5 / 11
第一の森
しおりを挟む
「よし、怪我人は無しと。」
隊士全員の無事を確認し、あとは報告のみといったところだが気掛かりが他にあった。隊長よりも誰よりも近く敬う優しい存在。
「班長、大丈夫かな..?」
今朝からの異常は何となくわかっていたが、軽い風邪だと言われ誤魔化された。医療班長として体調を崩すのは恥だという考えが強くある為誰よりも健康管理を怠らない彼が風邪に侵されるとは考え難かった。
「ふぅ..」「班長!」
心配していた矢先、広間へ戻ってきた。
「平気ですか?」
「ん、あぁ..大丈夫だよ。
ごめんね心配かけて」
「……ええ、僕は..別に。」
「代わってくれて有難う、隊長に報告してくるよ。」
「…ええ、お願いします。」
やはり何か変だ
謝るほど体調に隙を見せる筈は無い。やはり何か、大きな事をひた隠しにしているに違い無い、そう睨んだ
「出発するぞ、準備を施せ」
体制を整え隊列を組む、ここから更なる脅威へと足を踏み入れる事になるだろう。
「ぐっ..!」「大丈夫ですか、班長!?」
「……うん、大丈夫だよ..」
胸を押さえて苦しんでいるが、最早詮索をしても正直には話さないだろう。医療班の部下は見て見ぬフリをし、治療を放棄する事にした。
「……木が多いな、まるで森みてぇだ。」
山の過酷さに相まって、景色までもが感覚を錯覚させる。木目がこちらを睨みつけているようにも見える。
『みてぇってなんだ? ここは森だぜ!?』
「なんだ!?」
深く刺さるような重低音の響き、木々を掻き分け直接
体内に声を流しているのだろうか。そう錯覚させる
「早速か..次は何だ」
地形を森に変えるのは妖術か、山に住みながら好みが森とは捻くれたものだ。
『手前ぇが主格か?』
「...見て分からないとは、余程盲目なのだな」
『けっ、いちいち区別なんざ付けるかよ。
どうせてめぇらは違う事なく死体の山になるんだ!』
森の闇から姿を現したのは、異形な獣。
顔は猿のように表情が伺え胴体は狸のように丸く太く手足は虎のような強靭さを誇る。
「貴様、ヌエか..」
『わかってんじゃねぇか! 話が早ぇっ!!』
木の上に登り尾を振り回し、何かの液体を散布する。
「何だこれ、何かを撒いたぞ!」
『……カパッ..』「…ん?」
隊士の一人が尾を観察すると、先端がぱっくりと割れ細い舌が隙間から細やかに動いているのが見えた。
「ヘビ...こいつ尻尾が蛇だぞ!!」
「だとすれば毒かっ!」
咄嗟に他の隊士が近くにいた隊士を盾にして毒を防ぐ
「うぅああぁぁっ~!? 何してんだお前ぇ~!!」
背負っていた河童の甲羅に毒が付着すると、見るも無惨に形を崩して溶かされていく。
「脱げ! 今すぐ脱げそれっ!!」
『あっひゃっひゃっひゃっ!!
面白いねぇ、ヒトゴロシってのはよぉっ!?』
明らかにハイになっている。
まるで薬に狂った廃人のようだ、やはりこの獣も先程の鬼のように山の影響を受けているのだろうか?
「..おい、貴様」『…あぁ、なんだよ?』
「一体何があった?
この山も貴様らも、様子がおかしいだろう」
訪れた脅威に対しての疑問を問うのに最も適した相手は脅威そのもの、はぐらかされたなら斬ればいい。随分と簡単な作業である。
『何があったかだと?
..あぁ、てめぇは気が付いてんのか。そうだなぁ..言ってみりゃあ〝不死の呪い〟ってところか』
「不死の呪い? 何だソリャ?」
「何だっていい、斬る事には変わらん」
『だから死なねぇって云ってんだろがっ!』
蛇の尾を向け先端から毒を撒く、しかし散布される事はなく目の前で打ち止め隊士達は無傷。
『…あ? どうなってやがる?』
「..よく見ろ獣、お前の尾は既に〝死んでいる〟ぞ」
頭が斬られ胴体のみの蛇が血を流してぶら下がっている。毒を撒き散らすより早く、蛇が舌を鳴らすより早く首を斬り落とした。
『..やるじゃねぇか、お前だけ来いっ!』
「いいだろう、そっちの方が手っ取り早い。」
『へっ!』
虎の腕に抱き抱えられ、森の奥へと誘われる。
幻想はより深く、色濃く斬れ味を増していく
隊士全員の無事を確認し、あとは報告のみといったところだが気掛かりが他にあった。隊長よりも誰よりも近く敬う優しい存在。
「班長、大丈夫かな..?」
今朝からの異常は何となくわかっていたが、軽い風邪だと言われ誤魔化された。医療班長として体調を崩すのは恥だという考えが強くある為誰よりも健康管理を怠らない彼が風邪に侵されるとは考え難かった。
「ふぅ..」「班長!」
心配していた矢先、広間へ戻ってきた。
「平気ですか?」
「ん、あぁ..大丈夫だよ。
ごめんね心配かけて」
「……ええ、僕は..別に。」
「代わってくれて有難う、隊長に報告してくるよ。」
「…ええ、お願いします。」
やはり何か変だ
謝るほど体調に隙を見せる筈は無い。やはり何か、大きな事をひた隠しにしているに違い無い、そう睨んだ
「出発するぞ、準備を施せ」
体制を整え隊列を組む、ここから更なる脅威へと足を踏み入れる事になるだろう。
「ぐっ..!」「大丈夫ですか、班長!?」
「……うん、大丈夫だよ..」
胸を押さえて苦しんでいるが、最早詮索をしても正直には話さないだろう。医療班の部下は見て見ぬフリをし、治療を放棄する事にした。
「……木が多いな、まるで森みてぇだ。」
山の過酷さに相まって、景色までもが感覚を錯覚させる。木目がこちらを睨みつけているようにも見える。
『みてぇってなんだ? ここは森だぜ!?』
「なんだ!?」
深く刺さるような重低音の響き、木々を掻き分け直接
体内に声を流しているのだろうか。そう錯覚させる
「早速か..次は何だ」
地形を森に変えるのは妖術か、山に住みながら好みが森とは捻くれたものだ。
『手前ぇが主格か?』
「...見て分からないとは、余程盲目なのだな」
『けっ、いちいち区別なんざ付けるかよ。
どうせてめぇらは違う事なく死体の山になるんだ!』
森の闇から姿を現したのは、異形な獣。
顔は猿のように表情が伺え胴体は狸のように丸く太く手足は虎のような強靭さを誇る。
「貴様、ヌエか..」
『わかってんじゃねぇか! 話が早ぇっ!!』
木の上に登り尾を振り回し、何かの液体を散布する。
「何だこれ、何かを撒いたぞ!」
『……カパッ..』「…ん?」
隊士の一人が尾を観察すると、先端がぱっくりと割れ細い舌が隙間から細やかに動いているのが見えた。
「ヘビ...こいつ尻尾が蛇だぞ!!」
「だとすれば毒かっ!」
咄嗟に他の隊士が近くにいた隊士を盾にして毒を防ぐ
「うぅああぁぁっ~!? 何してんだお前ぇ~!!」
背負っていた河童の甲羅に毒が付着すると、見るも無惨に形を崩して溶かされていく。
「脱げ! 今すぐ脱げそれっ!!」
『あっひゃっひゃっひゃっ!!
面白いねぇ、ヒトゴロシってのはよぉっ!?』
明らかにハイになっている。
まるで薬に狂った廃人のようだ、やはりこの獣も先程の鬼のように山の影響を受けているのだろうか?
「..おい、貴様」『…あぁ、なんだよ?』
「一体何があった?
この山も貴様らも、様子がおかしいだろう」
訪れた脅威に対しての疑問を問うのに最も適した相手は脅威そのもの、はぐらかされたなら斬ればいい。随分と簡単な作業である。
『何があったかだと?
..あぁ、てめぇは気が付いてんのか。そうだなぁ..言ってみりゃあ〝不死の呪い〟ってところか』
「不死の呪い? 何だソリャ?」
「何だっていい、斬る事には変わらん」
『だから死なねぇって云ってんだろがっ!』
蛇の尾を向け先端から毒を撒く、しかし散布される事はなく目の前で打ち止め隊士達は無傷。
『…あ? どうなってやがる?』
「..よく見ろ獣、お前の尾は既に〝死んでいる〟ぞ」
頭が斬られ胴体のみの蛇が血を流してぶら下がっている。毒を撒き散らすより早く、蛇が舌を鳴らすより早く首を斬り落とした。
『..やるじゃねぇか、お前だけ来いっ!』
「いいだろう、そっちの方が手っ取り早い。」
『へっ!』
虎の腕に抱き抱えられ、森の奥へと誘われる。
幻想はより深く、色濃く斬れ味を増していく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる