4 / 7
羊たちの晩餐
しおりを挟む
礼拝堂を出て今日きた信者はそれぞれ部屋が割り与えられる。想定通りトウヤと同じ部屋割りとなった。無言で頷き合い、部屋を見るふりをして監視カメラや盗聴器、天井穴やどこかに人が入れるスペースがないか反響を頼りに調査。今のところ何もないことはわかったがまだ夫婦の仮面は崩さない。トウヤに部屋に戻ってもらい、お隣に挨拶に行く。
「あら、ご夫婦で?仲がよろしいのね!私ったらもう夫がひどくてね、ここに逃げてきたのよ!まだよくわからないけど衣食住に救い付きでしょ~」
お隣さんはおしゃべりな女性だった。救いをおやつ感覚で語ってるのはまだ染まりきっていない証だ、多分。本土がこの人にとっての地獄だったようだが、縋って逃げてきたのだろう。そんな人も騙して何らかの事件に巻き込んでいる可能性は高い。しかしこの噂好きそうな好奇心の光る目と止まらないしゃべり、何かがこの人に聞こえたら噂として広まる危険性があることだけ念頭に置いておこう。
しかし、こう言う人には情報もまた集まっていくものだ。
「明日から神への奉仕活動が割り振られるんですって~。奉仕って言うからにはお祈りとかするのかしらねぇ、まだここが長い人とは話せてなくてはやく知りたいわぁ~」
「それは気になりますね」
適当に相槌を打ち、トウヤの元へ帰る。女性の会話は筒抜け私の声量を控えた時は聞き取れないほどだったそうだ。部屋を介しての盗聴も声量を気をつければ問題なさそうだ。暗号で筆談をしていると鐘が鳴り響く。ノックがされてドアを開けて応対すると先ほどの女性が立っていた。
「お夕飯ですって、全員で食べるなんて学校とか思い出すわね~。あら、旦那さん!どうも、邪魔しちゃ悪いわね!またあとで」
親切な隣人に感謝を示しトウヤと二人で食堂に向かうことにした。
食堂は広く信者がひしめき合っている。何もかも管理されているようだが誰も疑問をもたないことこそがここの歪さだ。心なしか信者がそわそわしているように見える。食事を置いて席についてもまるで早く食べたいと訴えるように視線は落ち着かない。ここは食事が十分量もらえず飢えているのか。質素ではあるがそこまで飢餓感を覚えるようなものではないと感じる。むしろこの硬くて口の中の水分を持ってかれそうなパンは随分とお腹に溜まりそうだ。そんな落ち着きのない空気の中、静かな足音にシーンと食堂が静まり返る。
長い銀髪を王冠のように編み、清廉な百合のようでありながらも金刺繍で彩られたドレス。無機質で人形のように整いすぎている顔。そんな少女がたくさんの巫女であろう女性に傅かれながら食堂中央のステージに立つ。そして小鳥が謳うように祝詞を捧げる。
「天の言葉を、この身に。
清き恵みを、この命に。
主が選びし子らよ、祈り、従い、満たされなさい。
神は、常にあなたの傍に在らん。」
悍ましいほどに静謐な美貌はにこりと微笑む。少女の姿が見えなくなる。それを合図に信者たちの食事、否、給餌が始まった。
パンをちぎり詰め込み、スープを荒々しくかきこむ。そこに神への感謝などなくむしろ神でさえも喰らいつくさんばかりの貪欲と恍惚。今日きたものたちは少し怯えていたものの少しずつスプーンを進める速度が早くなっていく。食器がガチガチと当たる不快な音がどんどん食堂全体にこだまし共鳴していく。やはりおかしい。スープを飲んだふりをしてガーゼハンカチに含ませながら信者たちの異様な食事を観察することしかできなかった。
「あら、ご夫婦で?仲がよろしいのね!私ったらもう夫がひどくてね、ここに逃げてきたのよ!まだよくわからないけど衣食住に救い付きでしょ~」
お隣さんはおしゃべりな女性だった。救いをおやつ感覚で語ってるのはまだ染まりきっていない証だ、多分。本土がこの人にとっての地獄だったようだが、縋って逃げてきたのだろう。そんな人も騙して何らかの事件に巻き込んでいる可能性は高い。しかしこの噂好きそうな好奇心の光る目と止まらないしゃべり、何かがこの人に聞こえたら噂として広まる危険性があることだけ念頭に置いておこう。
しかし、こう言う人には情報もまた集まっていくものだ。
「明日から神への奉仕活動が割り振られるんですって~。奉仕って言うからにはお祈りとかするのかしらねぇ、まだここが長い人とは話せてなくてはやく知りたいわぁ~」
「それは気になりますね」
適当に相槌を打ち、トウヤの元へ帰る。女性の会話は筒抜け私の声量を控えた時は聞き取れないほどだったそうだ。部屋を介しての盗聴も声量を気をつければ問題なさそうだ。暗号で筆談をしていると鐘が鳴り響く。ノックがされてドアを開けて応対すると先ほどの女性が立っていた。
「お夕飯ですって、全員で食べるなんて学校とか思い出すわね~。あら、旦那さん!どうも、邪魔しちゃ悪いわね!またあとで」
親切な隣人に感謝を示しトウヤと二人で食堂に向かうことにした。
食堂は広く信者がひしめき合っている。何もかも管理されているようだが誰も疑問をもたないことこそがここの歪さだ。心なしか信者がそわそわしているように見える。食事を置いて席についてもまるで早く食べたいと訴えるように視線は落ち着かない。ここは食事が十分量もらえず飢えているのか。質素ではあるがそこまで飢餓感を覚えるようなものではないと感じる。むしろこの硬くて口の中の水分を持ってかれそうなパンは随分とお腹に溜まりそうだ。そんな落ち着きのない空気の中、静かな足音にシーンと食堂が静まり返る。
長い銀髪を王冠のように編み、清廉な百合のようでありながらも金刺繍で彩られたドレス。無機質で人形のように整いすぎている顔。そんな少女がたくさんの巫女であろう女性に傅かれながら食堂中央のステージに立つ。そして小鳥が謳うように祝詞を捧げる。
「天の言葉を、この身に。
清き恵みを、この命に。
主が選びし子らよ、祈り、従い、満たされなさい。
神は、常にあなたの傍に在らん。」
悍ましいほどに静謐な美貌はにこりと微笑む。少女の姿が見えなくなる。それを合図に信者たちの食事、否、給餌が始まった。
パンをちぎり詰め込み、スープを荒々しくかきこむ。そこに神への感謝などなくむしろ神でさえも喰らいつくさんばかりの貪欲と恍惚。今日きたものたちは少し怯えていたものの少しずつスプーンを進める速度が早くなっていく。食器がガチガチと当たる不快な音がどんどん食堂全体にこだまし共鳴していく。やはりおかしい。スープを飲んだふりをしてガーゼハンカチに含ませながら信者たちの異様な食事を観察することしかできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
【完】貴方達が出ていかないと言うのなら、私が出て行きます!その後の事は知りませんからね
さこの
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者は伯爵家の次男、ジェラール様。
私の家は侯爵家で男児がいないから家を継ぐのは私です。お婿さんに来てもらい、侯爵家を未来へ繋いでいく、そう思っていました。
全17話です。
執筆済みなので完結保証( ̇ᵕ ̇ )
ホットランキングに入りました。ありがとうございますペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
2021/10/04
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました
チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。
そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。
そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。
彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。
ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。
それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる