眠くなってきたね」
そう言って空先輩はあくびをして、目尻の涙を拭う。それが移ったのか俺もあくびをしてしまう。
「明日の朝ってゆっくり出来るよね?」
「はい。学校休みですから」
そう答えた俺に空先輩はニシシと笑った。
「だったら今夜はここに泊まっていっちゃおうかな」
「え?」
泊まっていく?
「泊まるのは構いませんが、俺の部屋、ベッド一つしかないですよ?」
「全然いいよ」
俺は首を傾げながら、何故かにこにこ笑っている空先輩に曖昧に頷いた。
「せ、先輩、近くないですか?」
「だってこれだけ近付かないと僕落ちちゃうよ」
そう言われ、俺は口をつぐむ。だってそれを言われたら文句言えないから。
俺は壁際でその隣に空先輩が横になっている。ともかく距離が近くて、先輩の息がかかる程だ。居心地が悪くて体を動かして反対側を向く。
「ひゃあっ」
ススッと何かが俺の腰からお尻を撫でた。驚いて振り返る。そこにはニヤニヤといたずらっ子の笑いを浮かべた空先輩がいた。
「な、何するんですか!?」
「ごめんごめん。手が当たっちゃって」
悪びれもなく謝る空先輩に俺は喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。もう少しのところで良くない言葉が出そうだった。俺は睨みつつ、また空先輩とは別の方向を向く。すると今度はは服の間に手が侵入してきて、腹周りを這う。
「あっ!っ、う……!」
両手で口を押さえ、声が漏れないようにする。そのせいで抵抗が出来ず、空先輩の手はどんどん上に上がってきた。
やだっ!なんで……!?やめて……!!
「感じてる?晴君」
「やっ!」
耳元で艶やかな声で囁かれビクッと肩を震わす。
その時、先輩の指が俺の乳首にカリッと刺激を与えた。
「あ、んっ」
「もしかして晴君の乳首、陥没してる?」
そう指摘され、俺の顔に一気に熱が集中した。何も刺激していないのに、言葉を発しない俺に図星だと気づく空先輩。
「可愛い、晴君」
なんでそんな事言うの……!!!?
「やめてくださいっ!」
俺は体を起こして空先輩を睨む。
だいたいおかしいんだ。聞いた話によると空先輩は抱く側じゃなくて、抱かれる側らしい。つまり、俺にしたような事をする側じゃなくてされる側。だというのにこんな事をするなんて……!
「遊びでもいたずらでも、こんな事はやめてください!」
「えぇ~、それは無理」
「なっ」
本気な俺に対し、空先輩はひょうきんな態度。意味が分からない、と苛立ってしまう。
空先輩も起き上がり、俺と向かい合う。ベッドサイドのミニ電球がほのかに辺りを照らしている。うっすらと見える空先輩の顔は先ほどの発言からは想像出来ない程真剣味を帯びていた。
「僕ね、晴君の事好きだよ」
唐突の告白に、俺はどういう反応をして良いか分からずただ黙り込む。“好き”がどういうものなのか分からない。
「プリンを買ったのだって晴君と同じ時間を過ごす為の口実」
俯いていて表情はよく読み取れないけれど、空先輩がふざけている訳ではないという事は声から分かる。
「泊まっていいかって聞いて、オッケーもらった時、ショックだった。
晴君に男として意識してないって言われてるみたいだった」
正直空先輩はとても仲がいい先輩としか思っていなかった。だから、否定なんて出来るはずがなかった。
「同じ部屋で、同じベッドで一夜を共にするのになんも思わない。そんなの許せなかった。
だから__」
突然、自分の周りの影が濃くなった。いつの間にか下がっていた顔を上げると、瞬きをする間もなく、唇が重なってた。
「んぅっ!……っ、は、んっ…ゃあ……!」
絡め取られる舌。離れないよう固定された頭。離さないとでも言いたげな強い力。クチュ、クチュと耳を塞ぎたくなる水音。全て、ちっとも想像していなかった。
口付けられたままベッドに倒され、更に抵抗出来なくなる。
「ふ、ぅ……はっ、ぁ…ん……!」
やっと離された唇。口の端から唾液が垂れる。空先輩はそれを拭い、舐めた。
呼吸するのでいっぱいいっぱいで、反論も反抗も出来ない。
「キスは初めてじゃないよね?
だったら、これは?」
するりと服に入って来た空先輩の指先が、先ほどと同じように乳首に触れた。
「んっ、い、たぃ……!」
「痛いだけじゃないよね?だって晴君の乳首、反応してる。気持ちいいんでしょ?」
「違っ!」
つままれ、軽く引っ張られ、刺激を受けた乳首は本当に痛みしかない。ぶんぶんと顔を勢いよく横に振って嫌だ、違う、と反応を示す。
空先輩はふぅんと冷たく言った。
「強情だね。見てみたら分かるよ」
バッと突然服をたくしあげられ、俺の胸が露になった。
「あっ……!」
羞恥心が体中を巡り、泣きたくなった。
なんで俺がこんな事されなきゃならないの。俺がどんな悪い事をしたっていうの。
「舐めたら出てくるかな、乳首」
空先輩は妖しく笑い、赤い舌を出した。俺の凹んだ所に入れ込み、小さく動かす。
「あっ、あ、ぅ…!ひ、ゃだ…、んぅ」
「その反応いいね。もっとナいて」
知らないっ。知らない……!こんな空先輩知らない!!俺が空先輩を泊めたからいけないの?俺が全部悪いの?分かんないよ……!俺は、空先輩のそんな言葉が欲しいんじゃない!
「っ……」
ぼろぼろと涙が溢れた。何も抵抗出来ない自分の未熟さが嫌だ。空先輩があんな事をするのも嫌だ。もう、どうすればいいの……?
ピタリと手と舌の動きが止まった。空先輩はゆっくり離れて、まくられた服を戻してくれる。スッと俺の涙をすくい、ごめんね、と弱々しく謝った。
「どんなに泣いても止めないつもりだったけど、無理。晴君に泣かれるなんてつらいよ」
悲しそうに笑う空先輩。初めて見る顔だった。
「僕、自分の部屋に帰るね」
「あっ」
思わず伸ばした手は何も掴むことなどなく、ただ行き場を失う。そのまま引き止める事が出来ず、無情にもドアが閉まった。
あれ。また、このパターン。俺は理由も聞けず、ただ固まってるだけ。それで、いっぱい相手につらい思いさせて、悩ませるんだ。
また、それをするの?
俺もまた同じ思いをするの?
俺は気付いたら駆け出していた。
ドアを開け、飛び出す。そして、前を歩くその人のその手を掴んだ。驚き振り返った空先輩に俺は思いの丈を口にした。
「俺、怒ってません。痛かったし、怖かったけど、それより、理由を聞けない方が嫌です。
だから、お願いだから、空先輩が思ってる事教えてくださいっ」
目を見開く空先輩。今にも泣きそうな顔だった。
「晴君……」
名前を呼ばれたかと思ったら突然抱き締められる。でも、反抗はしなかった。何も言わなかった。
「……晴君が好き過ぎて苦しい。
俺を意識しない晴君がもどかしい。
泣いても、無理矢理僕のものにしてしまおうって思うくらい、好きだよ。
絶対に嫌われたくない……!」
ギュ、と空先輩の背中に回る腕に力が入った。
グス、と空先輩の泣くような声が、ただ心地よく感じられた。
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