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西岡の話は、優里の心を少なからず動揺させた。
しかし、それに屈するのは絶対に違う…
優里は葛藤の中で苦しい選択に迫られていた。
その日は日課にしているオナニーもせず、暗い気持ちで夜のひとときを部屋で一人すごしていた。
「優里」
ドアをコンコンとノックして、つづいて母親の声が聞こえてきた。
「何?」
「富田君が来てるわよ」
「えっ」
大輔のやつ、遂に電話もせずにアポ無しで突撃してくるとは…相当切羽詰まってるんだな
優里は半ば呆れながら、玄関の扉を開けた。
「よぉ」
練習帰りの真っ黒に日焼けした顔に笑みを浮かべる大輔の姿があった。
「上がんなよ」
優里は大輔を家に上げ、部屋に連れて行った。
大輔は優里の母がお茶を出すと、頭を下げて礼を述べた。
そして、二人になると大輔は優里に顔を近づけ、話を始めた。
「水谷、あの」
「大輔、何回言われても…ワタシは」
「いや、そうじゃねえーんだ。
今日、理事長に変な事言われただろ?」
「あ、
うん、まあ」
「監督から俺もチラッと聞いたんだけど、そういうのでお前を脅すようなやり方は納得できない。」
「えっ」
「だから、理事長に言われた事は気にしないでくれよ。
俺の親父はたしかに理事長の経営する会社に入れてもらったけど、それは俺と学校との話で、お前には何の関係もない事だ。
だから、今日聞いた話は本当、無視してもらっていいからな。」
「大輔…」
「いや、あれから俺も色々考えてさあ
俺にとって野球は全てだけど、今のお前にはそうじゃないもんな。
それなのに無理矢理俺の思いをぶつけてしまって申し訳ないって思ってる。
だから、もう誘わないから安心してくれよ。」
「えっ」
「俺も最後の夏だし、自分に出来ることを精一杯やってみるから、お前も自分のやりたい事を頑張れよな。」
「…」
「水谷、お前は同い年で初めて俺がすごいって認めた奴なんだ
コイツ、すげって。
そんなすげえ奴と一緒に野球をしたいって勝手に思って、お前の事情も考えずにしつこく誘ったのは悪かったと思ってる。
まあ、あれだよ
これからも友達でいてくれよな」
大輔は照れくさそうにそう言うと立ち上がった。
「…」
「こんな時間に家まで来ちゃって悪かったな。
それじゃあ帰るわ」
優里は頷いて家の外まで一緒に出て、エレベーターで一階のエントランスのところで大輔を見送った。
大輔は重そうに部活のバッグを右肩で背負い直すと、左手を振ってそのまま去っていった。
優里はその後ろ姿をずっと見つめていたが、
「大輔!」
と、思わず叫び、もうかなり遠くまで行っていた大輔の元に走り出した。
大きく膨らんだ乳房が上下に揺れ、もう昔の自分ではないという事を自覚しながら…
「ん?どうした…」
「大輔、ワタシ…
野球をやる」
「えっ」
「どれだけ出来るかわかんないけど、やってみる」
「ど、どうしたんだ、急に」
「だって、ワタシも…
大輔と一緒に野球をしたいもん」
優里は大輔の胸に縋り付くようにして言うと、大輔はその反動でバッグを地面に落としてしまった。
こんなに間近で優里と接した事がなかった大輔は、優里から漂う女性特有の芳香に戸惑いながらも、翻意した優里の肩を持ち、気持ちの変化を喜んだ。
「本当にやってくれるのか…
だったらすごく嬉しい」
大輔は自分でもびっくりしたが、思わず涙が溢れ落ちてしまい、それを見た優里もまた大泣きした。
しかし、それに屈するのは絶対に違う…
優里は葛藤の中で苦しい選択に迫られていた。
その日は日課にしているオナニーもせず、暗い気持ちで夜のひとときを部屋で一人すごしていた。
「優里」
ドアをコンコンとノックして、つづいて母親の声が聞こえてきた。
「何?」
「富田君が来てるわよ」
「えっ」
大輔のやつ、遂に電話もせずにアポ無しで突撃してくるとは…相当切羽詰まってるんだな
優里は半ば呆れながら、玄関の扉を開けた。
「よぉ」
練習帰りの真っ黒に日焼けした顔に笑みを浮かべる大輔の姿があった。
「上がんなよ」
優里は大輔を家に上げ、部屋に連れて行った。
大輔は優里の母がお茶を出すと、頭を下げて礼を述べた。
そして、二人になると大輔は優里に顔を近づけ、話を始めた。
「水谷、あの」
「大輔、何回言われても…ワタシは」
「いや、そうじゃねえーんだ。
今日、理事長に変な事言われただろ?」
「あ、
うん、まあ」
「監督から俺もチラッと聞いたんだけど、そういうのでお前を脅すようなやり方は納得できない。」
「えっ」
「だから、理事長に言われた事は気にしないでくれよ。
俺の親父はたしかに理事長の経営する会社に入れてもらったけど、それは俺と学校との話で、お前には何の関係もない事だ。
だから、今日聞いた話は本当、無視してもらっていいからな。」
「大輔…」
「いや、あれから俺も色々考えてさあ
俺にとって野球は全てだけど、今のお前にはそうじゃないもんな。
それなのに無理矢理俺の思いをぶつけてしまって申し訳ないって思ってる。
だから、もう誘わないから安心してくれよ。」
「えっ」
「俺も最後の夏だし、自分に出来ることを精一杯やってみるから、お前も自分のやりたい事を頑張れよな。」
「…」
「水谷、お前は同い年で初めて俺がすごいって認めた奴なんだ
コイツ、すげって。
そんなすげえ奴と一緒に野球をしたいって勝手に思って、お前の事情も考えずにしつこく誘ったのは悪かったと思ってる。
まあ、あれだよ
これからも友達でいてくれよな」
大輔は照れくさそうにそう言うと立ち上がった。
「…」
「こんな時間に家まで来ちゃって悪かったな。
それじゃあ帰るわ」
優里は頷いて家の外まで一緒に出て、エレベーターで一階のエントランスのところで大輔を見送った。
大輔は重そうに部活のバッグを右肩で背負い直すと、左手を振ってそのまま去っていった。
優里はその後ろ姿をずっと見つめていたが、
「大輔!」
と、思わず叫び、もうかなり遠くまで行っていた大輔の元に走り出した。
大きく膨らんだ乳房が上下に揺れ、もう昔の自分ではないという事を自覚しながら…
「ん?どうした…」
「大輔、ワタシ…
野球をやる」
「えっ」
「どれだけ出来るかわかんないけど、やってみる」
「ど、どうしたんだ、急に」
「だって、ワタシも…
大輔と一緒に野球をしたいもん」
優里は大輔の胸に縋り付くようにして言うと、大輔はその反動でバッグを地面に落としてしまった。
こんなに間近で優里と接した事がなかった大輔は、優里から漂う女性特有の芳香に戸惑いながらも、翻意した優里の肩を持ち、気持ちの変化を喜んだ。
「本当にやってくれるのか…
だったらすごく嬉しい」
大輔は自分でもびっくりしたが、思わず涙が溢れ落ちてしまい、それを見た優里もまた大泣きした。
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