face/face ―彼の名はまだ、希望か絶望かも知らない―

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羊たちの晩餐

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 礼拝堂を出て今日きた信者はそれぞれ部屋が割り与えられる。想定通りトウヤと同じ部屋割りとなった。無言で頷き合い、部屋を見るふりをして監視カメラや盗聴器、天井穴やどこかに人が入れるスペースがないか反響を頼りに調査。今のところ何もないことはわかったがまだ夫婦の仮面は崩さない。トウヤに部屋に戻ってもらい、お隣に挨拶に行く。

「あら、ご夫婦で?仲がよろしいのね!私ったらもう夫がひどくてね、ここに逃げてきたのよ!まだよくわからないけど衣食住に救い付きでしょ~」

 お隣さんはおしゃべりな女性だった。救いをおやつ感覚で語ってるのはまだ染まりきっていない証だ、多分。本土がこの人にとっての地獄だったようだが、縋って逃げてきたのだろう。そんな人も騙して何らかの事件に巻き込んでいる可能性は高い。しかしこの噂好きそうな好奇心の光る目と止まらないしゃべり、何かがこの人に聞こえたら噂として広まる危険性があることだけ念頭に置いておこう。
 しかし、こう言う人には情報もまた集まっていくものだ。

「明日から神への奉仕活動が割り振られるんですって~。奉仕って言うからにはお祈りとかするのかしらねぇ、まだここが長い人とは話せてなくてはやく知りたいわぁ~」

「それは気になりますね」

 適当に相槌を打ち、トウヤの元へ帰る。女性の会話は筒抜け私の声量を控えた時は聞き取れないほどだったそうだ。部屋を介しての盗聴も声量を気をつければ問題なさそうだ。暗号で筆談をしていると鐘が鳴り響く。ノックがされてドアを開けて応対すると先ほどの女性が立っていた。

「お夕飯ですって、全員で食べるなんて学校とか思い出すわね~。あら、旦那さん!どうも、邪魔しちゃ悪いわね!またあとで」

 親切な隣人に感謝を示しトウヤと二人で食堂に向かうことにした。

 食堂は広く信者がひしめき合っている。何もかも管理されているようだが誰も疑問をもたないことこそがここの歪さだ。心なしか信者がそわそわしているように見える。食事を置いて席についてもまるで早く食べたいと訴えるように視線は落ち着かない。ここは食事が十分量もらえず飢えているのか。質素ではあるがそこまで飢餓感を覚えるようなものではないと感じる。むしろこの硬くて口の中の水分を持ってかれそうなパンは随分とお腹に溜まりそうだ。そんな落ち着きのない空気の中、静かな足音にシーンと食堂が静まり返る。

 長い銀髪を王冠のように編み、清廉な百合のようでありながらも金刺繍で彩られたドレス。無機質で人形のように整いすぎている顔。そんな少女がたくさんの巫女であろう女性に傅かれながら食堂中央のステージに立つ。そして小鳥が謳うように祝詞を捧げる。

「天の言葉を、この身に。
清き恵みを、この命に。
主が選びし子らよ、祈り、従い、満たされなさい。
神は、常にあなたの傍に在らん。」

 悍ましいほどに静謐な美貌はにこりと微笑む。少女の姿が見えなくなる。それを合図に信者たちの食事、否、給餌が始まった。
 パンをちぎり詰め込み、スープを荒々しくかきこむ。そこに神への感謝などなくむしろ神でさえも喰らいつくさんばかりの貪欲と恍惚。今日きたものたちは少し怯えていたものの少しずつスプーンを進める速度が早くなっていく。食器がガチガチと当たる不快な音がどんどん食堂全体にこだまし共鳴していく。やはりおかしい。スープを飲んだふりをしてガーゼハンカチに含ませながら信者たちの異様な食事を観察することしかできなかった。
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