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フロイライン

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路頭での迷い

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女子野球での活躍の場を失った優里は無為の日々をすごすようになっていた。

男子時代からずっと野球一筋で、性転換手術の前後の休養期間以外は趣味の時間などを持ったこともなかった。

だが、もう今は野球をする必要もなければ、その権利もない。

ただ、虚しい時間が過ぎていった。

その日は術後に月一で病院に定期検診に行く日で、優里は学校を早退して、一人で診察に訪れていた。

(学校にいるより少しは気がまぎれるわ)

優里は待合室でスマホを見つめながらため息をついた。

大学病院などというところは予約の時間に行っても名前を呼ばれる事はなく、一時間以上待たされる事もザラであった。

もう慣れっこになっていた優里はイライラする事もなくのんびりとした時間をすごしていた。


「優里ちゃん」

来て三十分ほど過ぎた頃だろうか、自分の名前を呼ぶ声が頭上から聞こえてきた。びっくりして顔を上げると




「あっ、花音さん」

声の主は、喜多村花音だった。

花音は二十歳の女性…そう、優里と同じくこの病院で性同一性障害の診断を下され手術を受けた元男性で、いわば同士であった。
優里に負けず劣らずの美しさで、どちらかといえば可愛い系の優里に対して、大人の美女と形容するのがぴったりの容姿をしていた。


この病院に通ううちに知り合った二人は互いを励まし合い、ほぼ同じ時期に手術を受けたのである。

大学生と高校生と、年齢差は少しあったが仲が良く、連絡を頻繁に取り合う仲となった。

ただ、優里が部活動で多忙になった為、最近は少し疎遠になっていた。


「久しぶりだねえ。元気にしてた?」

「はい。花音さんは?」

「まあまあね。
相変わらず体調が良くない時がたまにあるけどね

ところで野球の方はどうなの?」


「実は…」

優里は連盟に申請が却下され、大会に出られなくなった経緯を花音に話した。


「そうだったの…

酷い話だね。まだまだワタシらみたいな者を本当の意味で理解してくれる人って全然少ないよね。」


「仕方ないです。
当事者でないと、性同一性障害がどういうものなのか多分わかってもらえないと思うし」


「そうだね

あっ、優里ちゃん」

「はい?」

「野球部辞めたんだったら、自由な時間が出来たんじゃない?

診察終わったら、ウチに遊びに来ない?
ゆっくり話もしたいしね」


「はい。花音さんさえよければ、是非」

同じ境遇の花音と会えた事で、優里は少し気持ちが楽になった。
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