不死の妖

アリエッティ

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第一の森

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 「よし、怪我人は無しと。」
 隊士全員の無事を確認し、あとは報告のみといったところだが気掛かりが他にあった。隊長よりも誰よりも近く敬う優しい存在。

「班長、大丈夫かな..?」
今朝からの異常は何となくわかっていたが、軽い風邪だと言われ誤魔化された。医療班長として体調を崩すのは恥だという考えが強くある為誰よりも健康管理を怠らない彼が風邪に侵されるとは考え難かった。

「ふぅ..」「班長!」
心配していた矢先、広間へ戻ってきた。

「平気ですか?」

「ん、あぁ..大丈夫だよ。
ごめんね心配かけて」

「……ええ、僕は..別に。」

「代わってくれて有難う、隊長に報告してくるよ。」

「…ええ、お願いします。」
やはり何か変だ
謝るほど体調に隙を見せる筈は無い。やはり何か、大きな事をひた隠しにしているに違い無い、そう睨んだ

「出発するぞ、準備を施せ」
体制を整え隊列を組む、ここから更なる脅威へと足を踏み入れる事になるだろう。

「ぐっ..!」「大丈夫ですか、班長!?」

「……うん、大丈夫だよ..」
胸を押さえて苦しんでいるが、最早詮索をしても正直には話さないだろう。医療班の部下は見て見ぬフリをし、治療を放棄する事にした。

「……木が多いな、まるで森みてぇだ。」
山の過酷さに相まって、景色までもが感覚を錯覚させる。木目がこちらを睨みつけているようにも見える。

『みてぇってなんだ? ここは森だぜ!?』

「なんだ!?」
深く刺さるような重低音の響き、木々を掻き分け直接
体内に声を流しているのだろうか。そう錯覚させる

「早速か..次は何だ」
地形を森に変えるのは妖術か、山に住みながら好みが森とは捻くれたものだ。

『手前ぇが主格か?』

「...見て分からないとは、余程盲目なのだな」

『けっ、いちいち区別なんざ付けるかよ。
どうせてめぇらは違う事なく死体の山になるんだ!』

森の闇から姿を現したのは、異形な獣。
顔は猿のように表情が伺え胴体は狸のように丸く太く手足は虎のような強靭さを誇る。

「貴様、ヌエか..」

『わかってんじゃねぇか! 話が早ぇっ!!』
木の上に登り尾を振り回し、何かの液体を散布する。

「何だこれ、何かを撒いたぞ!」

『……カパッ..』「…ん?」
隊士の一人が尾を観察すると、先端がぱっくりと割れ細い舌が隙間から細やかに動いているのが見えた。

「ヘビ...こいつ尻尾が蛇だぞ!!」

「だとすれば毒かっ!」
咄嗟に他の隊士が近くにいた隊士を盾にして毒を防ぐ

「うぅああぁぁっ~!? 何してんだお前ぇ~!!」
背負っていた河童の甲羅に毒が付着すると、見るも無惨に形を崩して溶かされていく。

「脱げ! 今すぐ脱げそれっ!!」

『あっひゃっひゃっひゃっ!!
面白いねぇ、ヒトゴロシってのはよぉっ!?』
明らかにハイになっている。
まるで薬に狂った廃人のようだ、やはりこの獣も先程の鬼のように山の影響を受けているのだろうか?

「..おい、貴様」『…あぁ、なんだよ?』

「一体何があった?
この山も貴様らも、様子がおかしいだろう」
訪れた脅威に対しての疑問を問うのに最も適した相手は脅威そのもの、はぐらかされたなら斬ればいい。随分と簡単な作業である。

『何があったかだと?
..あぁ、てめぇは気が付いてんのか。そうだなぁ..言ってみりゃあ〝不死の呪い〟ってところか』

「不死の呪い? 何だソリャ?」

「何だっていい、斬る事には変わらん」

『だから死なねぇって云ってんだろがっ!』
蛇の尾を向け先端から毒を撒く、しかし散布される事はなく目の前で打ち止め隊士達は無傷。

『…あ? どうなってやがる?』

「..よく見ろ獣、お前の尾は既に〝死んでいる〟ぞ」
頭が斬られ胴体のみの蛇が血を流してぶら下がっている。毒を撒き散らすより早く、蛇が舌を鳴らすより早く首を斬り落とした。

『..やるじゃねぇか、お前だけ来いっ!』

「いいだろう、そっちの方が手っ取り早い。」

『へっ!』
虎の腕に抱き抱えられ、森の奥へと誘われる。
幻想はより深く、色濃く斬れ味を増していく
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