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フロイライン

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決戦前日

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明日の高島大附属との大一番を前に、咲聖ナインのモチベーションは否が応にも高まり、最高潮に達していた。

しかし、グランドに大輔、優里、岸の三名は姿が見えず、多数押しかけた取材陣がざわついたが…


その頃、三人は村上に呼ばれ、監督室を訪れていた。


「富田、水谷、岸

キミ達の活躍のおかげで、今まで一度も経験した事がなかった三回戦突破、そして準々、準決と勝ち進み、決勝まで辿り着いた。

本当によくやってくれた。」


「はいっ」

三人は自分たちを讃える村上に頭を下げた。

「キミ達をここへ呼んだのは他でもない…

明日の決勝についての事だ。」

「…」

「明日勝てば甲子園という事で、是が非でも勝ちたいというのは咲聖の人間なら皆が当然思っている事だ。

しかし、水谷は女子の肉体で男子に混じってやってきた事もあり、極端に疲れていると思う。

根性論を全面に出すなら、あと一試合を気合いで投げ抜けば、ひょっとしたら勝てるかもしれない。
しかし、故障の危険も飛躍的に上がってしまうだろう。

だから、キミ達には予め言っておくが、明日の試合は水谷は投げさせない。
たとえ、接戦になっても、だ。」

「…」

「岸も疲れているとは思うが、水谷ほどではないと思う。

無理を言うが、明日の試合、一人で投げ切ってくれ。」


「はいっ」


岸は戸惑いながらも、大きな声で返事した。


「監督、ちょっと待って下さい。

ワタシ、疲れもないですし、普通に投げられます。」

優里は意義を申し立てた。


「いや、明日は普通の試合じゃないんだ。
疲労と半端なく襲ってくるだろう。
今はいけると踏んでいても、いざ試合に入ると同じスタンスを取れるかは疑問だ。

水谷、気持ちはわかるが、今やお前の一挙手一投足に全国の人々が注目している。

無理に投げて故障でもすれば、学校へ批判が殺到するだろう。

そういう事態になれば、ここまで来た意味も意義も無くなってしまうんだ。」


「ですが…」

それでも優里は納得いかない様子で村上を見つめて何か言いたげであったが、言葉を続けられなかった。

何故なら、自分が投げて故障してしまった場合、当然学校や村上に非難の目が向けられるだろう。
それは仕方ないとして、岸はどうだろう。

不甲斐ない投球をしているから優里に負担をかける結果になったのだと、岸にも批判が集まるのではないか。

匿名で人を平気で攻撃する現代の世の中だからこそ、そのような事になるのは目に見えて明らかだった。

それゆえに、優里は我と信念を押し通す事が出来なかったのだ。


「富田はどう思う?」

村上は先ほどから何も言わない大輔に話を振った。

大輔は暫くの間俯き、自分の足元に視線を落としていたが、監督の方を向くと、強い口調で次のように言った。


「監督、優里…いや、水谷を先発させて下さい。」

と…
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